日本薬理学雑誌 > バックナンバー >

日薬理誌第127巻第2号 2006年2月

アゴラ
61
「創薬」非臨床から臨床応用へ -最近感じること  
梅村和夫

座談会: 痛みの克服に向けて
63 (会誌編集員会企画)
鍋島俊隆、伊藤誠二、井上和秀、植田弘師、川畑篤史、倉石 泰、田邊 勉、砥出勝雄、富永真琴、仲田義啓


特 集 ●ニューロペプチドY(NPY)の中枢摂食制御研究の進展

71  
序文:樋口宗史

73  
NPYと関連神経ペプチドの機能的相互作用と摂食調節    
上野浩晶、中里雅光

77 
甲状腺機能などホルモン異常によるNPY発現変化と摂食行動
石井新哉、亀谷 純

83   
NPYの摂食制御と消化管運動調節 -特にグレリンとの関連から
乾 明夫

88 
NPY拮抗薬の開発と抗摂食効果
金谷章生、石原あかね、岩浅 央、Douglas J. MacNeil、深見竹広

92 
NPY-Y5受容体ノックアウトマウスの摂食ペプチド発現の制御と摂食
樋口宗史、山口 剛、仁木剛史


総 説
97 
冬眠研究が拓く新たな生物医学領域 -冬眠を制御するシステム-
近藤宣昭

103 
レクチン様酸化LDL受容体における新たな展開とその臨床的意義
井上信孝、藤田佳子、沢村達也


実験技術
109 
アトピー性皮膚炎治療薬の薬効評価
稲垣直樹、永井博弌

くすりの来た道(3)
116 
毒薬は口に苦けれど
岡部 進


リレーエッセイ vox nova
118
獣医学の中の薬理学: 対象は産業動物、伴侶動物、野生動物といろいろ
乙黒兼一

119
失敗から学ぶ
黒川洵子


学会便り

121
近畿部会 市民公開講座: 生活習慣病をもっと知ろう-食のパワーとくすりのはたらき-
玄番宗一


マスコミを賑わせた発見
122 
神経因性疼痛の発症メカニズムに関する新知見
井上和秀


最近の話題
123 
TGF-β複合体と動脈硬化症(2)
神崎哲人



研究室訪問
124
長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 病態解析制御学 内臓機能薬理学分野
上園保仁

お知らせ
前綴込 公告 通常総会、役員選挙
     部会案内、払込取扱票
     テクニカルセミナー2006
9A    第79回年会案内(第3報)
13A   事務局NEWS
14-15A Calenda
16A JPS 99:5 目次
17A   募集
18A   編集後記
72頁  JPS 100:1 目次
76頁  次号予告
108頁 E-journalアクセス集計
46P  執筆の手引き

著者プロフィール
82,87,96,108,115

部会報告/抄録
122頁/35P 第58回西南部会 谷山紘太郎

 

●特 集 肥満とニューロペプチドY●
近年増加している肥満はメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の基になっている。肥満は摂食過多で生じ、摂食は中枢性に巧妙に制御されている。中枢摂食制御の中心を担うNPYをキーワードにして中枢摂食制御研究の進歩を紹介する。
(樋口宗史「ニューロペプチドY(NPY)の中枢摂食制御研究の進展」序文 p.71)

 
食欲の中枢による制御機構
NPYはPP, PYYと一つのファミリーを形成する摂食調節ペプチドである. NPYは強力な摂食亢進作用を有し, PPとPYYは摂食抑制作用を有するが, 本稿ではその作用, 受容体, および作用系路について概説する.
(上野浩晶 NPYと関連神経ペプチドの機能的相互作用と摂食調節 p.73)
 
甲状腺ホルモンと食欲亢進
甲状腺中毒症ラットでは、血中レプチン濃度の減少と視床下部NPY遺伝子発現の増加とPOMC/CART遺伝子発現の減少を認め、さらにY1受容体を介することが示唆された。低容量甲状腺ホルモンT3投与群では、摂食量は増加したが、視床下部NPY、POMC遺伝子発現は対照群との間に差は認めなかった。このことより、T3の直接作用による摂食調節機構の存在が想定される.
(石井新哉 甲状腺機能などホルモン異常によるNPY発現変化と摂食行動 p.77)

