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日薬理誌第127巻第4号 2006年4月

アゴラ
245
日本臨床薬理学会の現状と将来
大橋京一

特 集 ●唾液腺の機能と機能不全
247
序文:川口 充

249  
唾液分泌とシグナルトランスダクション   
谷村明彦、東城庸介

256
唾液腺の電解質輸送
広野 力

261  
唾液分泌の中枢制御機構
松尾龍二

267 
口腔乾燥症の発症機序とアクアポリンの動態
張 剛太、中江良子、石川康子

273  
唾液腺と糖尿病ストレス
渡辺正人、川口 充、石川康子

総 説
279  
抑制性神経伝達物質トランスポーターの薬理学
茂里 康、島本啓子


実験技術
289
炎症性骨破壊における三次元骨梁構造解析の方法と意義
木本愛之


297  
マウスの呼吸・循環・自律神経機能測定法
桑木共之

治療薬シリーズ(2)慢性閉塞性肺疾患
304  
慢性閉塞性肺疾患治療薬の基礎
高山喜好

308 
慢性閉塞性肺疾患に対する薬物療法の現状と今後の治療薬に期待すること
前野敏孝

日の目を見ることのなかった研究達(その1)
312
カエルの網膜の酸素要求性は高くない

工藤佳久

最近の話題
314
エクササイズの薬理学 -インスリンなきインスリンシグナル経路の活性化-

伊藤由彦、中山貢一

315
エストロゲンとアルツハイマー病
田熊一敞


リレーエッセイ vox nova
316
座力-ノーベル賞への近道?
海野年弘

317
私たちのラボでの研究生活
福島章顕

書 評
288
Neurobiology of DOPA as a Neurotransmitter
村松郁延

お知らせ
25-26A   集会案内
27-28A   Calendar
28A     求人
広告第1頁 編集後記
248頁    JPS 100:3 目次
272頁    次号予告
278頁    執筆の手引き
303頁    E-journalアクセス集計
311頁    安全性情報No.222

著者プロフィール
255, 260, 266, 272, 277, 296

 

●特 集 唾液と口腔乾燥●
唾液腺は、他の臓器に比べ致命的な疾患に陥りにくい。そこには、ヴェールに包まれた未知の機能が隠されていると考えられる。本特集で、唾液腺が他の器官に与える影響、および他の器官から受ける影響について紹介する。
(川口 充 唾液腺の機能と機能不全 p.247)
 
唾液分泌の情報伝達
唾液分泌はCa2+とcAMPの2つの細胞内情報伝達系で調節されている。Ca2+の主な働きはイオンチャネルやトランスポーターの活性化による水・電解質分泌の亢進である。一方、cAMPはタンパク質の開口分泌に加えて、イオン輸送体の活性化やCa2+シグナルの増強によって水・電解質の分泌の調節にも関与する.
(谷村明彦 唾液分泌とシグナルトランスダクション p.249)
 
唾液腺の電解質輸送
唾液腺の電解質輸送に関する研究の中から,従来のパッチクランプ法では測定不可能と思われていたNa+-K+-2Cl-共輸送体のCl-輸送や細胞内で産生されたHCO3-の分泌を,グラミシジン穿孔パッチ法により,単一細胞のイオン電流としてリアルタイムに測定できるようになった.(広野力 唾液腺の電解質輸送 p.256)

 
唾液分泌の中枢制御
唾液分泌は自律神経系によって制御されている。一般に自律系は麻酔薬の影響を受け易く唾液分泌も麻酔下と無麻酔下では著しく異なる。このため唾液腺活動の中枢制御を明らかにするためには、行動学的研究をベースにした様々な実験手技を用いる必要がある。
(松尾龍二 唾液分泌の中枢制御機構 p.261)
 
口腔乾燥症の発症機序
唾液腺の管腔膜側に局在するAQP5が、刺激により細胞内移動するか否かについては議論があるが、唾液腺が刺激を受容すると、小葉間導管のAQP5が細胞内移動することを可視化して示すことができた。老化によりその移動が少なくなったので、これが口腔乾燥症の発症機序と考えられ、その治療にセビメリンが有効であった。
(張剛太 口腔乾燥症の発症機序とアクアポリンの動態 p.267)
 
