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日薬理誌第126巻第4号 2005年10月

アゴラ
243
大学病院薬剤部の医学・薬学教育への参画
山田勝士

特集 ●メカニカルストレスおよび酸化ストレスによる心血管系分子・細胞反応
245
序文:中山貢一

246
ラジカル認識抗体を用いた酸化ストレス由来プロテインラジカル検出法
田島壮一郎、土屋浩一郎、大西秀樹、兼松康久、玉置俊晃、Mason, Ronald、滝口祥令

251
心筋酸化ストレス:アンジオテンシン受容体とβアドレナリン受容体の相互作用
木村正司、安部陽一

256
流れ刺激存在下の血管内皮細胞において認められる細胞内カルシウム濃度上昇によるカルパインを介する細胞形態の制御
宮崎拓郎、山本雅之、本田一男、大幡久之

262
脳血管におけるストレッチと低浸透圧刺激に対する筋原性反応のイオンメカニズム
石川智久、中山貢一

総 説
267
心室スパイラル・リエントリーに対する抗不整脈薬の作用
児玉逸雄、本荘晴朗

273
QT延長症候群におけるカリウムイオンチャネルタンパク修飾の関与
黒川洵子、古川哲史

281
致死性不整脈におけるCa2+制御タンパク異常の関与
大草知子

287
Ca2+の動きをミリ秒の眼で視る-共焦点レーザー顕微鏡による心筋細胞内Ca2+濃度の高速画像化と薬理学
田中 光、川西 徹、重信弘毅


落ち穂拾いの薬理学考課(その四)
296
薬理学研究者心得の巻
宮崎瑞夫


最近の話題
298
カエルの毒から発見された鎮痛薬
工藤賢三、平 英一

299 
パーオキシナイトライトと血管内皮障害
篠崎一哉


研究室訪問
301
金沢医科大学生体情報薬理学教室
西尾眞友


コレスポンデンス
295
理系人に光を! 高校生に生物学を!
-次世代の基礎研究を担う大学院生獲得のために-
酒井規雄

お知らせ
前綴込 理事・監事候補者推薦用紙
302頁  役員・委員選挙実施日程
17-21A 被推薦権有資格者名簿
22-23A CALENDAR
23A   募集
24A   編集後記
272頁 次号予告
280頁 JPS 99:1目次
294頁 安全性情報No.216
300頁 E-journalアクセス集計
18P  執筆の手引き

著者プロフィール

250, 255, 261, 266, 272, 279, 286

部会報告 / 抄録
300頁/ 1P 第112回 関東部会 大野泰雄
301頁/ 7P 第107回 近畿部会 西尾眞友

//広 告///編集後記//

 

●特 集 ストレスと心臓・血管●
生きるとはストレスと上手につき合うこと。心臓・血管もまたしかり。血圧、血流などのメカニカルストレスやレニン-アンジオテンシン系・交感神経系は、生理的循環調節に加え、酸化ストレスや前炎症状態を引起し循環系のリモデリングに関わる。新進気鋭の若手によるミニレビューは新たな循環ストレス制御薬のヒントとなる。
(中山貢一「メカニカルストレスおよび酸化ストレスによる心血管系分子・細胞反応」序文 p.245)
 
ラジカル認識抗体によるプロテインラジカルの検出
活性酸素・フリーラジカルの直接検出法として用いられている電子スピン共鳴(EPR)法を使ってプロテインラジカルを検出するためには大量のタンパク質が必要である。そこで、我々はEPR法に代わる、ラジカル認識抗体を用いたプロテインラジカルの検出を行った。
(田島壮一郎 ラジカル認識抗体を用いた 酸化ストレス由来プロテインラジカル検出法 p.246)
 
交感神経系とレニン-アンジオテンシン系の相互作用
交感神経系とレニン-アンジオテンシン系の亢進はともに心機能不全の増悪因子である。興味あることに、これらは相互に影響しあい、アンジオテンシンAT1受容体拮抗薬はβアドレナリン受容体刺激薬注入によって生じる心肥大と心筋酸化ストレスを抑制することが分かった。そのメカニズムについて心臓MAPキナーゼ活性の観点から考察する。
(木村正司 心筋酸化ストレス:アンジオテンシン受容体とβアドレナリン受容体の相互作用 p.251)
 
