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日薬理誌第129巻第2号 2007年2月

目次 ハイライト top

アゴラ
73
メディカルスクールと医学科の薬理学
元村 成

特 集 ●ストレスと生活●
75
序文:二木鋭雄

76
良いストレスと悪いストレス
二木鋭雄

80
唾液マーカーでストレスを測る
山口昌樹

85
遺伝子で応える細胞のストレス応答
野口範子

89
ASKファミリーによるストレス応答 ~細胞がストレスを感じる仕組みと疾患~
一條秀憲

94
疲労の分子神経メカニズムと疲労克服
渡辺恭良

99
涙とストレス緩和
有田秀穂


総 説

105
腎臓癌抑制遺伝子としてのコネキシン32の機能と効果
藤本絵里子、矢野友啓、上野光一


治療薬シリーズ(12)抗てんかん薬

110
抗てんかん薬研究の新たな展開
三浦義記

115
新規抗てんかん薬と従来薬との併用療法について
植田勇人

創薬シリーズ(1)標的探索
119
医療用医薬品の標的分子の同定と今後の展望
鴇田 滋

124
プロテオミクスから創薬へ -ケミカルバイオロジーの応用と展開-
原村昌幸


新薬紹介総説
129
注射用アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾームR)の抗真菌作用および臨床効果
馬庭貴司、山本 寛


キーワード解説
136
水チャネル・アクアポリン
張 剛太、岡村 航、石川康子

138
RNA干渉
大室弘美、長岡利栄

最近の話題
142
LTD4/TXA2デュアルアンタゴニスト、KP-496の抗喘息作用
須田昌宏

144
インテグリンと多発性硬化症
秀 和泉


書 評
145
ローレンス臨床薬理学
藤村昭夫


サイエンスエッセイ

146 NOとその合成酵素のルーツを求めて
戸田 昇

研究室訪問
148
京都薬科大学薬理学教室
奈邉 健

149
琉球大学大学院医学研究科 感染制御医科学専攻
安仁屋洋子


学会便り

150
近畿部会 市民公開講座「明日も健やかに生きるために」
河野茂勝


リレーエッセイ vox nova
151
きっかけは学部時代の部活
長友克広

152
新しい研究分野への挑戦~チャレンジングな道!?~
清中茂樹

新教授紹介
153 尾崎昌宣、李英培

お知らせ
前綴込  部会案内、払込取扱票
      テクニカルセミナー2007

5-8A   第80回年会案内(第3報)
9A     事務局NEWS
10A    募集
11A    Calendar
12A    英語目次、等
104頁   JPS 103:1目次
110頁   執筆の手引き
115頁   ご投稿/ご寄稿の方々へ
123頁   次号予告
143頁   E-journalアクセス集計
154頁   JPS100巻の出版と今後について
広告第1頁 名誉会員、役員一覧1A  


著者プロフィール
79, 84, 88, 93, 98, 103, 109

部会報告/抄録
148頁/17P  第110回近畿部会  河野茂勝
149頁/32P  第59回西南部会  安仁屋洋子

 

ハイライト 目次 top

●ストレスと生活●
序文
ストレスはわるいものとは限らず、よいシグナル、刺激にもなる。ストレスをうまく利用できることが望ましい.
(二木鋭雄 「ストレスと生活」序文 p.75)

ストレスとは
われわれは日常的にストレスにさらされており、これがこころやからだの健康をおびやかして不調、疾患の原因にもなっている。しかし、われわれにはストレスに対する応答機能も備わっており、ストレスをうまく利用してホメオスタシスを保ち、また防御機能を高める術を構築している。ストレスは常にわるいものとは限らず、場合によってはよいシグナルとなっている.(二木鋭雄 p.76)


唾液で分かるストレス
人体には,自律神経系や内分泌系などの情報伝達系の制御が働いている。従来のストレス検査では,交感神経系のみ,もしくは内分泌系のみを計測するものが中心であった。また,体の状態は時々刻々と変化するのに,被測定対象が健常であるかどうかは主観的に判断されており,疾患などの影響を定量的に考慮していなかった。これからのストレス検査では,唾液を用いて簡便に,かつ複数のバイオマーカーを用いることによって,交感神経系と内分泌系に加え,免疫系も同時に評価することが重要となってくる.(山口昌樹 p.80)

