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日薬理誌第126巻第2号 2005年8月

アゴラ
85
医療現場と薬理学
大石了三

特 集 ●ストレスの評価法と戦略
87 序文:大熊誠太郎

88
基礎医学研究における情動性評価法: ホールボード試験の有用性
辻  稔、武田弘志、松宮輝彦  

94
不安・強迫性障害モデルとしてのマウスのガラス玉覆い隠し行動(marble-burying behavior)
今西泰一郎、吉田晶子、奥野昌代、平沼豊一

99
高架式十字迷路試験を用いた不安水準の評価とその応用

山口 拓、富樫広子、松本真知子、吉岡充弘

107
ストレスと睡眠・情動障害:神経ステロイドアロプレグナノロン系の関与
松本欣三、Alessandro Guidotti、Erminio Costa


シリーズ:ポストゲノムシークエンス時代の薬理学
113
(その9) 薬理インフォマティクスと薬理ゲノミクス
田中利男

117
(その10) システムバイオロジー  
石井 優、倉智嘉久


総 説
121
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ研究の最近の進展:アイソザイム、機能、阻害薬

小寺 淳、佐々木隆史、大森謙司

実験技術
129
医薬品開発における放射性薬剤の利用:極微量(microdose) 投与後の薬物動態のAMSおよびPETによる評価
上原知也、荒野 泰

135
FRETプローブによるRhoファミリーGタンパク質の 細胞内動態イメージング
吉崎尚良、青木一洋、望月直樹、松田道行

新薬紹介総説
143
新規糖尿病治療薬、インスリンリスプロ混合製剤 (ヒューマログRミックス25注、ヒューマログRミックス50注)および中間型インスリンリスプロ(ヒューマログRN注)の製剤開発と臨床成績
阿波隆夫、中田哲誌、繁田浩史


■展望シリーズ:ゲノム薬理学 四方山ばなし(1)
152
古きを訪ね、新しきを知る―Pharmacogenomics/Pharmacogeneticsの歴史的な展開:そのー1―
今川健一、東 純一


■落ち穂拾いの薬理学考課(その二)■
158
ACE阻害薬は過去の遺物ではない
宮崎瑞夫


最近の話題
162
クローン病原因遺伝子として同定された菌体成分認識受容体NOD2
尾崎 博、藤沢正彦

コレスポンデンス
160
次世代の基礎薬理学研究を担う大学院生をどのように獲得するか―教員が個人としてできること―
尾崎 博

161
次世代の薬理学基礎研究を担う大学院生をいかに確保し育てるか―私立薬科大学の悩みと苦しみ―
松村靖夫

新教授紹介
163  稲垣直樹、下村恭一
164  高田芳伸、武田弘志
165  土田勝晴、野田幸裕
166  廣瀬謙造、松本欣三

お知らせ
5A   JPS優秀論文賞決定
5A  訃報
6ー7A Calendar
7A  募集
8A  編集後記
106頁 次号予告
128頁 JPS 98:3目次
134頁 E-journalアクセス集計
142頁 執筆の手引き

著者プロフィール
98, 106, 112, 116, 127, 141
//広 告///編集後記//

●特 集
ストレスを動物でしらべる●
ストレスによる不安障害の発現機序や治療薬の効果判定には動物行動を基準とした行動実験法が重要であるが、実験方法のみならず、実験条件やデータなどの評価には十分な留意が必要であり、本特集ではこれらの点について概説している
(大熊誠太郎「ストレスの評価法と戦略」序文 p.87)
 
動物の情動を客観的に評価する
うつ病や不安障害などのストレス関連精神疾患の発症機序や、抗不安薬、抗うつ薬のような治療薬の有効性の研究には、実験動物の情動性を客観的かつ定量的に解析することが不可欠である。著者らは、マウスおよびラットの生得的な情動性やストレス刺激により変化する情動性を行動学的に定量評価することを目的として、自動ホールボード試験装置を開発した。
(辻 稔 基礎医学研究における情動性評価法:ホールボード試験の有用性 p.88)
 
マウスはガラス玉が嫌い
床に敷き詰めたおがくずの上のガラス玉を、マウスはおがくずの中に埋めて隠す。このガラス玉覆い隠し行動は,不合理なことを繰り返す点で強迫性障害と似たところがあり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬や抗不安薬で抑制されることから,不安・強迫性障害の動物モデルとして使われている。
(今西泰一郎 不安・強迫性障害モデルとしてのマウスのガラス玉覆い隠し行動 p.94)
 
マウスは高所恐怖症
ラット・マウスの「不安」を測定するために、広く用いられている高架式十字迷路試験は「高所で壁がない」という不安と恐怖を利用したもので、抗不安薬を簡便にスクリーニングできる行動解析法の一つである。この試験は薬効評価のみならず、遺伝子改変動物や疾患モデル動物の不安関連行動を測定する方法としても利用されている。
(山口 拓 高架式十字迷路試験を用いた不安水準の評価とその応用 p.99)
 
