日薬理誌 120 (2), 73-84 (2002)


バイオインフォマティクスからみたGeneChipTM System

高橋 泰夫,永田 俊人,中山 智祥,石井 敬基,石川 紘一,浅井  聰

日本大学医学部先端医学講座遺伝子ゲノム医学研究部門
〒173‐8610 東京都板橋区大谷口上町30‐1
e‐mail: satoshi@med.nihon‐u.ac.jp


要約: 数千種類にも及ぶプローブについて同時にハイブリダイゼーションを行い,解析を行う方法を,一般にアレイテクノロジーと呼んでいる.プローブを直径1 mm未満のアレイ状スポットとして作成した場合をマイクロアレイまたはチップと呼ぶ.マイクロアレイテクノロジーが汎用されだして数年が経過した.GeneChipTM(米国Affymetrix社)は他のDNAチップとはDNAプローブをチップ上にスポットする方法が異なっており,サンプル調整からデータ作成,データ解析に至るまで包括して完成されている.GeneChipシステムは,遺伝子の発現を解析するGene expression analysisと,ゲノムDNAの変異を解析するGenomic mutation analysisの両者が可能であり,今後ヒトゲノム解析などにも応用されると考えられる.世界的な視野に立って考えれば,GeneChipシステムの一方の大きな柱であるデータ作成技術(いわゆるウエットな実験技術)は1stスクリーニングにおいて多くの研究室でルーティーン化されている.研究者の実験によって得られたデータと刻々と追加されるパブリック,コマシャールベースの遺伝子・ゲノム情報を互換させ,意味のある遺伝子発現情報を抽出するかが大きな鍵となった.最近では,データを処理するコンピューティング技術(いわゆるバイオインフォマティクス)にその研究の中心が推移している.今回の論文は,バイオインフォマティクスを中心として遺伝子発現解析とゲノム解析に分け,遺伝子発現スクリーニングデータから,標的遺伝子を絞り込んでいく過程,ゲノムDNAの変異を解析するP53 Probe Arrayを用いた研究内容,HuSNP Mapping Assayなど我々の現在行っている実験例などを提示しながら解説した.


キーワード: ジーンチップ,マイクロアレイ,バイオインフォマティクス,遺伝子発現解析,ゲノムDNA変異解析

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