日薬理誌 116 (4), 209-214 (2000)


ミオクローヌス治療薬ピラセタム(ミオカームR)の薬理学的特性

田島 清孝 (1)、南里 真人 (2)

(1) 大鵬薬品工業株式会社経営企画部
〒101-8444 東京都千代田区神田錦町1-27
(2) 大鵬薬品工業株式会社製薬センター薬理研究所
〒771-0194 徳島市川内町平石夷野224-2

要約: ミオクローヌスは一連の筋肉群に発生する突然,急速,短時間の不規則な不随意運動であり,進行性ミオクローヌスてんかん,低酸素脳症,アルツハイマー病などの疾患に伴って出現する,希ではあるが機能障害を示す極めて難治性な疾患である.ピラセタム(2‐oxo‐1‐pyrrolidineacetamide,ミオカーム)は30年以上も前に開発された環状γ‐アミノ酪酸(cyclic GABA)の誘導体であり,認知記憶障害の治療薬としてヨーロッパ各国で臨床使用されている.更に,ピラセタムは皮質性ミオクローヌスに対する抑制作用が報告されているが,ミオクローヌスの原因が不明であり,ピラセタムのミオクローヌスに関する基礎試験はほとんどなされていない.今回,ラットに尿素を過剰量投与した際誘発されるミオクローヌスに対するピラセタムの抑制作用を筋電図により検討し,抗てんかん剤クロナゼパムの抑制効果と比較した.尿素4.5 g/kg(i.p.)で誘発されるミオクローヌスにおいて,ピラセタム300 mg/kg(i.p.)およびクロナゼパム0.3 mg/kg(p.o.)は,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.また,それぞれ単独では効果を示さない用量のピラセタム100 mg/kgとクロナゼパム0.03‐0.1 mg/kgを併用すると,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.体内動態試験では,本剤は経口投与後,体内でほとんど代謝されず,ほぼ全量が尿中に未変化体として排泄され,ヒト血清タンパク質との結合率は低かった.7日間反復投与P‐I試験においても,本剤は蓄積性を示さなかった.臨床試験は,イギリスでプラセボを対照薬とした二重盲検交叉法試験を実施し,皮質性ミオクローヌスに対する改善作用が示された.国内のP‐II試験では,ミオクローヌスの有意な抑制作用と患者のquality of life(QOL)の改善作用が示された.以上の結果から,ピラセタムは抗てんかん剤と併用することで難治性ミオクローヌス患者のミオクローヌスを抑制し,QOLを改善するという臨床上の有用性を示すことが明らかとなった.


キーワード: ピラセタム(ミオカーム), ミオクローヌス, 尿素誘発ミオクローヌスモデル

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