日薬理誌 116 (4), 232-240 (2000)


骨形成タンパク質(BMP)の臨床応用に向けて

高橋浩一郎

山之内製薬株式会社創薬研究本部薬理研究所
〒305-8585 つくば市御幸が丘21

要約: BMPは骨基質中に存在し,異所性骨形成を誘導するタンパク性因子として1965年Uristにより提唱された.現在までに約20種に及ぶヒトBMPファミリーに属するタンパク質が同定されており,TGF‐βスーパーファミリー中のサブファミリーを構成する.活性型rhBMP‐2はアミノ酸数114,分子量16 kDaのサブユニット2個がS‐S結合した二量体であり,分子量約3万の糖タンパクである.BMPはその名前の由来通り,担体とともに筋膜下・皮下に埋植すると本来骨が存在しない部位に骨組織が誘導されるが,本作用は未分化間葉系細胞の骨芽細胞・軟骨芽細胞への分化促進と他の系統の細胞への分化抑制によりもたらされていると考えられている.しかし,BMPの生体内における薬効を効果的に発現させるためには本物質を局所に保持し,適度な速度で放出させるような担体が必須である.適切な担体の条件として,(1)毒性・発癌性を有しないこと,(2)抗原性・起炎性がないこと,(3)生体内分解性であること,(4)加工・成形が容易であること,(5)量産・大量入手が容易であることなどがあげられるが,我々はこれら諸条件を満たす担体としてpoly D, L‐lactic‐co‐glycolic acid(PLGA)/ゼラチン複合体(PGS)の開発に成功した.このPGSにrhBMP‐2を含浸させたrhBMP‐2/PGSはウサギ,イヌおよびサルなどで良好な骨形成活性を示し,長管骨・顎骨・歯槽骨などにおける骨欠損で治癒促進効果が認められた.これら前臨床での有効性および安全性の検討に引き続き,現在臨床試験が行われ,その有効性がヒトにおいても検証されつつある.


キーワード: 骨形成タンパク質, 骨芽細胞, 担体, 骨形成, 骨欠損

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