は じ め に

 第32回薬物活性シンポジウムを大阪で開催するにあたり、ご挨拶申し上げます。このシンポジウムは日本薬学会と日本薬理学会の共同主催の学際的シンポジウムとして、薬物の活性を包括的に捉えることを主眼として、31年にわたり、その時代の生命科学、特に薬理学の進歩を反映する内容の主題で実施されてきました。現在、色々な形態のシンポジウム、学術集会が数多く開催されるようになりましたが、時代に先駆けた学術集会としての実績を重ねてまいりました。
 分子生物学やいわゆる生化学が分子の物質的側面と分子としての機能解明を目指すのに対し、薬理学はそれらを基本に、更に生体の仕組みの階層レベルに対応した機能を解析し、その統合的機能を知ることを目指し、その手法と論理を体系化したものと云うことが出来ると思います。ゲノムの解析に至るまでの時代は、ややもすると生化学、分子生物学に比べて薬理学は現象論的すぎると指摘を受けてきたようにも思いますが、時代は大きく転換しました。ヒト、マウスをはじめとする多くの生物のゲノム概要が明らかになりつつあり、生命科学がその機能の解明、統合、更には、種の機能の多様性の共通理解に進みつつあるとき、薬理学の学問としての特性は、まさに、ポストゲノム時代の生命科学の主流を担えるものと云えると思います。基礎医学を含めた多くの生命科学が、「疾患と創薬」を視野に入れつつあると云える現在、薬理学はその主流として今後も発展していく必要があります。
 今回はそれらの背景を受け、メインテーマは生活習慣病の克服へ向けてとし、本シンポジウムを原点に戻すとの視点から、一般学術集会のように、公募に基づく演題構成にしました。出来る限り多くの研究室の優れた研究をご発表いただき、また、それを議論するとの視点であります。
 最後になりましたが、本シンポジウムを開催するにあたり、各方面から多大なご支援、ご援助をいただきました。心より厚くお礼申し上げます。

第32回薬物活性シンポジウム
会長 馬場 明道
(大阪大学薬学研究科薬理学教室)

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