日薬理誌 115 (4), 237-243 (2000)


改変型組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)、パミテプラーゼの研究開発

加藤 正夫 (1)、速水 康紀 (2)

山之内製薬株式会社 (1)創薬研究本部分子医学研究所
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(2)医薬営業本部医薬部
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要約: 血中での持続性が長く,高いフィブリン親和性を有する改変型t‐PAであるパミテプラーゼを創製・開発し,「急性心筋梗塞における冠動脈血栓溶解」を適応とする血栓溶解薬として上市するに至った.パミテプラーゼ創製に当たってはまず,t‐PAをコードしている遺伝子に種々の改変を加え,動物細胞に発現させて精製タンパクを得た.そして,比活性,フィブリン親和性,血中持続性を指標にスクリーニングを実施し,Kringle‐1ドメインに相当する92番目から173番目のアミノ酸を欠失させ,さらに275番目のアルギニンをグルタミン酸に変換したt‐PA改変体パミテプラーゼ(YM866)を選択した.パミテプラーゼは天然型t‐PAと同等の比活性(650,000 IU/mg)とフィブリン親和性を示し,フィブリン依存性は天然型t‐PAを上回る.また,血中持続性は天然型t‐PAより数倍延長している.各種動物血栓症モデルで本剤の薬理効果を検討したところ,ボーラス静脈内投与で十分な血栓溶解効果を示すことが確認された.次いで,急性心筋梗塞患者を対象とした臨床試験へ進み,冠動脈内血栓の溶解に対しボーラス静脈内投与で点滴投与の天然型t‐PAと同等以上の効果が得られることが確認された.また,出血性副作用の出現も天然型t‐PAと同程度であった.今後は本剤のようなボーラス投与可能な血栓溶解薬が急性心筋梗塞患者のより速やかな治療開始に役立つものと期待したい.

キーワード: 組織プラスミノーゲンアクチベータ, 改変型t‐PA, 血栓溶解, 血栓症, 急性心筋梗塞

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