谷内 一彦
東北大学医学系大学院病態薬理学研究分野
〒980-8575 仙台市青葉区星陵町2-1
要約: 分子から神経を考える時,遺伝子改変動物を用いた研究が重要な手がかりを与える.また神経機能をシステムとして理解する試みも,最近の画像医学の進歩により新しい研究動向のひとつになっている.画像医学による脳研究の長所はヒトにおいて非侵襲的に研究がおこなえる所にある.ヒトにおいて脳の生理機能や様々な精神疾患の病態をシステム的に理解しようというとき画像医学の果たす役割は極めて大きい.また21世紀の臨床薬理学や創薬を考えたとき,ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)を含む非侵襲的機能画像法を用いた研究が重要な役割を果たすと考えられている.我々は10数年間,PETを用いてヒトの薬理学(Human
Pharmacology)がどこまで可能であるかという命題に取り組んできた.本総説では,1)3次元データ収集PET,2)[18F]フルオロデオキシグルコース法と[15O]H2 15O静注法による脳血流測定法による神経活動イメージング,3)11C‐,18F‐リガンドによる特異的神経伝達のイメージングについて最近の研究動向を,我々のデータを含めて簡単に概略する.
キーワード: ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET), 創薬, 受容体占拠率,
認知機能, ヒスタミンH1受容体
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