唾液腺と糖尿病
多尿、多飲が現れたら糖尿病を疑えと昔からいわれているが、これらの兆候が唾液腺に大いに関係し、さらに派生して齲蝕や感染症といった他の口腔内疾患を招きやすいことは意外に知られていない。ここでは糖尿病ストレス下での唾液腺の変化とそのメカニズムについて紹介する.
(渡辺正人 唾液腺と糖尿病ストレス p.273)
総 説
抑制性神経伝達物質のトランスポーター
抑制性神経伝達物質であるGABAおよびグリシンの再取り込みを行い、シナプス間隙での濃度維持、近傍シナプスへの流出阻止、生合成系への再補充、神経伝達の終了等の役割を果たしているのが、GABAトランスポーターおよびグリシントランスポーターである。遺伝子クローニングおよび阻害薬等の開発によりその分子的実体や神経疾患への関与などが明らかになってきた.
(茂里康 抑制性神経伝達物質トランスポーターの薬理学 p.279)
実験技術  
三次元骨梁構造解析
最近,その測定機器の目覚ましい進歩と伴に注目を集めている三次元形態計測について骨梁構造解析法を例に紹介し,具体的薬理評価への応用例としてCOX阻害薬の炎症性骨破壊に対する作用の評価結果を示す.
(木本愛之 炎症性骨破壊における三次元骨梁構造解析の方法と意義 p.289)

マウスの自律神経機能測定法
呼吸器系・循環器系およびそれらを調節している自律神経系をターゲットとして遺伝子改変マウスを利用できるようにするために、マウスで使うことができる様々な測定方法が開発されているが、それらを利用する際に考慮すべき点や筆者らの工夫を中心に解説する.
(桑木共之 マウスの呼吸・循環・自律神経機能測定法 p.297)
治療薬シリーズ(2)慢性閉塞性肺疾患
 
慢性閉塞性肺疾患の治療薬
COPDは末梢気道炎症,肺気腫または両者の併発により惹起される閉塞性換気障害をともなう疾患である。 禁煙とともに、炎症状態の改善が原因療法となりうることが示唆され、慢性安定期に管理薬として、炎症をコントロールし病態の進行を止めるような医薬品が期待されている。近年、COPDの肺組織破壊に関わる分子機構が明らかにされ、プロテアーゼ阻害薬や細胞浸潤に関連する受容体拮抗薬などの新たな分子標的薬の開発が進められている.
(高山喜好 慢性閉塞性肺疾患治療薬の基礎 p.304)
 
慢性閉塞性肺疾患の薬物療法
現在COPDには、患者の重症度に合わせ、禁煙指導・薬物療法・栄養療法・呼吸リハビリテーションなどの包括的治療が行われている。しかし、COPDの本質的な治療は気道や肺胞の炎症および肺胞壁の破壊を抑制するものであり、プロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡やオキシダント・アンチオキシダント不均衡を是正するような治療の出現が期待される.
(前野敏孝 慢性閉塞性肺疾患に対する薬物療法の現状と今後の治療薬に期待すること p.308)
サイエンスエッセイ
 
日の目を見ることのなかった研究
40年間も研究を続けていると、論文にしておけばよかったと悔やまれる研究がいくつもある。このシリーズでは私の研究遍歴を含めて「日の目を見なかった研究達」へのお詫びの気持ちを書いてみたい。ご用とお急ぎでない方々はおつきあいをお願いします。
(工藤佳久 日の目を見ることのなかった研究達(その1)カエルの網膜の酸素要求性は高くない p.312)
最近の話題  
 
運動の効果
運動は代謝を促進するだけでなく、骨格筋へ局所的力学刺激を与える。骨格筋への伸展刺激はAkt/PKB、p38MAPKを活性化しGLUT4のトランスロケーションを促しインスリンなしに糖取り込みを促進する。
(伊藤由彦 エクササイズの薬理学-インスリンなきインスリンシグナル経路の活性化- p.314)
エストロゲンとアルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)の発症率は女性が高く,エストロゲンなど女性ホルモンの防御的作用が示唆されている.本稿では,エストロゲンの神経保護作用に関する最近の報告を紹介し,ADに対するホルモン補充療法の今後の課題について述べる.
(田熊一敞 エストロゲンとアルツハイマー病 p.315)


 

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