孤独なマウスは短眠で凶暴
現代の複雑な社会環境では様々なストレスが、うつ、不安、攻撃性などの情動障害や不眠などの睡眠障害の要因になっているが、マウスを隔離飼育すると、これに似た症状が見られる。そして、神経ステロイドのうち、アロプレグナノロン (ALLO)などγ-アミノ酪酸A受容体作動性ステロイドの量の変動が、ストレスに起因する神経精神疾患の発症や改善に重要であることが明らかになりつつある。
(松本欣三 ストレスと睡眠・情動障害:神経ステロイドアロプレグナノロン系の関与 p.107)
シリーズ ポストゲノムシークエンス時代の薬理学
 
9
遺伝子情報から薬理情報への道
2005年3月に、米国食品医薬品局(FDA)から薬理ゲノミクスに関するガイダンスが報告され、いよいよ薬理ゲノミクスが、世界の薬務行政においても中心的話題になりつつある。現在、薬物の作用の個人差は、遺伝子多型、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなどの薬理ゲノミクスにより解析されているが、その情報はすでに莫大な量が、急速に蓄積されている。
(田中利男 薬理インフォマティクスと薬理ゲノミクス p.113)
  10 生命のシステム
ヒトゲノムの配列の決定がほぼ完了し、転写レベル・タンパク質レベル・生理機能レベルなど各階層の網羅的データが集積しつつある。システムバイオロジーとは、これらの膨大な知識を基盤に、生命をシステムとして理解することを目指した、生物学の新たな分野である。
(石井 優 システムバイオロジー p.117)
総 説 環状ヌクレオチド分解酵素の現状
環状ヌクレオチドを分解するホスホジエステラーゼは11ファミリー21遺伝子から構成され,その特異的阻害薬はさまざまな疾患の治療薬として使用されている.最近発見された新規なホスホジエステラーゼも,新たな創薬ターゲットとしてノックアウトマウスや特異的阻害薬を用いた研究が進められている.
(小寺 淳 環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ研究の最近の進展:アイソザイム、機能、阻害薬 p.121)

実験技術

放射性薬剤を使ったヒトでの予備的臨床試験
本格的な第Ⅰ相試験を行う前に,放射性核種で標識した極微量の候補薬剤をヒトに投与して,加速器分析法(AMS)や陽電子断層撮像法(PET)を使って、体内動態試験や薬理作用の評価を行う予試験的な臨床試験が実施され、医薬品開発の期間短縮や経済的負担の低減に貢献している.
(上原知也 医薬品開発における放射性薬剤の利用:極微量投与後の薬物動態のAMSおよびPETによる評価 p.129)
実験技術 Gタンパク質の細胞内動態イメージング
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用して、生体内の反応を可視化するFRETプローブ群が開発されている。我々が開発した緑色蛍光タンパク(GFP)を使ったFRETプローブは、低分子量Gタンパク質Rhoの分子センサーであり、これを使ってRhoファミリーGタンパク質の活性変化が明らかになってきた。
(吉崎尚良 FRETプローブによるRhoファミリーGタンパク質の細胞内動態イメージング p.135)
新薬紹介総説 新規糖尿病治療薬リスプロ混合製剤
インスリンリスプロと中間型インスリンリスプロを異なる割合で含有するインスリンリスプロ混合製剤(ヒューマログミックス25およびミックス50)は、ヒトインスリン混合製剤と比較して、優れた血糖コントロールの改善効果やQOLの向上が認められている。この製剤の発売により、糖尿病患者一人一人のライフスタイルに合わせて混合比の異なるヒューマログ製剤が選択できるようになった。
(阿波隆夫 新規糖尿病治療薬、インスリンリスプロ混合製剤ヒューマログRミックス25注、ヒューマログRミックス50注)および中間型インスリンリスプロ(ヒューマログRN注)の製剤開発と臨床成績 p.143)
展望シリーズ: ゲノム薬理学 四方山ばなし
 
2
温故知新
ヒトゲノム構造解析の終了宣言を受けて、ゲノム薬理学とその将来を展望する時、過去150年の先達の足跡を振り返り、今後のヒトの健康科学へのインパクトを考察する。
(今川健一 古きを訪ね、新しきを知る p.152)
落ち穂拾いの薬理学考課
 
2
血管ACEと動物と人間
血管ACEが、高血圧に加えて動脈硬化でも悪さをしていることを見つけた話です。ついでに実験動物としてのサルにまつわる話と、野生動物と楽しく暮らすための日本人のあるべき姿を述べました。
(宮崎瑞夫 ACE阻害薬は過去の遺物ではない p.158)
最近の話題
    クローン病原因遺伝子
NODは病原微生物認識機能をもつタンパク質である。2001年にNOD2の変異が炎症性腸疾患の1つであるクローン病に関わることが明らかとなった。NODはTLRとともに感染予防や炎症制御の面から新しい創薬ターゲットとなる可能性があり、今後の展開が期待される。
(尾崎博 クローン病原因遺伝子として同定された菌体成分認識受容体NOD2 p.162)

 

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