学術奨励賞

第38回学術奨励賞(2023年3月)

北田 研人(香川大学医学部薬理学・助教)
「全身性体液保持機構」の発見とその病態生理学的意義の解明

清水 翔吾(高知大学教育研究部医療学系基礎医学部門薬理学・助教)
排尿を促進する脳内物質の発見と排尿障害に対する新規薬物治療戦略の基盤構築

西山 和宏(九州大学大学院薬学研究院生理学・講師)
Gタンパク質共役型受容体の機能性修飾に着目した薬理学的研究

第38回学術奨励賞受賞者プロフィール

学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与されます.

第 38 回は 3 名が選考されました.

北⽥ 研⼈(きただ けんと)

(⾹川⼤学 医学部 薬理学)

きただ けんと

受賞対象研究テーマ

『「全⾝性体液保持機構」の発⾒とその病態⽣理学的意義の解明』

テーマの紹介・今後の展開:

⽣体における体液量の恒常性は⽣命の維持に必須であり,その破綻は, 脱⽔,体液過剰,⾼⾎圧,脳・⼼⾎管・腎疾患,⽼化など様々な病態を引き起こす.

従来,体液量 の恒常性は主に腎臓によって制御されていると考えられてきたが,我々は,体液量は腎臓のみならず,肝臓,筋⾁,⽪膚,⼼⾎管・神経系などの多臓器連携によって制御されていることを発⾒した.また,この全⾝ 性体液保持機構の異常や過剰な活性化が,体液異常,⾼⾎圧,筋委縮など様々な病態の原因となる可能性も我々は⾒出した.

今後は,全⾝性体液保持機構のメカニズムおよびその制御法を解明することで「究極の体液保持法」を⽣み 出し,⼈類の様々な健康問題を解決していきたい.

さらに,全⾝性体液保持機構の特徴は,⽣物が進化の過程で体液 を保持するために獲得した適応能⼒である「夏眠」と類似しているため,⽣物の進化やバイオミメティクスなどの研 究領域に対しては,「夏眠研究」という新たな新興・融合研究領域創出も⽬指したい.

清水 翔吾(しみず しょうご)

(⾼知⼤学 教育研究部医療学系基礎医学部⾨ 薬理学講座)

しみず しょうご

受賞対象研究テーマ

『排尿を促進する脳内物質の発⾒と排尿障害に対する新規薬物治療戦略の基盤構築』

テーマの紹介・今後の展開:

本邦を含む先進国では⼈⼝の⾼齢化に伴い,過活動膀胱・前⽴腺肥⼤症等による排尿障害(蓄尿障害,尿排出障害)を呈する患者数は増加している.

排尿障害は,⽣活の質や健康寿命を著しく低下させるが,その病態はいまだ⼗分に解明されておらず,現⾏の治療薬にて奏功しない患者も⼀定数存在する.

我々は,脳内神経伝達物質であるアンジオテンシンⅡが排尿を促進する作⽤を有することを動物実験にて⾒出した.そして,中枢移⾏性のある降圧薬アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の経⼝投与が脳内アンジオテンシンⅡよる頻尿を抑制することを正常⾎圧ラットにて明らかにした.

⾼⾎圧は排尿障害の危険 因⼦であることが報告されている.今後も⾼⾎圧に伴う排尿障害の発症機序解明を⾏いたい.そして,⾼⾎圧かつ排 尿障害を治療するには,どのような薬が適切なのかという視点から基礎研究を進め,研究成果を社会に発信したい.

⻄⼭ 和宏(にしやま かずひろ)

(九州⼤学⼤学院 薬学研究院 ⽣理学分野)

にしやま かずひろ

受賞対象研究テーマ

『G タンパク質共役型受容体の機能性修飾に着⽬した薬理学的研究』

テーマの紹介・今後の展開:

G タンパク質共役型受容体(GPCR)は様々な⽣理機能や疾患形成に関わる膜タンパク質である.

私たちは,⼼不全や炎症性腸疾患などの難治性疾患の発症・進展メカニズ ムを,各疾患・臓器に特徴的な GPCR および GPCR 作動性カチオンチャネルの機能修飾(翻訳後 修飾やタンパク質間相互作⽤)の観点から明らかにしている.

さらに,そのメカニズムを標的とした創薬研究を展開している.特に本研究では,GPCR のレドックス修飾による新奇内在化制御機構を明らかにした.GPCR の機能修飾は⽣体内必須⾦属や酸化・硫⻩修飾によって制御されることが明らかになりつつあり,⽣命現象の根幹に迫る研究へ と発展することが期待される.

今後の研究によって,GPCR および GPCR 作動性カチオンチャネルを標的とした新たな難治性疾患治療の構築につながることも期待される.

公益社団法人日本薬理学会