学術奨励賞

第39回学術奨励賞(2024年3月)

鈴木 良明(名古屋市立大学・大学院薬学研究科・講師)
カルシウムマイクロドメインによる血管機能制御機構の解明

永安 一樹(京都大学・大学院薬学研究科・助教)
情動制御およびストレス抵抗性におけるセロトニン神経の役割に関する研究

矢吹 悌(熊本大学・発生医学研究所・准教授)
プリオン性タンパク質凝集機構の解明と創薬応用に関する薬理学的研究

第39回学術奨励賞受賞者プロフィール

学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与 されます.

第 39 回は 3 名が選考されました.

鈴木 良明(すずき よしあき)

(名古屋市⽴⼤学 ⼤学院薬学研究科)

すずき よしあき

受賞対象研究テーマ

『カルシウムマイクロドメインによる⾎管機能制御機構の解明』

テーマの紹介・今後の展開:

Ca2+チャネルは⾜場タンパク質を介して下流の Ca2+感受性分⼦と「Ca2+ マイクロドメイン」を形成することで,刺激特異的な⽣体応答を引き起こす.我々は蛍光イメージ ング法を駆使して,⾎管平滑筋の Ca2+マイクロドメインが Ca2+シグナルを膜電位変化へ効率的に変換することで,⾎管の収縮性を精密に制御することを明らかにした.

さらに,Ca2+マイクロドメインは ATP 産⽣ や興奮−転写連関による遺伝⼦誘導により,⾎管リモデリング形成にも関与することも発⾒した.本研究の今後の発 展により,⾎管リモデリング形成機構の解明と,Ca2+マイクロドメイン構成分⼦を標的とした新たな⾎管リモデリン グ治療薬の開発が期待される.

また,Ca2+マイクロドメインは神経や筋などの興奮性細胞のみならず,免疫細胞など の⾮興奮性細胞でも形成されるため,本研究は細胞種の垣根を越えて幅広い領域へ波及すると期待される.

永安 ⼀樹(ながやす かずき)

(京都⼤学 ⼤学院薬学研究科 ⽣体機能解析学分野)

ながやす かずき

受賞対象研究テーマ

『情動制御およびストレス抵抗性におけるセロトニン神経の役割に関する研究』 

テーマの紹介・今後の展開:

うつ病は,先進国を中⼼に全世界の罹患者数が 3 億⼈に達する疾患であ り,疾患に伴う社会負担の甚⼤さのみならず⾃死という重⼤な転帰の原因ともなる、我々は,培養脳切⽚,電気⽣理学的⼿法および脳内微⼩透析法を⽤いて,種々のうつ病治療薬が共通してセロト ニン神経活動性を亢進させることを⾒出してきた.

また,セロトニン神経選択的ウイルスベクターの開発を通じて, 背側縫線核セロトニン神経の⼈為的活性化が,抗うつ作⽤をもたらすことおよび快経験時に活性化した神経細胞の 選択的再活性化作⽤を有することを明らかにした.

さらに,抗うつ作⽤に加えて快情動の誘発効果を有する背側縫線 核セロトニン神経とは反対に,正中縫線核セロトニン神経が不快情動の誘発効果を有することならびにその機序を 明らかにした.今後は,この対照的な機能をもつセロトニン神経群の選択的制御を通じた抗うつ薬開発を⽬指し,さ らなる神経・分⼦機序の探索を⾏っていきたい.

⽮吹 悌(やぶき やすし)

(熊本⼤学 発⽣医学研究所 ゲノム神経学分野)

やぶき やすし受賞対象研究テーマ

『プリオン性タンパク質凝集機構の解明と創薬応⽤に関する薬理学的研究』

テーマの紹介・今後の展開:

ɑ シヌクレインやタウなどのプリオン性タンパク質は,未知の要因でミスフォールディングによる凝集核を形成する.さらに,この凝集核は正常タンパク質を連続的にし続け,細胞間伝播する.

私達は,神経細胞内における RNA グアニン四重鎖(RNA G-quadruplex;G4RNA)の集合体がプリオン性タンパク質凝集の⾜場となり,神経変性を誘導することを⾒出した.この現象は,遺伝性だけでなく孤発性の神経変性疾患でも⾒られることから,神経変性に共通した分⼦メカニズムであることが⽰唆される.

今後,様々なプリオン性タンパク質の凝集・伝播における G4RNA の関与を詳細に解析し,神経変性病
態における新規発症メカニズムの解明と創薬研究を推進する.

公益社団法人日本薬理学会