吾郷由希夫(大阪大学大学院薬学研究科薬物治療学分野)
セロトニン1A受容体による中枢神経機能制御に関する薬理学的研究
大久保洋平(東京大学大学院医学系研究科細胞分子薬理学教室)
代謝型グルタミン酸受容体シグナリングの可視化解析
宝田 剛志(金沢大学医薬保健研究域薬学系薬物学研究室)
関節組織における転写因子カスケードの役割と創薬応用
学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与されます.
第29 回は3 名が選考されました.受賞者には第87 回年会において,賞状および副賞が授与されます.
(大阪大学大学院 薬学研究科 薬物治療学分野)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
中枢神経系において,セロトニン(5-HT)1A 受容体は縫線核の細胞体に存在するプレシナプス5-HT1A 自己受容体と,大脳皮質や海馬などシナプス後部に局在するポストシナプス5-HT1A 受容体に大別される.
これら両受容体の機能は異なっており,薬理作用解析においてその差異の明確化が求められる.我々は,リガンドの用量反応より,プレシナプス5-HT1A 自己受容体の機能的役割をポストシナプス5-HT1A 受容体と差異を明確にできる新しい方法論を見出した.
また多くの神経精神疾患マウスモデルの作製と解析から,統合失調症,薬物依存,疼痛領域における5-HT1A 受容体の病態的意義と治療標的分子としての創薬的意義を示した.
今後も,新しい行動薬理学的手法を追究し,脳神経ネットワーク制御の観点から,精神疾患病態の解明と治療戦略を志向したい.
(東京大学大学院 医学系研究科 細胞分子薬理学)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
G タンパク質共役型であるグループI 代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は,多様な中枢神経機能に関与しており,近年は創薬標的としても注目されている.
しかしながら,生理的入力によりシナプス局所で惹起されるmGluR シグナル機構については,従来の生理学および生化学的手法では解析が困難であった.
我々はこの問題に切り込むため,グルタミン酸とイノシトール三リン酸について独創的な蛍光イメージング法を開発・応用して解析を進めた.
これにより,mGluR 活性化に必要なシナプス活動パターンを明確にするとともに,mGluR とイオンチャネル型受容体の協調的相互作用を明らかにした.
さらに以上の成果に基づき,mGluR の新たな機能的意義を探索し,持続的なmGluR 活性化がシナプス機能維持に必要であることを解明した.
今後も,関連分子の可視化解析とシナプス維持機構解析を両輪として研究を進め,mGluR に関する薬理学研究の基盤となる機構を明らかにしたい.
(金沢大学 医薬保健研究域 薬学系)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
関節組織の代表的疾患である関節リウマチや変形性関節症の国内 での患者数は非常に多く,これら疾患の克服は超高齢化社会を迎えた我が国において社会的 要求度と緊急性が極めて高い課題である.
本研究では,関節組織の構成と維持を担う軟骨細胞とともに,その 細胞起源であり傷害軟骨の再生を可能とする間葉系幹細胞において,転写因子を中心に据えた細胞外シグナル 統合による細胞機能制御機構を新規に解明した.
また,本研究にて注目する転写因子の一つであるRunx2 につ いては,Runx2 コンディショナル欠損マウス作製することで,従来実現不可能であった骨関節系疾患の病態発 症メカニズムにおける同因子の遺伝学的解析を可能とした.
今後は,独自の新規創薬標的分子に関するトラン スレーショナル研究を実施して,骨関節疾患の効果的治療法確立および治療薬開発を指向する新規治療的戦略 の展開を推進させる予定である.