川畑 伊知郎(東北大学大学院・薬学研究科・特任准教授)
パーキンソン病の新たな創薬標的の解明とその予防・治療応用研究
菊田 順一(大阪大学大学院・医学系研究科・准教授)
生体イメージングによる骨疾患治療薬のin vivo 薬理作用の解明
野村 洋(北海道大学大学院・薬学研究院・講師)
記憶・学習を司る神経回路機構および認知機能障害に対する創薬に関する研究
学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与 されます.
第 36 回は 3 名が選考されました.
(東北⼤学⼤学院 薬学研究科 薬理学分野/先進脳創薬講座)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
⾼齢化社会をむかえパーキンソン病の増加が社会問題であるが,根本的治療薬はなくその開発が期待されている.
私たちはパーキンソン病の発症機構の解明と治療薬開発を⽬指し,ドパミン神経選択的な変性メカニズムの解明,ドパミン機能を制御する新規分⼦機構の発⾒,新たな創薬標的の探索研究に取り組んできた.
これまでに,ドパミン⽣合成の律速酵素で あるチロシン⽔酸化酵素が中脳ドパミン神経で消失する分⼦機構,消失したドパミン⽣合成酵素を回復するための新規シグナルネットワーク,パーキンソン病の原因タンパク質αシヌクレインの新たな伝播機構を明らかにしてきた.
さらに神経変性過程に必須となるユニークな分⼦機構の発⾒から,パーキンソン病の予防・治療応⽤に取り組ん でいる.今後はパーキンソン病を含むレビー⼩体疾患の創薬研究に加え,疾患の個別化予防に必須となる超早期診断技術を開発し,診断・予防・治療の各ステップから脳健康⻑寿社会の実現に貢献したい.
(⼤阪⼤学⼤学院 医学系研究科 免疫細胞⽣物学)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
近年,⾻関節疾患の分野において,様々な薬剤が開発され臨床応⽤されていますが,薬剤が in vivo でどのような薬理作⽤を発揮するのか,特に⽣きた組織・細胞レベル での作⽤機序についての研究はほとんど進んでおりませんでした.
私は,⼆光⼦励起顕微鏡を駆使して,動物個体が⽣きた状態で破⾻細胞が⾻を壊す様⼦をリアルタイムで可視化することに成功し,⾻関節疾患治療薬の薬効を in vivo で検証するシステムを独⾃に確⽴しました.
本技術を⽤いて,⾻粗鬆症治療で汎⽤されている活性型ビタミン D 製剤や副甲状腺ホルモン製剤,関節リウマチ治療において臨床応⽤されている⽣物学的製剤が,それぞれ異なる作⽤機序で⾻破壊を抑制し得ることを解明しました.
今後,⽣体イメージング研究 により各薬剤の⽣体内における薬理作⽤を正確に把握することで,臨床現場において各々の特徴に応じた適切な薬 剤選択に役⽴てたいと考えています.
(北海道⼤学⼤学院 薬学研究院 薬理学研究室)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
記憶は過去を保存するだけでなく,⽣物の現在,未来の⾏動を制御する重要な脳機能である.そのため,脳内記憶システムの異常は,認知症や⼼的外傷後ストレス障害 (PTSD)を含めた様々な疾患の病態と関連する.
私はこれまで,海⾺や扁桃体,⼤脳⽪質に存在する多細胞によって記憶がどのように処理されるかを明らかにしてきた.そして,これらの知⾒を⽣かして,脳内ヒスタミン神経系を活性化させることにより,⼀⾒忘れたように思える記憶でも,想起を回復できる ようになることを⾒出した.
このような記憶の想起を回復させる神経回路機構の解明は,アルツハイマー病などの認知機能障害の治療薬開発の⼀助となることが期待される.
今後も⾏動薬理学を主体としながら,神経活動の in vivo イメージングや活動操作を駆使することで,記憶・学習機構の解明と認知機能障害の治療薬の開発へ貢献していきた い.