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日薬理誌第126巻第3号 2005年9月

アゴラ
167
見果てぬ創薬の夢
杉本八郎


特 集 ●ストレスと脳                                   
169
序文:尾仲達史、井樋慶一
                               
170
ストレス反応とその脳内機構    
尾仲達史
         
174
ストレス応答のかなめCRH遺伝子    
井樋慶一
          
179
ストレスが変える視床下部の遺伝子    
上田陽一
          
184
ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系-視床下部の役割  
西条寿夫、堀 悦郎、小野武年

189
精神疾患モデルマウスはストレスに弱いか?   
宮川 剛、山崎信幸
   
194
ストレスを感じる前頭前野―ストレス適応破綻の脳内機構―   
岡本泰昌        

総 説
199
アルツハイマー病診断用プローブ
工藤幸司


実験技術
207
自由運動下のマウスにおける口腔顔面領域の運動の客観的評価法
山田好秋、岡安一郎


新薬紹介総説
213
新規HMG-CoA還元酵素阻害薬ロスバスタチンカルシウム(クレストールR) の薬理作用と臨床効果   
大藤和美、矢野誠一、山口基徳、Graham Smith、平田雅子、嶋田 斉、出石公司、品川丈太郎、松永和樹


■ 展望シリーズ:ゲノム薬理学 四方山ばなし(3)
220
PG導入に関するFDAのイニシアティブ ―見て、聞いて、読んで―
藤澤幸夫


落ち穂拾いの薬理学考課(その三)
224
Chymaseの発音はチャイマッセ
宮崎瑞夫


サイエンスエッセイ

226
製薬企業における動物実験と動物愛護(福祉)
阪川隆司


最近の話題
228
血管のインスリン抵抗性-アンジオテンシンIIと活性酸素種-
勝山真人

229
20-Hydroxyeicosatetraenoic acid(20-HETE)は創薬ターゲットになり得るか?
宮田則之


学会報告から
230
世界に誇れる日本の創薬と将来
長尾 拓、加藤隆一、近藤裕郷、丹沢和比古、後藤俊男、宮田桂司、山西嘉晴、稲田義行


第78回日本薬理学会年会長に聞く
234
遠藤政夫、岩尾 洋、田中利男

新教授紹介
238 漆谷徹郎、荻田喜代一
239 春藤久人、角南明彦
240 富樫広子、櫨  彰
241 服部裕一、細川正清
242 掘田芳弘、村木克彦

お知らせ
前綴込 第79回年会案内
9A    学術評議員候補者紹介
10A   JJP&JPSデータ
11, 12A 募集
12-13A 集会案内
14-15A Calendar
16A   編集後記
188頁 次号予告
206頁 E-journalアクセス集計
212頁 JPS 98:4目次

著者プロフィール
173,178, 183, 193, 198, 211,219

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●特 集
ストレスと脳●
脳はストレスをどう受容し、そして、どう処理していくのか、ストレスの脳機構の化学的解剖学的基盤を明らかにする。さらに、ストレス研究に残された課題を提示し、ストレスの脳研究の最前線を分かり易く紹介する。
(尾仲達史「ストレスと脳」序文 p.169)
 
ストレスとはなにか?
ストレスは日常よく使われている言葉であるが、これを定義することは難しい。しかし、疫学的調査により様々の疾患の増悪因子になることが明らかにされている。ストレスを感受するのは脳であり、ストレスにより活性化する脳部位が同定されつつある。この一つが、脳幹部のPrRP/ノルアドレナリンニューロンである。今後、活性化する脳部位により、ストレスが分類されると考えられる.
 (尾仲達史 ストレス反応とその脳内機構  p.170)
 
ストレス応答のかなめCRH遺伝子
ストレス情報は全て脳内視床下部で統合される。最終的出力系であるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)ニューロンが糖質コルチコイド(GC)分泌を制御し、GCが生体防御にはたらく。CRHニューロンの活動性は様々な因子によって調節されており、多様なストレスに対応できる仕組みが備わっているものと考えられる。本稿では遺伝子発現を指標としたCRHニューロン調節メカニズムに関する研究成果を紹介する。
(井樋慶一 ストレス応答のかなめCRH遺伝子 p.174)
 
ストレスが変える視床下部の遺伝子
生体がストレスを受けると、脳を介して種々の生体反応が引き起こされる。特に、自律神経系を介したストレス反応や内分泌反応は視床下部を介して引き起こされる。視床下部ニューロンでの浸透圧ストレス後の前初期遺伝子群の発現動態、視床下部に存在する摂食関連ペプチドとストレス反応との関連について紹介する。
(上田陽一 ストレスが変える視床下部の遺伝子 p.179)
 
ストレスと大脳辺縁系ー視床下部
様々な精神的ならびに物理的ストレス(ストレッサー)に脳はどのように反応するのであろうか。視床下部は、個体生存(内部環境の恒常性維持)に重要な役割を果たし、これらストレス負荷に対するストレス反応形成のための最終共通経路であると考えられている。本稿では、これらストレス情報が視床下部に到る脳内神経経路やストレス反応形成における扁桃体-視床下部系の役割について概説する。
(西条寿夫 ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系?視床下部の役割 p.184)
 
