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日薬理誌第126巻第1号 2005年7月

アゴラ
1
薬学部6年制と薬理学会
松木則夫

特 集 ●薬物依存の評価法と戦略
3   序文:鈴木 勉

5  
薬物自己投与実験による強化効果および中枢作用の検索
若狭芳男、佐々木幹夫、藤原 淳、飯野雅彦

10  
条件付け場所嗜好性試験による薬物報酬効果の評価:基礎と応用
舩田正彦

17  
薬物弁別試験―依存性薬物の自覚効果と依存形成機構の解明―
溝口博之、野田幸裕、鍋島俊隆

24 
薬物への渇望(craving)の再燃・再発モデルとその発現機序
崎村克也、平仁田尊人、宮本道彦、永田健一郎、山本経之

30  
薬物依存・毒性発現にかかわる分子の分子生物学的検索法―網羅的プロファイリングを中心に―
浅沼幹人、宮崎育子

35 
薬物依存における脳内報償系細胞の機能変化に関する電気生理学的検討
天野 託、関 貴弘、松林弘明、笹 征史、酒井規雄

43 
薬物依存時におけるシナプス可塑性とグリア細胞:グリアから依存を考える
成田 年、宮竹真由美、鈴木雅美、鈴木 勉

49 
覚せい剤および麻薬に共通する依存関連分子の検索
山田清文、永井 拓、中島 晶、鍋島俊隆


シリーズ:ポストゲノムシークエンス時代の薬理学
55
(その7) ゲノムネットワーク
鈴木善幸、池尾一穂、五條堀 孝

60
(その8) テーラーメイド医療
鎌滝哲也

■展望シリーズ:ゲノム薬理学 四方山ばなし(1)
66 
ゲノム薬理学とは:シリーズの意図と目的
東 純一、今川健一


● マスコミを賑わせた発見●
84 
ゲノム創薬による腎炎治療薬の新たなターゲットの発見―腎炎治療の根本的治療法確立に加速―
辻本豪三

サイエンスエッセイ
70 
一隅を照らす灯でありたい
戸田 昇

■落ち穂拾いの薬理学考課(その一)■
82  
なんで落ち穂拾いなんや?
宮崎瑞夫

コレスポンデンス
72 
まずは世界に通じる研究者と大学院生に一点豪華式に助成を
川島紘一郎

73 
次世代の基礎研究を担う大学院生をどのように獲得し育てるか
三輪聡一

74 
研究者キャリアの現状と薬理学会
柳澤輝行

書 評
75 
神経薬理学 生化学からのアプローチ
馬場明道

新教授紹介
76 井上隆司、大熊康修
77 大戸茂弘、河田登美枝
78 川畑篤史、古林伸二郎
79 徳冨直史、林 泉
80 藤本正文、堀江俊治
81 南 雅文、渡邉泰雄

お知らせ
前綴込  部会案内、払込取扱票
1A   集会案内、募集
2-3A Calendar
4A   編集後記
4頁  JPS 98:2目次
54頁 執筆の手引き
59頁 安全性情報No.213
69頁 次号予告
広告第1頁 E-journalアクセス集計

著者プロフィール
9, 16, 23, 42, 48, 59, 65
//広 告///編集後記//

●特 集
薬物依存を動物でしらべる●
覚せい剤、大麻、脱法ドラッグなどの研究に欠かせない薬物依存の評価法、動物モデル作成法、さらに薬物依存の機序解明のための戦略を紹介する。乱用防止の啓発や薬物依存症の治療薬開発などに役立てることができる。(鈴木勉「薬物依存の評価法と戦略」序文 p.1)
 
薬が止められないのはなぜ?
動物がレバースイッチを押すと一定量の薬液が自動的に体内に注入される薬物自己投与実験法により,アカゲザルおよびラットが依存性薬物を活発に自己投与することが知られている。活発に自己投与される薬物は強化効果を有すると言われ,強化効果は,精神依存性と密接な関連があると考えられている。薬物自己投与実験法を用いた薬物の強化効果の有無,強さおよび発現機序の研究を紹介する。
(若狭芳男 薬物自己投与実験による強化効果および中枢作用の検索 p.5)
 
赤提灯を見ると酒が飲みたくなるのは?
薬物依存症の治療薬開発のために,動物モデルを作成することが必須である。条件付け場所嗜好性試験(conditioned place preference,CPP法)では,薬を打たれた場所(赤提灯のある店)をネズミが好きになるかどうかを調べる。この方法では薬物の精神依存形成能を予測できる。CPP法の実験手法と,精神依存形成メカニズムに関する脳内神経系の役割について総括した.
(舩田正彦 条件付け場所嗜好性試験による薬物報酬効果の評価:基礎と応用 p.10)
 
薬と食塩水を区別できるのは?
メタンフェタミン(MAP)を注射したときには右のレバーを押すと餌がもらえ、食塩水の時には左を押さないといけないような方法で、ラットを訓練すると薬と食塩水を区別出来るようになる。これを薬物弁別行動という。MAP弁別には、腹側被蓋野から側坐核へと投射しているドパミン作動性神経系が重要であり、D2様受容体とリンクした細胞内cyclicAMP (cAMP) 系シグナル経路を介して発現している。この経路を亢進するような薬物は、薬物依存の予防・治療薬としての可能性がある。
(溝口博之 薬物弁別試験-依存性薬物の自覚効果と依存形成機構の解明- p.17)
 
