フルクトース負荷ラットの体脂肪蓄積に対する防風通聖散の作用
森元 康夫,阪田美智子,大野 晶子,前河 智子,田島 滋
鐘紡株式会社 漢方ヘルスケア研究所
〒534‐0016 大阪府大阪市都島区友渕町1‐5‐90
e‐mail: morimoto@phm.kanebo.co.jp
要約: 防風通聖散(BOF)は肥満症や便秘などに用いられている漢方処方である.今回,糖分の摂り過ぎによる食餌性肥満に対する作用を調べるために,ラットにフルクトースを負荷して体脂肪蓄積を誘発させ,これに対するBOFの作用を検討した.実験では,SD系雌性ラットを4群に分け,対照群およびBOF投与群には25%フルクトース水溶液を,ノーマル群には水道水を飲料水として6週間自由摂取させた.その間,BOF投与群にはBOF 1.5%および4.5%含有飼料を,対照群およびノーマル群には普通飼料を自由摂取させ,実験最終日に下腹部皮下脂肪,腹腔内白色脂肪,肩甲骨間褐色脂肪および肝臓を摘出し,これらの重量を測定した.さらに,肝臓については脂質含量を,褐色脂肪組織については熱産生能の指標としてチトクロムcオキシダーゼ活性を測定した.その結果,BOFは摂餌量およびフルクトース摂取量には影響を与えずに,フルクトース負荷による血清トリグリセリド(TG),インスリンおよびレプチン濃度の上昇を有意に抑制した.フルクトース負荷により皮下脂肪および腹腔内白色脂肪重量が有意に増加したが,BOF投与群ではこれらの増加は用量依存的かつ有意に抑制された.また,BOFはフルクトース負荷による肝臓TG含量の増加および褐色脂肪組織のチトクロムcオキシダーゼ活性の低下を抑制した.以上の結果から,BOFはフルクトース負荷による高TG血症および体脂肪蓄積に対して予防効果を有することが示唆された.また,その作用機序として,肝臓でのTG合成の抑制,脂肪細胞でのTG分解および褐色脂肪組織での熱産生の亢進が推察された.
キーワード: 防風通聖散,フルクトース,肥満,高トリグリセリド血症,熱産生
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