カルシウムとカルパインによる細胞形態の変化
血管内皮細胞は常に血流による機械刺激を受容している。流れに起因する張力が内皮細胞の接着斑に集中すると、接着斑近傍の機械受容チャネルが活性化され、細胞外からのカルシウム流入が引き起こされ、カルシウムにより活性化されたカルパインが接着斑を解除することにより、内皮細胞の形態変化が制御されることが明らかになってきた。
(宮崎拓郎 流れ刺激存在下の血管内皮細胞において認められる細胞内カルシウム濃度上昇によるカルパインを介する細胞形態の制御 p.256)
 
伸展刺激と血管収縮をつなぐイオンチャネル
20世紀初頭、英国の生理学者Baylissは、イヌ摘出総頸動脈標本の内腔圧を急激に上昇させると、血管が収縮することを見出した。以来100年余を経過し、心脈管系機能の基本法則として、この筋原性反応の重要性が再認識されている。伸展活性化カチオンチャネルは筋原性反応の重要な因子であり、その分子実体を含めた詳細が明らかになりつつある。
(石川智久 脳血管におけるストレッチと低浸透圧刺激に対する筋原性反応のイオンメカニズムp.262)
総 説 心室スパイラル・リエントリーと抗不整脈薬
心室細動・頻拍の大部分はスパイラル・リエントリーを基盤として発生する。活動電位光学マッピングを用いてウサギ摘出心に誘発したスパイラル・リエントリーの検討結果から、スパイラル・リエントリーを止めるためには活動電位の脱分極と再分極の両者に作用する薬物が必要であることが明らかになった。
(児玉逸雄 心室スパイラル・リエントリーに対する抗不整脈薬の作用p.267)

総 説 致死性不整脈とカリウムチャネル
致死性不整脈を特徴とするQT延長症候群が自律神経調節や男女差などの影響を受けることは1970年代から指摘されていたが、その分子メカニズムについては最近まで明らかになっていなかった。本稿では、外向き遅延整流性カリウムチャネル電流の減少を原因とするQT延長症候群に注目し、イオンチャネルタンパクの修飾がQT延長に与える影響の分子メカニズムにおける最近の知見を紹介する。
(黒川洵子 QT延長症候群におけるカリウムイオンチャネルタンパク修飾の関与 p.273)
総 説 致死性不整脈とカルシウム制御タンパクの異常
不整脈の治療において、実際に不整脈が生じた場合の治療法に加え、様々な病態に対する心臓の代償機構の破綻を防止することにより不整脈の発生を予防する治療法の重要性が強調されるようになった。本稿では、致死性不整脈の発生・維持機構における細胞内Ca2+ タンパク質異常とギャップ結合リモデリングの関与につき概説し、新しい不整脈治療につき考察する。
(大草知子 致死性不整脈におけるCa2+制御タンパク異常の関与 p.281)
総 説 カルシウムの動きをミリ秒の眼で視る
高速走査型共焦点レーザー走査顕微鏡により生きた心筋細胞内のCa2+ に関して他の手法では得られない情報が蓄積しつつある。Ca2+ トランジェント、Ca2+ ウェーブ、およびCa2+ スパークの解析が進み、細胞内Ca2+ 制御機構の理解や各種生理活性物質・薬物の作用機序解明に応用されている。
(田中 光 =Ca2+の動きをミリ秒の眼で視る=共焦点レーザー顕微鏡による心筋細胞内Ca2+濃度の高速画像化と薬理学 p.287)
落ち穂拾いの薬理学考課
 
4
薬理学研究者心得-若い研究者に
臨床家になるつもりが、研究で禄を食む人生を過ごしてしまった老薬理学会員からの、まだ若い会員への研究人生の楽屋裏話です。
(宮崎瑞夫 薬理学研究者心得の巻 p.296)
最近の話題 カエルの毒から発見された鎮痛薬
カエル毒由来のエピバチジン等のニコチン作動薬は持続性疼痛や難治性の神経因性疼痛等を抑制することが報告されており、新しい鎮痛薬への応用が期待される。
(工藤賢三 カエルの毒から発見された鎮痛薬 p.298)
最近の話題 パーオキシナイトライトと血管内皮障害
活性酸化窒素種であるパーオキシナイトライトによる酸化・ニトロ化ストレスはさまざまな心血管系の病態において血管内皮機能障害の発症に密接に関連していることが明らかになってきた。
(篠崎一哉 パーオキシナイトライトと血管内皮障害 p.299)

 

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