日薬理誌 117 (1), 65-76 (2001)


HMG‐CoA還元酵素阻害薬アトルバスタチン(リピトールR)の薬理作用と臨床効果

舩津 敏之,角田 裕俊,田中 秀行,荒井 幸規,鈴木 恵子,宮田 桂司

山之内製薬(株) 創薬研究本部 薬理研究所 応用薬理研究室
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要約: 高コレステロール血症は虚血性心疾患および脳血管障害に対する重要な危険因子であり,これらの発症を予防することが高コレステロール血症治療の最大の目的である.近年開発されたHMG‐CoA還元酵素阻害薬は,明確な作用機序および優れた安全性から,高コレステロール血症治療の第一選択薬となった.一方で,コレステロール値を治療目標値まで下げている患者の割合は高くなく,より強力なコレステロール低下薬の開発が望まれてきた.アトルバスタチンは,主に薬物動態学的な特長から,類薬と比較して作用持続時間が非常に長く,従来のHMG‐CoA還元酵素阻害薬と比較してより強力なコレステロール低下作用を有す新規薬剤である.アトルバスタチンはトリグリセリド低下作用を併せ持つが,その機序としてLDL受容体誘導作用によるトリグリセリド含有リポタンパクの代謝亢進作用や,肝臓でのVLDLの産生を低下させることによる分泌抑制作用が考えられている.国内で高脂血症患者を対象とした臨床試験は11試験が実施され,アトルバスタチンの優れたコレステロール低下作用によって,従来より多くの高コレステロール患者の血清コレステロール値を治療目標値まで到達させることが確認されている.また,長期試験を含む全ての臨床試験で,特に問題となる副作用は認められず,従来のHMG‐CoA還元酵素阻害薬と同様の安全性が確認されている.このような優れた作用特性から,アトルバスタチンは臨床の現場に新たな治療手段を与えるものとして期待される.

キーワード: HMG‐CoA阻害薬,アトルバスタチン,LDL受容体,VLDL分泌,動脈硬化

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