村松 里衣子(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所・部長)
脳神経回路の傷害と修復を司る生体システムの解明
山下 直也(順天堂大学医学部 薬理学講座・助教)
軸索輸送を介した神経細胞内情報伝搬・その破綻による神経変性疾患発症の分子機構
学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与されます.
第 34 回は 2 名が選考されました.受賞者には第 92 回年会において,賞状および副賞が授与されます.
(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 神経薬理研究部)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
脳神経疾患に罹患すると様々な重篤な症状があらわれる.症状が発症・ 悪化する原因の一つに,脳の神経回路の傷害が指摘されており,いかにして神経回路を傷害から 守るか,そして傷ついてしまった神経回路を修復させるか,理解することが,症状を緩和させる 治療法の開発に有用と考えられている.
私たちはこれまでに,病態における免疫系・血管系の変化が脳の神経回路 の傷害と修復を制御することを見出し,その分子メカニズムの一部を抽出することに成功した.
今後は,これまで の研究で得られた治療標的分子をターゲットとした治療薬の開発を目指すとともに,これまでに提唱したコンセプ トに時間軸を加えることで,小児と高齢者の脳神経疾患のそれぞれの動作原理を理解し,その知見を基にした治療 薬の開発へ貢献していきたい.
(順天堂大学 医学部 薬理学講座)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
神経細胞は,細胞体,樹状突起,軸索といった細胞区画を有する高度に 極性化した細胞である.この中で軸索は,樹状突起が受容した情報を出力する区画であるが,軸 索先端(成長円錐)で受容した細胞外シグナルを,軸索輸送を用いて細胞体や樹状突起まで逆行 性に伝える機能も有している.
私は,神経細胞の細胞体・樹状突起と軸索を分離する特殊な培養 法を用い,成長円錐で受容されたセマフォリン 3A や神経成長因子により活性化したシグナルが,細胞体方向に逆行 性に伝搬される分子機構,ならびに,その神経発生における役割を明らかにしてきた.
これまで見出してきたシグナル分子の多くは,神経変性疾患との関連が深いことも知られている.そこで今後は,神経発生における逆行性伝 搬の役割を追究するとともに,この機構の破綻を介した神経変性疾患発症の分子機構を解明し,新しい診断法や治 療薬の開発といった形で薬理学の発展に貢献していきたい.