 
グレリンと食欲亢進
胃から見出された消化管ホルモングレリンは、空腹時に分泌され迷走神経を介して脳内視床下部に空腹情報(胃内が空虚であること)を伝達する。NPYはこのグレリンの作用を介在し、食欲を亢進すると同時に消化管の空腹期運動パターンを生成する。グレリンは末梢から見出された初めての空腹ホルモンであり、NPYはその下流に位置し、食欲と消化管機能と統合的調節を司る.
(乾 明夫 NPYの摂食制御と消化管運動調節―特にグレリンとの関連から p.83)
 
ニューロペプチドY受容体と食欲
NPYは、視床下部に存在するY1およびY5受容体介して、強力な摂食促進作用を惹起することが示唆されている。サブタイプ選択的な低分子化合物と受容体欠損マウスを用いた実験を通して、両受容体ともに摂食行動において重要な役割を果たしている受容体である事を確認するとともに、それぞれの受容体はNPY関連の摂食行動において、異なる役割を有する可能性を見出した.
(金谷章生 NPY拮抗薬の開発と抗摂食効果 p.88)
 
ニューロペプチドY系の代償機構
メタボリックシンドロームの原因になる肥満症の研究が進んでいる。中枢摂食調節に中心的な役割を担っている視床下部NPY/AgRP神経細胞の活動増加は摂食を増加させる。その受容体Y1,Y5拮抗薬の開発が進んでいる。しかし、Y5受容体ノックアウトマウスは逆に肥満を生じさせる。中枢摂食制御にはNPY系以外の巧妙な代償機構があることが明らかになった.
(樋口宗史 NPY-Y5受容体ノックアウトマウスの摂食ペプチド発現の制御と摂食 p.92)

総 説  
 
冬眠の生物医学
欧米では、20世紀初めから冬眠を制御する因子の探索に熱い視線が注がれてきた。冬眠現象には、0℃近い低体温で生体を維持する機構が隠されているとの考えからだ。だが、長年の間、このような因子を発見することはできなかった。心臓研究から出発した我々の冬眠研究は、冬眠への適応に必須と考えられる新しいホルモンを見出した.
(近藤宣昭 冬眠研究が拓く新たな生物医学領域-冬眠を制御するシステム- p.97)

 
酸化ストレスとレクチン様酸化LDL受容体
酸化LDL 受容体として同定された、レクチン様酸化LDL受容体(lectin-like oxidized LDL receptor-1; LOX-1)は、酸化LDLだけではなく、アポトーシス細胞、老化赤血球、炎症細胞などを認識し、生体防御機構や炎症性機転において多彩な機能を果たしている。最近、幅広い分野においてLOX-1の病態生理学的意義に関する研究が展開されており、内皮機能障害だけではなく、糖尿病血管病変、敗血症、急性冠動脈症候群などの種々の病態形成に深く関与していることが明らかとなってきた.
(井上信孝 レクチン様酸化LDL受容体における新たな展開とその臨床的意義 p.103)


実験技術  
 
アトピー性皮膚炎治療薬の薬効評価
掻痒はアトピー性皮膚炎の重要な症状の一つであり、これを制御することができれば皮膚症状は著しく改善する。マウスの皮膚に抗原を反復暴露することによって誘発する皮膚炎はアトピー性皮膚炎の病態モデルとして有用であり、掻破行動を指標とした掻痒抑制薬の評価にも用いられる.
(稲垣直樹 アトピー性皮膚炎治療薬の薬効評価 p.109)
くすりの来た道
 
毒薬は口に苦けれど
古代中国の英雄劉邦が納得した言葉―良薬は口に苦し。言葉は長命を保ち、現代マダガスカルの子は、くすりの苦さに泣き叫ぶ。しかし、この言葉の科学的意味、未だ解明されず・・・。
(岡部 進 毒薬は口に苦けれど  p.116)
マスコミを賑わせた発見
 
神経因性疼痛のメカニズム
脊髄内ミクログリアがP2X4 受容体の発現増加と活性化を介して、BDNFを放出し、GABAの作用を興奮性に変えてしまうことにより神経因性疼痛を発症することを示した。
(井上和秀 神経因性疼痛の発症メカニズムに関する新知見 p.122)
最近の話題
 

 

TGF-β複合体と動脈硬化症(2)
TGF-β複合体は活性型TGF-β、latency associated peptide (LAP)およびlatent TGF-β binding protein (LTBP)の3種の成分より構成されている。TGF-β複合体のそれぞれの構成成分が動脈壁で作用を持ち、動脈硬化症の成因に関与している可能性がある。
(神﨑哲人 TGF-β複合体と動脈硬化症(2) p.123)

 

このページの先頭へ