日薬理誌 116 (1), 36-42 (2000)


融合遺伝子発現系によるタンパク質可視化技術の分子薬理学的応用

吉岡 俊正、塚原富士子

東京女子医科大学医学部薬理学教室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1

要約: Green fluorescent protein(GFP)および関連する蛍光タンパク質は,細胞生物学の様々な分野に応用されている.その中で蛍光タンパク質と核レセプターなどの細胞内の情報伝達に関与するタンパク質のキメラは細胞内情報伝達の輸送系を可視的に解析することを可能とした.輸送機序とその病態による異常の解明には,輸送されるタンパク質(例えばステロイド受容体)と輸送に関わるタンパク質群(熱ショックタンパク質,イムノフィリン等)の動的な相互作用を解析しなくてはならない.GFP融合キメラタンパク質の発現系を用いて,生きた細胞内での標的タンパク質の移動を観察することにより,例えばグルココルチコイドによる転写調節の過程で,従来解析されているホルモン−レセプターあるいはレセプター−DNA相互作用だけでなく,レセプター−輸送タンパク質群の相互作用を明らかにすることが出来る.従って本技術は,例えばグルココルチコイド抵抗症などタンパク質輸送系の異常に対する薬理学的アプローチに応用することが可能である.

キーワード: 核-細胞質間輸送, 熱ショックタンパク質, ステロイド受容体, 蛍光タンパク質, 細胞内情報伝達

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