日薬理誌 119 (4), 201-207 (2002)


プロスタノイドの生体における役割

牛首 文隆1),成宮  周2)

1)旭川医科大学薬理学講座
〒078‐8510 旭川市緑が丘東2条1‐1‐1
2)京都大学大学院医学研究科神経・細胞薬理学講座
〒606‐8501 京都市左京区吉田近衛町

要約: プロスタグランジン(PG)とトロンボキサン(TX)より成るプロスタノイドは,刺激に応じて局所で合成され,局所のホメオスタシスの維持や種々の病態形成に関与する生理活性脂質である.プロスタノイドの作用は,標的細胞上に存在する各々のプロスタノイドに特異的な受容体を介して発揮される.これらには,PGD,PGE,PGFα,PGI,TXAに特異的な受容体として,各々DP,EP,FP,IP,TPが含まれる.さらに,EPにはEP,EP,EP,EPの4種類のサブタイプが存在する.従来,プロスタノイドは,炎症のメディエーターとしての役割が良く知られている.しかし,生体内でプロスタノイドが果たす役割や,それを仲介する受容体の種類については,充分には解明されていない.その原因として,通常,組織には複数種のプロスタノイド受容体が発現しており,各プロスタノイドは,特に外来性に投与された場合,それに固有の受容体以外の受容体に作用する可能性が挙げられる.また,従来各プロスタノイド受容体に特異的なリガンドとして,ごく限られた種類のアゴニスト・アンタゴニストしか開発されていないことも挙げられる.このような状況の中で,最近受容体ノックアウトマウスの解析により,プロスタノイドが果たす種々の生理的・病態生理的な役割が解析・評価されつつある.本稿では,これらの解析によって得られた,最新の知見を紹介する.


キーワード: プロスタノイド,プロスタグランジン,トロンボキサン,プロスタノイド受容体,ノックアウトマウス

日本薬理学雑誌のページへ戻る