日薬理誌 115 (4), 229-235 (2000)


塩酸セチリジン(ジルテック)の薬理作用と臨床特性

内田 昌子、中原  創

住友製薬株式会社研究開発本部
〒554-0022 大阪市此花区春日出中3-1-98


要約: 塩酸セチリジンはきわめて強力で選択的なヒスタミンH1受容体拮抗作用を示すと同時に,臨床で得られる血漿中濃度の範囲内で好酸球遊走抑制作用を示すアレルギー疾患治療薬である.本剤は数々の臨床薬理試験においてヒスタミン誘発膨疹の形成を速効的かつ強力に抑制し,その効果は24時間持続した.また,脳への移行性は低く,眠気の少ないH1受容体拮抗薬であることが明らかにされた.臨床的にはヒスタミンによる諸症状の軽減が速効的で,本邦ではアレルギー性鼻炎,蕁麻疹,湿疹・皮膚炎,痒疹ならびに皮膚掻痒症への効能効果を有している.アレルギー性鼻炎では,花粉飛散室を利用した臨床薬理試験において,症状改善効果と継続希望率が高いことが報告されている.国内の慢性蕁麻疹を対象としたセチリジンの開発試験においても背景因子が他剤無効の症例で約54%程度の有効性が認められる事など強力なH1受容体拮抗作用を裏付ける成績は数多い.一方,好酸球遊走抑制作用を有する利点として,一般的にH1受容体拮抗薬では効果が弱いとされている通年性アレルギー性鼻炎の鼻閉症状に対しても,セチリジンの4週間連用によりエバスチンに比し高い効果が認められた.セチリジンの好酸球遊走抑制作用については数多くの報告があるものの,その遊走抑制機序については未だに不明の部分が多い.セチリジンは臨床薬理的にアレルゲン処置部位への好酸球遊走を抑制したが,その他のH1受容体拮抗薬には同様の作用が認められなかったため,この作用はH1受容体拮抗作用では説明が難しい.セチリジンの好酸球遊走抑制機序とその臨床効果への反映については,今後より詳細な検討が求められる.


キーワード: セチリジン, ヒスタミンH1受容体, 好酸球, 遊走, アレルギー疾患

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