新規ヒスタミンH4受容体のクローニングとその受容体特性
小田 環,松本俊一郎
山之内製薬(株)分子医学研究所ゲノム創薬研究室
〒305‐8585 茨城県つくば市御幸が丘21
e‐mail: matsumot@yamanouchi.co.jp
要約: 1910年に生理機能が初めて報告されたヒスタミンは,その後の薬理学的,分子生物学的解析により,H1,H2,H3の3種の受容体を介して細胞内情報伝達が行われ,種々の生理機能を発揮していると考えられていた.私たちは,ヒトドラフトゲノムデータベースを網羅的に検索する事により,H3受容体に対して37.4%の相同性を有する新規ヒスタミンH4受容体(GPRv53)を同定した.H4受容体は,[3H]‐ヒスタミンに,17.2 nMの解離定数で結合する高親和性受容体であり,活性化に伴い,細胞内cAMP量を減少させる.ヒスタミン以外では,R‐(α)‐methylhistamine(H3受容体アゴニスト),clobenpropit(H3受容体アンタゴニスト)さらにはclozapine(抗精神病薬)がH4受容体と結合して,アゴニスト活性を発揮し,thioperamide(H3受容体アンタゴニスト)がアンタゴニスト活性を有する.H4受容体は,末梢白血球,脾臓,胸腺,結腸等で発現しており,免疫機能への関与が示唆されている.H4受容体の発見により,ヒスタミンの新しい生理的・病理的機能の側面が解明される手がかりとなるだろう.
キーワード: ヒスタミン,H4受容体,H3受容体,ドラフトゲノムデータベース,オーファンGPCR
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