日薬理誌 118 (1), 23-28 (2001)


マクロファージ様細胞株におけるヒスタミン産生機構とその制御

平澤 典保,大内 和雄

東北大学大学院薬学研究科 機能分子生化学分野
〒980‐8578 仙台市青葉区荒巻字青葉
e‐mail: hirasawa@mail.pharm.tohoku.ac.jp


要約: ヒスタミン産生酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)は,マスト細胞や好塩基球だけでなく,炎症刺激を受けたマクロファージなどの非マスト細胞においても誘導される.本稿ではマウスマクロファージ様細胞株RAW 264.7細胞を用いてマクロファージにおけるヒスタミン産生機構について概説する.RAW 264.7細胞をCa2+‐ATPase阻害薬であるthapsigarginで刺激すると,HDC mRNAおよび74‐kDa HDCタンパク質のレベルが増加し,培養液中のヒスタミン量も増加した.これらはいずれもp44/p42 MAPキナーゼ活性化阻害薬により濃度依存的に強く抑制されたが,p38 MAPキナーゼ阻害薬では部分的にしか抑制されなかった.同様の結果は,プロテインキナーゼC活性化薬12‐O‐tetradecanoylphorbol 13‐acetateやlipopolysaccharideで刺激した場合においても認められた.したがって,マクロファージを刺激した場合のヒスタミン産生は,74‐kDa HDCタンパク質の発現増大によるものであり,この発現にはp44/p42 MAPキナーゼが大きく関与し,p38 MAPキナーゼの関与は部分的であることが示唆された.ステロイド性抗炎症薬dexamethasoneは,p44/p42 MAPキナーゼの活性化を抑制することにより74‐kDa HDCタンパク質の発現を抑制し,ヒスタミン産生を抑制することも示唆された.最後に,HDCの発現に関与する転写因子について考察した.

キーワード: ヒスチジン脱炭酸酵素,マクロファージ,p44/p42 MAPキナーゼ,デキサメタゾン

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