日薬理誌 116 (3), 158-162 (2000)


遺伝子治療の現状と未来

豊岡 照彦

東京大学 医学部内科 循環器専攻
〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1

要約: 近年の分子生物学,遺伝子工学技術の急速な進展に伴い,従来の薬物療法や外科的治療でも治療に難渋した種々の疾患について第3の選択として遺伝子治療が注目されてきた.今世紀最後の第73回日本薬理学会年会で年会長の長尾 拓,東大教授が起案されたシンポジウムの1つ「遺伝子治療の現状と未来」はヒトゲノム計画が予想以上に速やかに進行し,ヒトのgenomic全塩基配列が解明され,徐々に発表されつつある現況で非常に時宜を得た好企画と言えよう.
 本稿では2,000年最後を飾るにふさわしいシンポジストとして以下に記載した順番に,ベクターの解析,虚血性疾患の遺伝子治療,現在移植に代わる有効な手段が開発されていない重症心不全の遺伝子治療など近未来で実現可能と予想される領域から既に臨床実用化された肺癌の遺伝子治療,アデノシンデアミナーゼ欠損症の遺伝子治療まで現在本邦で望みうる最高レベルの発表を簡略に紹介した.
(文責:豊岡照彦.東京大学医学部内科循環器専攻)


キーワード: 遺伝子治療, 虚血性疾患, 心不全, 肺癌, ADA 欠損症

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