日薬理誌 119 (4), 219-226 (2002)


遺伝子改変による早老症候群実験動物作製の試み

市川 幸司1),野田 哲生2)3),古市 泰宏4)*

1)萬有製薬(株)つくば研究所
 〒300‐2611 つくば市大久保3番 つくばテクノパーク大穂
2)(財)癌研究会癌研究所細胞生物部
 〒170‐8455 東京都豊島区上池袋1‐37‐1
3)東北大学大学院医学系研究科分子遺伝学分野
 〒980‐8575 仙台市青葉区星陵町2‐1
4)(株)ジーンケア研究所
 〒247‐8530 鎌倉市梶原200   (文責著者)


要約: 筆者らは,ヒト早老化症状の原因となる遺伝子の研究を行い,その結果,ウエルナー症候群やロスムンド・トムソン症候群というヒト遺伝性早老症ではDNAヘリカーゼをコードする単一遺伝子の欠損が原因であることを明らかにしてきた.これらの早老症では,ゲノムの不安定化が組織・臓器特異的に起こり,そのために若年であってもいわゆる老化徴候とみられる症状を表わす.こと老化に関しては,種を越えて論じることは難しいことを意識しつつも,我々は早老症実験動物を得る目的で,ヘリカーゼ遺伝子をノックアウトしたマウスを作る努力を続けて来た.本稿では,ウエルナー症候群やロスムンド・トムソン症候群の原因となるDNAヘリカーゼ2種に関する遺伝子改変マウス作製への我々の試みについて述べるとともに,同様にDNAヘリカーゼが原因であり,ゲノムの不安定化を伴うブルーム症候群の遺伝子改変マウスについても紹介する.


キーワード: 早老症ノックアウトマウス,ウエルナー症候群,ロスムンド・トムソン症候群,ブルーム症候群,DNAヘリカーゼ

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