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日薬理誌第127巻第1号 2006年1月

アゴラ
1 
国民医療費の高騰と医学・薬学の責任
大泉 康

特 集 ●中枢シグナルの調節と疾患
3 
序文:野村靖幸 

4  
グルタミン酸作動性神経系と統合失調症モデル動物    
毛利彰宏、野田幸裕、溝口博之、鍋島俊隆

9 
ヒトにおける衝動性と5-HT2A受容体遺伝子多型との関連性―Go/Nogo課題を用いた検討―
野村理朗

14   
神経因性疼痛発症メカニズムにおけるミクログリアとATP受容体の役割
井上和秀、津田 誠

18 
脊髄の痛覚伝導における血小板活性化因子(PAF)の役割
土肥敏博、森田克也、森岡徳光、Md. Joynal Abdin、北山友也、北山滋雄、仲田義啓

25 
脳内免疫機構に関与するレプチンの役割とレプチン受容体機構
大熊康修、細井 徹、野村靖幸

32 
モルヒネ依存における持続的神経内プロテインキナーゼCの活性化と細胞-細胞間相互作用
成田 年、宮竹真由美、鈴木雅美、鈴木 勉

新薬紹介総説
37 
塩酸エピナスチン(アレジオンR ドライシロップ1%)の薬理学的特性および臨床効果
大村剛史、川嵜哲雄


書 評

47 
改良型新薬創製のための薬科学1
杉本八郎


最近の話題
48 
日本が世界に誇れる一流品-GLP(Good Laboratory Practice)下での動物実験-(2)
西村(鈴木)多美子

49 
バイオロジクスのトランスレーショナルリサーチ(TR) (2)
川西 徹

50 
新しい酸素センサー兼NOセンサー、RGSタンパク質
諸井佳代子、西山真理子、木村定雄

51 
TGF-β複合体と動脈硬化症(1)
神崎哲人


リレーエッセイ vox nova

52
オリジナリティーを求めて―遡及的戦略か童心か―
池谷裕二

53 薬理学との出会い―ミズクラゲのおかず、サソリの空揚げ、そして薬理学へ
中瀬古(泉)寛子


学会便り

55 北部会 市民公開講座「遺伝子が決める私たちの体質」
大貫敏男


くすりの来た道(3)
56 
エクソシスト
岡部 進

研究室訪問
58
千葉大学 大学院 医学研究院薬理学
中谷晴昭

59
新潟薬科大学 薬学部薬理学教室
大貫敏男

60
武庫川女子大学 薬学部薬理学I教室
國友 勝

お知らせ
1A  第21回学術奨励賞決定
1A  事務局NEWS
2A  募集
2-3A  集会案内
4-5A  Calendar
6A  JPSのIFについて
7A  執筆の手引き
8A  編集後記
13頁 次号予告
36頁 JPS 99:4 目次
18P  E-journal アクセス集計

著者プロフィール
8, 13, 24, 31, 46

部会報告/抄録
58頁/ 1P 第113回 関東部会   中谷晴昭
59頁/ 9P 第 56 回 北 部 会
  第33回 薬物活性シンポジウム 長友孝文
60頁/19P 第108回 近畿部会   國友 勝

 

●特 集 脳の疾患とシグナル伝達系●
脳科学の中でも魅力的な課題は、多彩な脳高次機能を支える細胞・分子シグナル伝達系調節機序と、その異常と各種の脳疾患の発症機序に関する研究であろう。この「脳シグナル調節と疾患」は創薬研究にも示唆を与えよう。
(野村靖幸 「中枢シグナルの調節と疾患」序文 p.3)

 
統合失調症とNMDA受容体
統合失調症は「グルタミン酸作動性神経系の機能低下によるという仮説」が提唱されている.NMDA受容体拮抗薬であるPCPを連続投与した動物ではNMDA受容体/細胞内シグナル伝達障害および,統合失調症様の行動障害が持続的に認められる.PCP連続投与動物は,グルタミン酸作動性神経系機能低下仮説に合致する統合失調症の動物モデルであり,統合失調症の病因の解明および新規治療薬の開発の一助になることが期待されている.
(毛利彰宏 グルタミン酸作動性神経系と統合失調症モデル動物 p.4)
 
衝動性と5HT2A 受容体
5HT2A 受容体遺伝子多型はヒトの衝動性に影響があるのだろうか?その関連性の有無については議論の最中にある。本研究では、行動科学的パラダイムにもとづくブラインド課題を実施し、末梢血リンパ球のゲノムDNA抽出により5HT2A 受容体遺伝子を解析した結果、A-1438Aホモ接合体グループでは、G-1438Gホモ接合体グループと比較して、衝動的反応の亢進が明らかとなった.
(野村理朗 ヒトにおける衝動性と5HT2A 受容体遺伝子多型との関連性 -Go/Nogo課題を用いた検討- p.9)

