泉 安彦(京都大学大学院薬学研究科 薬品作用解析学分野・助教/神戸薬科大学薬学部 薬理学研究室・講師)
ドパミン神経軸索伸長の新たな評価系の確立とその制御因子に関する研究
岡田 宗善(北里大学獣医学部 獣医薬理学研究室・准教授)
心疾患における細胞外マトリックス分解断片canstatinの役割解明
清水 孝洋(高知大学教育研究部医療学系基礎医学部門 薬理学講座・准教授)
ストレス反応の脳内制御機構に関する薬理学的研究
学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与されます.
第 33 回は 3 名が選考されました.受賞者には第 91 回年会において,賞状および副賞が授与されます.
(神戸薬科大学 薬理学研究室/京都大学大学院 薬学研究科 薬品作用解析学分野)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
黒質-線条体系ドパミン神経投射は錐体外路系運動の調節機能を担っており,パーキンソン病においてはこの神経投射が消失することにより運動機能障害を呈する.生理学的および病態生理学的において重要な役割を果たしている神経回路であるが,その形成機構は完全には解明されていない.
私は,線条体細胞上でのドパミン神経軸索伸長を定量できる評価系を構築し,その伸 長機構に細胞接着分子のインテグリン α5β1 が関与することを明らかにした.
さらに,ドパミン神経にインテグリン α5 を過剰発現させると,線条体細胞上でドパミン神経突起伸長が促進することを見出した.
幹細胞由来ドパミン神 経細胞のパーキンソン病患者への移植治療の準備が進められている.本研究から得られた知見を応用すると,移植し たドパミン神経の線条体神経支配が向上するかもしれない.
今後は,黒質-線条体系ドパミン神経投射を始めとする 神経回路の再生を目指した分子薬理学的研究へと発展させていきたい.
(北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医薬理学研究室)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
我々の研究室では,心疾患発症における細胞外マトリックス分解の病態 生理学的意義の解明を目指し,細胞外マトリックス由来生理活性断片群 matricryptins に焦点を当て 研究を行ってきた.
心臓基底膜を構成する IV 型コラーゲン α2 鎖の断片である canstatin は主に内 因性の抗血管新生・抗腫瘍因子として研究されてきたが,その心臓における役割は不明であった.
我々は canstatin が 心筋芽細胞において細胞保護作用を発揮することや,心臓由来線維芽細胞と筋線維芽細胞において遊走,増殖や収縮 など様々な生理活性を調節することを発見した.
現在は canstatin の詳細な作用メカニズムの解明と ex vivo あるいは in vivo 心疾患モデルを用いた治療効果の検討に取り組んでいる.今後さらに研究を進め,canstatin をはじめとした matricryptins の心不全治療における新規創薬標的としての可能性を追求していきたい.
(高知大学 教育研究部 医療学系基礎医学部門 薬理学講座)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
ストレス曝露に対する生体反応(ストレス反応)はストレス適応に必須 であるが,過剰・異常な反応は恒常性維持機構の破綻から高血圧症,消化性潰瘍等各種疾患の惹 起・増悪に関与する.
また,ストレス曝露により健常人では一時的な頻尿をきたす一方,膀胱機能 障害患者においては頻尿症状の増悪が誘発される.
ストレス曝露による上記疾患・症状の発症・増悪に対する現行の 治療は末梢組織を標的とするものが主流であるが,奏功率は決して高くはなく,「根本的な」治療戦略の構築が必要である.我々は新たな治療標的としてストレスを受容する脳に着目し,治療戦略構築の基盤となるストレス反応の脳 内制御機構を解析している.
これまでに,ストレス反応の1つである交感神経-副腎髄質系の脳内賦活制御機構,およびストレス関連性脳内神経ペプチドによる頻尿誘発機構について,その一端を解明した.今後,これまでの研究成 果を基盤とした「ストレス関連疾患」に対する治療戦略構築を行っていく.
加えて,脳に着目して排尿研究を行う薬 理学者が世界的に見ても少ない現状を踏まえ,Neuro-uro-pharmacology とも呼ぶべき新たな薬理学研究領域を開拓し, 薬理学の発展に貢献したい.