日薬理誌 119 (4), 235-240 (2002)


中枢シナプス伝達を制御するカルシウムチャネル

籾山 俊彦
岡崎国立共同研究機構 生理学研究所 大脳皮質機能研究系脳形態解析研究部門
〒444‐8585 岡崎市明大寺町字西郷中38
e‐mail: tmomi@nips.ac.jp


要約: 中枢神経系の興奮性および抑制性シナプス伝達は,シナプス前終末に存在する複数種のカルシウムチャネルサブタイプによって制御されている.幼若ラット脳および脊髄のスライス標本にN型およびP/Q型カルシウムチャネルに選択的なブロッカーを投与し,シナプス電流あるいはシナプス電位に対する効果を解析することにより,これまでに海馬,小脳,脊髄,脳幹,線条体等におけるシナプス伝達に対するN型,P/Q型,その他のカルシウムチャネルサブタイプの関与の程度が定量化されている.また,ドパミン等の修飾物質のシナプス前受容体活性化により,シナプス前終末へのカルシウム流入が遮断されて,その結果グルタミン酸やGABAの遊離が抑制される,という機構がいくつかの中枢シナプスで報告されており,特に,線条体ではシナプス前D型受容体とN型チャネルとの選択的な共役が最近明らかとなった.さらに,いくつかの中枢シナプスでは生後週2‐3週までに,シナプス伝達に対するN型チャネルの関与が消失することが明らかになっている.今後は,シナプス前終末におけるカルシウムチャネル各サブタイプと生理活性物質受容体および伝達物質遊離部位との位置関係,受容体活性化によるこれらの機能分子の動態,生後発達変化を形態学的にも捉えることが望まれる.

キーワード: シナプス伝達,カルシウムチャネル,N型チャネル,P/Q型チャネル,生後発達変化

日本薬理学雑誌のページへ戻る