は じ め に

 第31回薬物活性シンポジウムを横浜において開催するにあたり、ご挨拶を申し上げます。このシンポジウムは日本薬学会ならびに日本薬理学会の共同主催の学際的シンポジウムであり、広い意味での薬物の活性に関する斬新で独創的な研究を軸に、将来の創薬の基盤ともなりうる演題を毎回集め、将来を見据えたテーマのもとに既に30回の歴史を重ねてまいりました。
ヒトゲノムの全塩基配列がほぼ解明された今、ゲノム科学はポストゲノムへと移行し、遺伝子情報に基づいた新規蛋白質の構造や機能が次第に明らかにされつつあります。そして次のポスト−ポストゲノムでは、組織・臓器の最終反応としての機能の再現が求められることは明らかです。一方、幹細胞科学は、分化に即した機能の発現や病態変化の情報を提供することを可能にしつつありますが、最終的には自身の体性幹細胞による組織・臓器の機能再生が求められることは必至です。このように、ゲノム科学や幹細胞科学の進歩は生命科学の基礎研究や創薬研究の方向性を180度方向転換し、分子や細胞レベルから組織・臓器の再構築や再生へ、すなわち微分の科学から積分の科学へと導いています。機能と分子を繋ぐ薬理学の出番はまさにこれからで、機能創薬とも言うべき真に意義ある次世代の創薬科学がはじめて可能になると考えられます。このような現状を踏まえると、ここで薬理学の基本的概念を再認識するとともに、新しい発想の基礎研究・創薬研究を展開する重要性を強く感じる次第です。薬物感受性の発現はまさにこの機能の発現ですので、本シンポジウムではメインテーマを「薬物感受性の発現制御と創薬」に定め、薬物感受性の発現調節と感受性変化、細胞機能の発現調節と再生、病態の発生機構と新規薬物標的分子の制御について先見性の有る優れた研究をご発表頂く予定でおります。
最後に、本シンポジウムを開催するにあたり、各方面から多大なご支援、ご援助を頂きました。厚くお礼申し上げます。

第31回薬物活性シンポジウム
会長 内田 幸宏
(明治薬科大学薬理学教室)

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