酸化ストレスへの遺伝子応答
生物は酸化ストレスに対する防御機構を獲得することによって、地球環境に適応してきた。防御機構の構築およびその維持は、細胞の遺伝子発現の調節によってなされてきた部分が大きい。生物が酸素を使って生命を維持するうえで、酸化は避けることができない。酸化生成物による遺伝子誘導の解析によって、これまで細胞毒性の強い物質として知られていたものが、様々な細胞防御遺伝子の発現誘導能をもつことがわかってきた.(野口範子 p.85)

ストレス応答の分子機構
私たちは、「細胞がストレスを感知し、ストレスに適切に応答する仕組み」を明らかするために、物理化学的ならびに生物学的ストレスによるMAPキナーゼファミリーの活性化機構とその病態生理学的意義を中心に解析している。本稿では、ASK-MAPキナーゼファミリーの解析を軸にストレス応答の分子機構から創薬基盤の創出を目指す私たちのアプローチの一端をご紹介する. (一條秀憲 p.89)


疲労の科学と克服
現代ストレス社会では、日本国民の40%近い多数が慢性疲労に苦しんでいる。疲労は,ストレスが重積して起こる機能低下状態であり非常に身近な現象であるが,その分子神経メカニズムに関する研究は最近になりようやく活発になってきた。様々な原因による疲労を分析し定量化方法を開発して広範な研究を行い,よりよい克服法を探っていくことは,未病として生活習慣病などの発症や過労死等を防止する意味でも重要である.(渡辺恭良 p.94)

涙とストレス緩和
涙は一般にストレスや悲しい体験によって誘発される。しかし私たちは感動の涙やうれし涙も流す。後者の場合、内側前頭前野の共感に関係する脳領域が、流涙に先行して興奮する。この信号がトリガーとなって、脳内がリセットされ、その出力が脳幹の上唾液核を興奮させ、副交感神経(顔面神経)を介して涙腺を刺激する。この副交感神経の過活動が、ストレス時に興奮する交感神経活動を積極的に抑制して、ストレス緩和作用を発揮する.(有田秀穂 p.99)



総 説
転移性癌とコネキシン遺伝子
ギャップ結合を構成するコネキシン(Cx)遺伝子は、ある種の原発癌特異的に癌抑制作用を示す。しかし、転移性癌における抑制効果に関してはまだ明らかとなっていない。本稿では、難治性の高い転移性腎臓癌において癌抑制遺伝子として作用するCx遺伝子分子種の特定およびその機能解明、さらにはそのCx遺伝子の癌抑制遺伝子としての機能を生かした新たな転移性腎臓癌治療法開発の可能性について紹介する.(藤本絵里子 p.105)


治験薬シリーズ(12)抗てんかん薬
近年の抗てんかん薬
近年の抗てんかん薬の創薬研究から、その臨床有用性が期待される幾つかの化合物や新規な標的分子を介する作用機序の想定など興味ある知見が得られている。これらの内容を創薬薬理的に概説すると共に将来にわたり期待され、行われるべき本領域の研究を展望した.(三浦義記 p.110)

新規抗てんかん薬の将来性
抗てんかん薬を用いたてんかん治療は、発作症状の詳細な聴取から始まる。発作形態に特異的に著効する抗てんかん薬があるからである。臨床開発の努力によって、海外の開発に10数年遅れているが、ここ数年以内にいくつかの新規抗てんかん薬の上市をみる。ここでは、新規抗てんかん薬の登場に伴って生じてくるてんかん薬物治療の将来的変化に望むことに言及する.(植田勇人 p.115)

創薬シリーズ(1)標的探索
創薬ターゲットの同定
ヒトゲノムプロジェクト完了に伴い遺伝子情報が増大する中、迅速な"創薬ターゲット"の同定が創薬での大きな課題となってきている。各製薬企業は、RNAi 技術等の新しい分子生物学的手法を用いて生物学的POCを促進する一方、リード化合物探索システムを強化・集約することで創薬ターゲットの同定の効率化を進めている。これらの新しい試みにより、従来の手法では困難とされていたターゲットに対する創薬の方向性も模索されている.(鴇田滋 p.119)

新薬紹介総説
深在性真菌症治療薬
深在性真菌症治療薬として2006年4月に製造承認を取得したアムビゾームは、アムホテリシンBのリポソーム製剤である。本稿では、本剤のリポソーム製剤としての特徴、薬効薬理試験成績、および臨床試験成績について紹介する.(馬庭貴司 p.129)

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