第21回JPS優秀論文賞として2013年度から2015年度にJournal of Pharmacological Sciencesに掲載された348編の中から厳正なる審査の結果,2論文が選考されました。
第90回年会において,賞状および副賞が授与されます。
筑波大・院・人間総合科学
Tatsuhiko Ikeda1), Kiyo-aki Ishii2), Yuria Saito3), Masahiro Miura3), Aoi Otagiri1), Yasushi Kawakami3), Hitoshi Shimano2), Hisato Hara1), Kazuhiro Takekoshi3)
1) Department of Endocrine Surgery, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Japan
2) Department of Internal Medicine (Endocrinology and Metabolism), Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Japan
3) Department of Laboratory Medicine, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Japan
Inhibition of Autophagy Enhances Sunitinib-Induced Cytotoxicity in Rat Pheochromocytoma PC12 cells
J Pharmacol. SCI. Vol. 121, No. 1 pp. 67-73(2013)
スニチニブはマルチターゲットの受容体型チロシンキナーゼ阻害薬で,血管新生抑制および腫瘍抑制効果をもたらします。
mTORC1の抑制はオートファジーを誘導しますが,著者らは,ラット褐色細胞腫PC12においてスニチニブがmTORC1のシグナルを抑制することをすでに報告していました。
そこで今回は,スニチニブがオートファジーに与える影響とオートファジーを抑制した時のスニチニブの効果について検討しました。
PC12細胞においてスニチニブはオートファジーを誘導しましたが,Atg13の発現抑制および塩化アンモニウムによるAtg13の抑制はこの誘導を消失させ,アポトーシスと増殖抑制をもたらしました。
以上より,スニチニブによるオートファジーの誘導はmTORC1の抑制によること,オートファジーを抑制すればスニチニブの抗腫瘍効果を高めることができるかもしれないことが示唆されました。
本論文は,現在広く用いられている分子標的薬スニチニブの治療効果を改善する方法をオートファジーに着目して示したもので,がん治療に直結する優れた論文です。
引用回数も候補論文中最多でした。
よって優秀論文賞にふさわしいと考えられました。
大正製薬株式会社
Hirohiko Hikichi1), Ayaka Kaku1), Jun-ichi Karasawa1), Shigeyuki Chaki1)
1) Discovery Pharmacology I, Molecular Function and Pharmacology Laboratories, Taisho Pharmaceutical Co., Ltd., Japan
Stimulation of Metabotropic Glutamate (mGlu) 2 Receptor and Blockade of mGlu1 Receptor Improve Social Memory Impairment Elicited by MK-801 in Rats
J Pharmacol. SCI. Vol. 122, No. 1 pp. 10-16 (2013)
統合失調症ではグルタミン酸神経系の異常が知られています。
特に,代謝型グルタミン酸受容体(mGlu2/3受容体)の亢進とmGlu1受容体の抑制が統合失調症モデル動物での症状を改善することが知られています。
しかしながら社会性記憶障害に対する効果は解明されていません。
本論文ではMK801で誘導される社会性記憶障害ラットを用いて,mGlu2/3受容体作用薬(LY379268)の投与あるいはmGlu1受容体阻害薬(JNJ16259685)が短期の社会性記憶を改善することを見いだしました。
一方,これらの薬物は社会性行動には影響しませんでした。
次に,mGlu2受容体賦活化薬も社会性記憶障害を改善することを明らかにしました。
統合失調症において治療の選択肢が低い社会性認知障害に焦点をあて,代謝型グルタミン酸受容体の役割を解明するとともに,社会性認知障害の治療薬の必要性を示したことを評価し,本論文をJPS優秀論文賞に選考しました。