日薬理誌 116 (4), 225-231 (2000)


新規抗精神病薬 塩酸ペロスピロンの薬理学的特性

大野 行弘

住友製薬(株)研究本部 創薬第一研究所
〒554-0022 大阪市此花区春日出中3丁目1-98

要約: 近年,中枢セロトニン‐2(5‐HT)受容体の遮断が精神分裂病の陰性症状ならびに抗精神病薬による錐体外路系副作用を改善することが示されている.塩酸ペロスピロン(ペロスピロン)は1987年に住友製薬で見出された新規のserotonin‐dopamine antagonist(SDA)型抗精神病薬であり,脳内の5‐HT受容体およびD受容体に対し高い結合親和性を有する.ペロスピロンはドーパミン神経の過剰興奮に基づく種々の異常行動を有意に抑制するとともに,従来の薬剤が奏効しない陰性症状モデルや情緒障害モデルにおいても改善作用を示した.また,ハロペリドールなど従来の抗精神病薬に比べ,その錐体外路系運動障害(カタレプシー,ブラジキネジアなど)誘発作用が弱いことが示されており,本薬は非定型抗精神病薬としての特性を有すると考えられる.さらに,最近実施された精神分裂病患者を対象とした二重盲検試験において,ペロスピロンがハロペリドールと同程度に陽性症状を改善し,その陰性症状に対する効果がハロペリドールに比べ有意に優れることが明らかにされた.また,ペロスピロン処置群における錐体外路スコアの変化もハロペリドール処置群に比べ低いことが示された.これらの成績は,精神分裂病治療におけるぺロスピロンの臨床効果がハロペリドールに比べ幅広く,その錐体外路系副作用が緩徐であることを示唆しており,SDA型抗精神病薬としての薬理学的特性を反映しているものと考えられる.


キーワード: 抗精神病薬, 塩酸ペロスピロン, セロトニン‐2(5‐HT)受容体拮抗薬, ドーパミン-2 (D2) 受容体拮抗薬, 精神分裂病

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