日薬理誌 114 (3), 179-184 (1999)


Naポンプのリン酸化・脱リン酸化反応中間体に化学量論的に結合するATPとADP/Piの発見と(αβ)4量体によるエネルギー共役仮説

谷口 和弥,嘉屋 俊二,横山 毅,阿部 一啓

北海道大学大学院理学研究科化学専攻生物化学教室
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目

要約: Skouによる,Na/K‐ATPaseの発見以来,Na/K‐ATPaseとNaとKの輸送の機構は詳細に研究されてきた.ATP加水分解は,Post‐Albers機構として知られている,Na‐酵素‐ATP複合体(NaE1ATP),ADP感受性リン酸化酵素(NaE1P),K感受性リン酸化酵素(E2P)およびK閉塞酵素(KE2)を順に経由してα鎖とβ鎖からなる,プロトマー又はジプロトマーで生じるとされている.Na/K‐ATPaseの4量体的性質,1/4,1/2,3/4および全部位の反応性と電子顕微鏡的観察からATP加水分解中のNa/K‐ATPaseの4量体構造の存在が直接生化学的に示された.ATPの結合後ふたつの平行な経路,各々ふたつの1/2部位で,リン酸化−脱リン酸化と直接ATP加水分解が(NaE1P:E・ATP),(E2P:E・ATP:E2P:E・ADP/Pi)および(KE2:E・ADP/Pi)を経由して生じる.NaE1PからE2P形成,E2PからKE2形成はそれぞれ順にTCAに不安定な結合ATPの1/2がADP/Piへその後残りの1/2のADP/Piへの変化を伴う.Post‐Albers機構における反応中間体はすべてATPおよびまたはADP/Piを結合している.

キーワード: ナトリウムポンプ, テトラプロトマー, オリゴマーナトリウムポンプ

日本薬理学雑誌のページへ戻る