精神疾患モデルマウスはストレスに弱いか?
カルシウム/カルモデュリン依存性の脱リン酸化酵素カルシニューリンの前脳特異的ノックアウトマウスは統合失調症様の各種の表現型異常を示す。このマウスは、不安様行動の亢進や環境の変化へ脆弱性も示すが、本稿では精神疾患のストレス脆弱性仮説との関連についても議論する。
(宮川剛 精神疾患モデルマウスはストレスに弱いか? p.189)
 
ストレスを感じる前頭前野
われわれはストレスの適応破綻の脳内メカニズムを明らかにするために、脳機能画像解析法を用いた検討を行っている。その結果、ストレス事象は脳内において認知されること、急性ストレスにより脳内機構の一部に変化が生じること、予測がストレス事象の入力を抑制する可能性が考えられた。さらに、これらの機能において前頭葉が重要な役割を果たしていることが推定された。
(岡本泰昌 ストレスを感じる前頭前野-ストレス適応破綻の脳内機構- p.194)
総 説 アルツハイマー病をイメージングで診断する
アルツハイマー病(AD)には、臨床症状が顕性化するはるか以前からアミロイドβ蛋白(Aβ)の蓄積が始まっている。Aβのβシート構造を認識する標識プローブを開発し、脳内Aβとプローブの結合量およびその空間的分布からADを診断しようとするのがアミロイド イメージングである。本稿ではAD診断法としてのアミロイドイメージングの有用性、プローブの現状および薬理作用等について概説する。
(工藤幸司 アルツハイマー病診断用プローブ p.199)

実験技術

マウスの口腔の運動を記録する
顎・口腔は栄養摂取器官としての咀嚼運動、発話器官としての構音運動、さらには道具として手指に負けないくらい複雑な随意運動をこなしている.そのメカニズムを知るため多くの動物モデルが使われてきたが、遺伝子操作の容易なマウスは下顎運動軌跡の記録が困難なため使われてこなかった.我々はマウスの口腔運動を動作学的・筋電図学的に記録・解析できるシステムを開発し、その基本的特性を明らかにした.
(山田好秋 自由運動下のマウスにおける口腔顔面領域の運動の客観的評価法 p.207)
新薬紹介総説 新規HMG-CoA還元酵素阻害薬ロスバスタチンカルシウム
ロスバスタチンカルシウム(クレストールR)は2005年4月に発売された親水性のHMG-CoA還元酵素阻害薬であり、強力で肝組織選択的なコレステロール合成阻害作用を示す。海外での大規模臨床試験でLDL-CおよびTG低下効果等の優れた脂質改善作用が示されたことから、高コレステロール血症治療への貢献が期待されている。
(大藤和美 新規HMG-CoA還元酵素阻害薬ロスバスタチンカルシウム(クレストールR)の薬理作用と臨床効果 p.213)
展望シリーズ: ゲノム薬理学 四方山ばなし
 
3
ファーマコゲノミクスと医薬品開発
本年3月、FDAは医薬品の安全性や有効性を改善する切り札としてファーマコゲノミクス(PG)の導入を促すガイダンスを発表し、4月のFDA/DIA共催のベセスダ会議を経てFDAと製薬企業はPG導入に走り出した。
(藤澤幸夫 PG導入に関するFDAのイニシアティブー見て、聞いて、読んでー p.220)
落ち穂拾いの薬理学考課
 
3
Chymaseの発音はチャイマッセ
アンジオテンシンIIはキマーゼによっても作られること。キマーゼがからんだ病態が沢山みつかること。キマーゼはchymaseと綴りますが、これはチャイマッセとも読みます。
(宮崎瑞夫 Chymaseの発音はチャイマッセ p.224)
サイエンスエッセイ
    動物実験はなぜ必要なのか?
健康・疾病問題の解決と人類の幸福増進に不可欠な動物実験が、広く社会の理解と支持を得られるように、生命科学に携わる研究者は努力している。
(阪川隆司  製薬企業における動物実験と動物愛護(福祉)p.226)
最近の話題
    抗酸化薬で糖尿病血管合併症の予防?
II型糖尿病では組織に「インスリン抵抗性」が生じるが、血管ではアンジオテンシンIIと活性酸素種がインスリン抵抗性の発現に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
(勝山真人 血管のインスリン抵抗性ーアンジオテンシンIIと活性酸素種ー p.228)
    20-HETE産生酵素阻害薬は未来の新薬?
20-HETEは第3のアラキドン酸代謝物として注目を集めている。近年、産生酵素阻害薬の開発と共に脳血管疾患、虚血性心疾患への20-HETEの関与が明らかとなってきた。この阻害薬は新しい治療薬になるのだろうか? 
(宮田則之 20-Hydroxyeicosatetraenoic acid (20-HETE) は創薬ターゲットになり得るか? P.229)

 

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