 
神経因性疼痛とATP受容体
ATPは、末梢では一次求心性神経のP2X3およびP2X2/3受容体を介して、中枢ではグリア細胞の活性化を通じて、神経因性疼痛に深く関与しているらしい。神経損傷後、活性化型脊髄内ミクログリアが、P2X4受容体の発現増加と活性化を介して、神経因性疼痛を発症・維持しており、そのP2X4受容体の発現増加メカニズムとして、フィブロネクチン-インテグリン情報伝達系の重要性が示唆されている.
(井上和秀 神経因性疼痛発症メカニズムにおけるミクログリアとATP受容体の役割 p.14)
 
痛みと血小板活性化因子(PAF)
PAFの脊髄腔内投与はメカニカル・アロディニアや熱性痛覚過敏を引き起こすこと,これらの反応にはATP,グルタミン酸の遊離,NO- cGMP/PKGカスケードを介するグリシン受容体GlyR?3機能の抑制が関与すること,この過程に活性化ミクログリアが重要な係わりを有することが示唆された.更に,グリシントランスポーター阻害薬の抗アロディニア,鎮痛薬としての有用性を示唆した.
(土肥敏博 脊髄の痛覚伝導における血小板活性化因子(PAF)の役割 p.18)
 
脳内免疫機構とレプチン
肥満遺伝子産物であるレプチンは脳内サイトカイン産生機構に関与する。これにはレプチン受容体のうち、機能的役割が未知の部分が多かったOB-Rb 以外の受容体が関係し、さらに従来から知られている視床下部に加え脳幹部もレプチンOB-Rb 受容体を介する作用点であること、そしてOB-Rb 受容体シグナル機構について著者らが検討した成績について概説する。
(大熊康修 脳内免疫機構に関与するレプチンの役割とレプチン受容体機構 p.25)

 
モルヒネの耐性・依存形成
モルヒネは全世界で繁用されている強力な麻薬性鎮痛薬であるが、健常人に投与した場合強度の耐性や精神および身体依存を形成するので、臨床現場でのモルヒネの適正使用を進める上で、モルヒネの有する耐性・依存形成機構の詳細を明確にすることが必要となる。本稿では、最新の知見を含めて、モルヒネの耐性・依存形成機序を概説する.
(成田 年 モルヒネ依存における持続的神経内プロテインキナーゼ Cの活性化と細胞-細胞間相互作用 p.32)

新薬紹介総説 抗ヒスタミン・抗アレルギー薬、塩酸エピナスチン
アレジオンRドライシロップは優れた抗ヒスタミン作用および抗アレルギー作用により小児の皮膚疾患(蕁麻疹,湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症)に伴う掻痒、アレルギー性鼻炎の諸症状を改善する。また,低い脳内移行性により眠気の発現などの中枢神経系へは影響が少ない。1日1回投与のドライシロップ製剤であり、服薬コンプライアンスの改善にも貢献すると期待されている.
(大村剛史 塩酸エピナスチン(アレジオンRドライシロップ1%)の薬理学的特性および臨床効果 p.37)


最近の話題  
 
世界に誇れる一流品(2)
非臨床安全性試験の最終目標は,ヒトに起こりえる不利益を予測することである.新薬開発に関わる動物実験科学者には,承認申請資料の非臨床データパッケージの中で,申請品目の安全性プロファイルを十分に明らかにすべきことを認識して欲しい.頑張れ,わが国の動物実験科学者!
(西村(鈴木)多美子 日本が世界に誇れる一流品 -GLP(Good Laboratory Practice)下での動物実験―(2) p.48)
 
バイオ医薬品の開発(2)
前号に続いて、生体由来物質(バイオロジクス)を医薬品として開発するためのトランスレーショナルリサーチ実施の条件、および実施にあたって考慮すべきポイントを、規制ガイドラインからまとめた。
(川西 徹 バイオロジクスのトランスレーショナルリサーチ(TR)(その2) p.49)

 
新しい酸素・NOセンサー、RGSタンパク質
細胞や組織は酸素濃度やNO濃度をどのように感知しているのだろうか?最近、Gタンパク質シグナル調節タンパク質であるRGSが、タンパク質分解N-end rule経路と組み合わさって、酸素センサー兼NOセンサーとして働くことが明らかになった。
(諸井佳代子 新しい酸素センサー兼NOセンサー、RGSタンパク質 p.50)
 

 

TGF-β複合体と動脈硬化症(1)
不安定狭心症、心筋梗塞などの急性冠症候群の発症は、冠動脈の粥腫(プラーク)の破綻によることが明らかとなった。TGF-βは細胞外マトリックスの発現増加などの作用を持ち、プラークの質的変化を引きおこす可能性がある。
(神﨑哲人 TGF-β複合体と動脈硬化症(1) p.51)
くすりの来た道
3
エクソシスト
古代の人は、病魔を体外に駆逐するために頭に穴を開けた。内科的には、徹底的に汚い物、汚物薬、を患者に服用させた。今回はその種類と歴史を記す。汚物の嫌いな人は読まないでください。悪魔祓いの儀式に興味ある人は、小説「エクソシスト」をお薦めします。
(岡部 進 エクソシスト p.56)

 

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