薬が切れるとたまらなく欲しくなるのは?
依存性薬物は、反復使用により精神依存が形成され、断薬後も薬物への強迫的で制御不能な“渇望”が再燃する。ラットの自己投与法を用いた“渇望”の再燃・再発についての研究方法および“渇望”の神経機構を内因性カンナビノイドの関与も含めて概説する。
(崎村克也 薬物への渇望(craving) の再燃・再発モデルとその発現機序 p.24)
 
覚せい剤の毒性に関わる遺伝子
ある事象に関与すると考えられる分子の同定法として,最近ではdifferential display法,cDNAアレイ,二次元電気泳動,抗体アレイを用いたmRNAやタンパク発現の網羅的検索が可能になった.これらの方法の長所・短所について,覚せい剤の急性毒性発現にかかわる遺伝子・分子の網羅的検索の自検例を交えて概説した.
(浅沼幹人 薬物依存・毒性発現にかかわる分子の分子生物学的検索法-網羅的プロファイリングを中心に p.30)
 
覚せい剤で脳内報償系がかわる
メタンフェタミンの反復投与は、休薬5日後に腹側被蓋野ドパミンニューロンと側坐核ニューロンでドパミンに対する感受性を亢進させることを生体位実験およびスライスパッチクランプ法を用いて、電気生理学的に検討し明らかにした。感受性の亢進にはドパミンD2レセプターが深く関与しており、感受性亢進に至る機序に興味がもたれる。
(天野託 薬物依存における脳内報償系細胞の機能変化に関する電気生理学的検討 p.35)
 
覚せい剤中毒はグリア細胞から
近年、中枢神経系の情報伝達に対するグリア細胞の寄与が指摘されるようになり、グリア細胞による極めてダイナミックな神経機能制御が明らかにされつつある。本稿では、かねてから研究を進めてきた薬物依存下におけるグリア細胞、特にアストロサイトの形態ならびに機能変化を検討した研究成果を紹介する。
(成田年 薬物依存時におけるシナプス可塑性とグリア細胞:グリアから依存を考える p.43)
 
組織プラスミノーゲン活性因子(tPA)とTNF-αの役割
DNAアレイを用いたスクリーニングから見いだした薬物依存関連分子の中から組織プラスミノーゲン活性因子(tPA)とTNF-αの役割を解説する。薬物依存に対してtPAは促進的(pro-addictive)、TNF-αは抑制的(anti-addictive)に作用する。 
(山田清文 覚せい剤および麻薬に共通する依存関連分子の検索p.49)
シリーズ ポストゲノムシークエンス時代の薬理学
 
7
ゲノムネットワークとは
ゲノムネットワークとは、ある生物種のゲノムにコードされている遺伝子情報が織りなす生体分子ネットワークの総体と定義され、転写制御ネットワーク、代謝ネットワーク、さらにはタンパク質ネットワークなどから構成されている。本稿においては、これらのネットワークの進化に関してこれまで我々の研究室で得られた成果のうちのいくつかを概説するとともに、現在進行中であるゲノムネットワークプロジェクトについて簡単に紹介する。
(鈴木善幸 ゲノムネットワーク p.55)
 
8
テーラーメイド医療
研究の進展はめまぐるしく,何をどのように考えたら良いのか分からなくなってしまう.筆者はポストゲノムをメタボロームやプロテオームなどだけではなく,今までに行われてきたゲノムサイエンスを人類の福祉に役立てるのもポストゲノムの考え方として重要であるという考え方を持っている.このような観点から筆者の考え方を紹介する.
(鎌滝哲也 テーラーメイド医療 p.60)
展望シリーズ: ゲノム薬理学 四方山ばなし
 
1
ゲノム薬理学とは
ゲノム薬理学とは? 果たして、ゲノム薬理学は臨床現場に導入されるのか? ゲノム情報の臨床応用 に向けて、クスリとヒトとの間をつなぐ臨床ゲノム薬理学に関するシリーズ「四方山ばなし」の意図す るところと目的を概説する。
(東純一 ゲノム薬理学とは:シリーズの意図と目的 p.66)
エッセイ 論文の価値は?
論文の評価はインパクトファクターの高い雑誌への掲載から、引用回数の多い論文へと変化している。被引用回数8142回という業績を持つ戸田名誉会員から、JPS 優秀論文賞の選考について、提案をしていただいた。
(戸田 昇 一隅を照らす灯でありたい p.70)
落ち穂拾いの薬理学考課
 
1
なんで落ち穂拾いなんや?
本誌の編集長として活躍され、その軽妙洒脱な編集後記には読者にファンが多かった宮崎教授が本会名誉会員になられたのを期に、自分史を振り返りながら思いつくことを綴っていただいた。第1回は、アンジオテンシン産生機構研究の裏話である。
(宮崎瑞夫 なんで落ち穂拾いなんや? p.82)
マスコミを賑わせた発見
    腎炎治療薬の新たなターゲット
京大薬・ゲノム創薬辻本等は、腎炎疾患治療標的分子としてタンパク質リン酸化酵素カゼインキナーゼ2を見出した。その阻害薬は、腎炎の画期的な治療薬となる可能性がある。
(辻本豪三 ゲノム創薬による腎炎治療薬の新たなターゲットの発見 p.84)

 

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