第20回JPS優秀論文賞として2012年度から2014年度にJournal of Pharmacological Sciencesに掲載された346編の中から厳正なる審査の結果、3論文が選考されました。
第89回年会において、賞状および副賞が授与されます。
(昭和大・医・薬理学,整形外科学)
Yoshiomi Oka1), 2), Shinichi Iwai1), Hitoshi Amano3), Yuko Irie1), Kentaro Yatomi1), Kakei Ryu1), Shoji Yamada3), Katsunori Inagaki2), Katsuji Oguchi1)
Tea Polyphenols Inhibit Rat Osteoclast Formation and Differentiation
J Pharmacol. Sci. Vol. 118, No. 1 pp. 55-64(2012)
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は骨や軟骨の細胞外マトリックスの変性に関与します。
緑茶に含まれるepigallocatechin-3-gallate(EGCG)はMMPの発現と活性を抑制することが知られていましたが、紅茶ポリフェノールである theaflavin-3,3’-digallate (TFDG)の破骨細胞とMMP活性に対する効果は不明でした。
本論文ではラットにおいてTFDGとEGCGがMMP活性を低下させることを介し破骨前駆細胞から破骨細胞への分化および破骨細胞から成熟破骨細胞への分化を抑制し、その抑制効果はTFDGの方がEGCGより強いことを見出しました。
コホート調査により示されていたお茶の骨粗鬆症予防効果を本論文は分子レベルで解明し、TFDGとEGCGが骨粗鬆症をはじめとする骨吸収性疾患の治療薬としての可能性と新薬開発の為のリード化合物となることを示したことにより、JPS優秀論文賞に選考されました。
(北海道大・院・細胞薬理)
Hiroshi Asano1), Takahiro Horinouchi1), Yosuke Mai1), Osamu Sawada1), Shunsuke Fujii1), Tadashi Nishiya1), Masabumi Minami2), Takahiro Katayama2), Toshihiko Iwanaga3), Koji Terada1), Soichi Miwa1)
Nicotine- and Tar-Free Cigarette Smoke Induces Cell Damage Through Reactive Oxygen Species Newly Generated by PKC-Dependent Activation of NADPH Oxidase
J Pharmacol. Sci. Vol. 118, No. 2 pp. 275-287 (2012)
タバコ煙はアテローム性動脈硬化、COPD、がんなどの疾患発症の重要な危険因子であり、反応性の高い活性酸素種も含まれますが、不安定であり、疾患発症の危険因子としての役割は小さいものと思われます。
近年、比較的安定な成分が活性酸素種の生成に関わることが示唆され、疾患発症における重要性が推定されています。
本研究では、nicotine および tar を除去したタバコ煙抽出物を用い、グリオーマ細胞に対する障害性を検討し、タバコ煙抽出物中の安定な物質が PKC を介して NADPH oxidase を活性化し、活性酸素種を生成すること、O2- および H2O2 が apoptosis の誘発に、・OH が細胞膜の障害に関わることを明らかにしました。
また、apoptosis の誘発には PKC-NADPH oxidase 経路に依存しない酸化物も関与することを示しました。
これらの知見は喫煙による組織障害の機序を明らかにするとともに、疾患発症予防に有用な示唆を与えるものであり、引用回数も多いです。
(Shenyang Pharmaceutical University)
Ying Liu1), Ying Yang1), Yuan-Chao Ye1), Qi-Feng Shi1), Kuan Chai1), Shin-ichi Tashiro2), Satoshi Onodera2), Takashi Ikejima1)
Activation of ERK–p53 and ERK-Mediated Phosphorylation of Bcl-2 Are Involved in Autophagic Cell Death Induced by the c-Met Inhibitor SU11274 in Human Lung Cancer A549 Cells
J Pharmacol. Sci. Vol. 118 , No. 4 pp. 423-432 (2012)
本論文は、悪性度の高い非小細胞がんの株を用いて、本がんに有効と考えられるC-Met阻害剤、SU11274の抗がん作用メカニズムを解析したものです。
特にオートファジー機構に焦点を当て、C-Met阻害がオートファジーを介してがん細胞死を招来していることを、シグナルネットワーク、シグナルカスケードを丹念に薬理学的手法を用いて明らかにした完成度の高い論文です。
HGF/c-Met, ERK-p53, ERK-Bcl-2シグナルを介したオートファジー活性化、それに引き続く抗がん作用を明らかにしたことは、新規C-Met薬の抗がん作用の感受性を高める研究においても大きな進歩であると考えられます。
JPSのAim and Focusにも合致する当論文は優秀論文候補として遜色ありません。