船本 雅文(徳島大学・大学院医歯薬学研究部薬理学分野・准教授)
心臓病態におけるエピジェネティクス制御機構の解明と創薬応用を目指した薬理学研究
松本 信圭(東京大学・大学院薬学系研究科・助教)
記憶を支える海馬の神経活動の生理学的観察と操作を起点とした行動電気薬理学
宮野 加奈子(順天堂大学・薬学部)
がん支持緩和医療における新規口腔粘膜炎疼痛緩和薬の開発ならびに漢方薬の有用性の検証:西洋薬と漢方薬の効果的な処方選択を目指して
学術奨励賞は本会会員で薬理学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し,将来発展の期待される研究者に対して授与されます.
第 41 回は 3 名が選考されました.
(徳島大学・大学院医歯薬学研究部薬理学分野・准教授)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
心不全をはじめとする心疾患は主要な死亡原因である.心臓病態の形成にはエピジェネティクス制御が関与することが示唆され ている.
我々は病的心肥大や心不全モデルを用いてヒストン修飾を中心としたエピジェネティクス変化を明らかにし, 心臓病態における転写制御機構の解明と薬理学的介入の可能性について研究を進めてきた.
現在は, 心臓と免疫系との相互作用, 特に, マクロファージの鉄代謝変容に注目して, エピジェネティクス制御や心臓病態に与える影響について解析を行っている.
今後は, マクロファージ鉄ストレスを切り口として心臓老化や心不全の進展機構を明らかにし, 得られた知見を基盤として, 新しい診断法や治療戦略の創出に繋げたい.
(東京大学・大学院薬学系研究科・助教)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
私は, 学部生の頃から薬理学が最も好きな科目でした.学生とポスドクでの研究では, 電気生理学的手法により行動中や睡眠中の神経活動を記録してきましたが, どうにかして薬理学と電気生理学という学問どうしを結び付けられないかと考えてきました.
そこで, 行動中の動物の神経活動を記録し, 行動に関連した神経活動を精緻に記述して理解した上で, 同様の神経活動を既存薬物や天然由来成分の投与により再現したいと考えました.
私は, このアイデアを行動電気薬理学と名付けてみました.特に記憶に注目し, 空間記憶の増強, 特定の異性に対する社会性記憶の想起, 臨死状態での記憶再生をテーマにして, 生理学的手法を用いて神経活動を調べてきました.
動物の行動に関連した神経活動を薬理学と生理学の両面から理解し, ゆくゆくは同様の神経活動を薬物によって模倣したり, 回復させたりすることを目指します.
(順天堂大学・薬学部・准教授)

受賞対象研究テーマ
テーマの紹介・今後の展開:
がん薬物療法の進歩により患者の生存期間は飛躍的に延長したが, 治療継続を阻む口腔粘膜炎や末梢神経障害(CIPN)等の副作用制御は, 既存薬のみでは困難な喫緊の課題である.
我々は, これらアンメット・メディカル・ニーズに対し, 基礎と臨床を融合したトランスレーショナルリサーチを推進してきた.
具体的には, 1) 新規口腔粘膜炎疼痛緩和薬の開発・導出に加え, 2) 漢方 薬 半夏瀉心湯の作用機序解明および奏効性バイオマーカーの探索, 3) リアルワールドデータを用いた牛車腎気丸とガバペンチノイドの併用療法の有用性など, 漢方薬の科学的基盤構築において成果を挙げた.
今後は, 血漿メタボロームおよび腸内細菌叢解析を駆使して漢方医学の「証」を薬理学的に可視化し, 西洋医学と東洋医学を統合した「科学的『証』」に基づく, がん支持療法における新たな個別化医療の確立を目指す.