●遺伝子改変マウスの作製法●
◆序文
遺伝子改変マウスは今や薬理学研究に必須である。本特集は本マウス作製に必要な法的書類の書き方、作製の基本技法から最先端のコンデイショナル技法、さらにはマウスバンク等についてまで解説した貴重な手引書である。
(高濱和夫「遺伝子改変マウスの作製法」序文 p.319)
◆遺伝子組換え実験の申請
遺伝子改変マウス(トランスジェニックマウス, ノックアウトマウス)の作製および使用は, 遺伝子組換え実験に該当するのでカルタヘナ法が適用される.
すなわち, 生物多様性への悪影響を防止するために, 環境中への拡散を防止しつつ行われなければならない. 実験責任者は, 執るべき拡散防止措置を確認の上,
所属機関内の遺伝子組換え実験安全委員会等に実験申請して, 承認または確認を得なければならない.
(鈴木操 遺伝子改変マウスにかかわる遺伝子組換え実験申請 p.320)
◆トランスジェニックマウス作製技術
トランスジェニックマウス (外来遺伝子導入マウス)の作製は, 外来遺伝子をマウスの前核期受精卵に直接, マイクロインジェクションする方法が最も一般的である.
現在, トランスジェニックマウス作製技術は, 遺伝子の機能解析のみならず, 疾患モデル動物として病態解析や治療薬開発などに応用され, 生物学・医学・薬学を含む多くの分野で最も基礎的,
かつ重要不可欠な技術となっている.
(鈴木操 トランスジェニックマウス作製技術 p.325)
◆相同組換え法による遺伝子破壊
ES細胞を用いた相同組換え法による遺伝子破壊マウスの作製と解析は、遺伝子の機能を語る上で既に多くの実験手法の1つとなっている。原理的には単純であるため、相同組換え体を如何により効率よく確実に単離するかが成功のポイントとなる.
(竹田直樹 相同組換え法による遺伝子破壊マウス作製技術 p.330)
◆遺伝子トラップ法による遺伝子破壊
欧米で網羅的なノックアウトマウスプロジェクトが始まった。いうまでもなく、ポストゲノムにおいて、ノックアウトマウスを用いたin vivo解析が重要だからである。そのための方法論として、遺伝子トラップ法や相同組換え法の技術開発が進み、単なる遺伝子破壊ではなく、条件的破壊や遺伝子置換ができるベクターが開発されている。4-5年後には、もはや各研究者がノックアウトマウスを作製する時代は終わりを告げる.
(山村研一 遺伝子トラップ法による遺伝子破壊マウス作製技術 p.337)
◆マウスバンク
熊本大学CARDには、2つのマウスバンクシステムがある。1つは、マウスの寄託を受け、保存された系統について情報を公開、第三者へ広く供給するもの。もう一つは、有料にてマウス胚/精子の凍結保存サービスを行うものである(保存したマウスを第三者へ分与しない、また、そのマウスの情報を公開しないという条件)。両者とも、年々、保存件数が増え、着実にその成果を上げている.
(中潟直己 マウスバンク p.343)
受賞者講演
◆脊髄ミクログリアと神経因性疼痛
難治性である神経因性疼痛の発症維持におけるイオンチャネル型ATP受容体サブタイプP2X4受容体および脊髄ミクログリアの役割について,最近の研究成果とそれらにより提唱された新しい神経因性疼痛メカニズムについて概説する.
(津田誠 脊髄ミクログリアのATP受容体を介する新しい神経因性疼痛メカニズム p.349)
◆依存性薬物による精神障害
依存性薬物の乱用により報酬回路の異常興奮が長期間持続すると、渇望を伴う依存状態に陥る。さらに、依存性薬物は様々な精神障害を引き起こし、その精神症状は長期間にわたり持続する。報酬回路を構成する重要な神経系の一つである中脳辺縁系ドパミン作動性神経系に着目し、依存性薬物による精神障害の分子機序に迫る.
(永井拓 依存性薬物による精神障害の発現機序の解明に関する研究 p.354)
治療薬シリーズ(15) 排尿障害治療薬
◆排尿障害治療薬の基礎
排尿障害治療薬の創薬研究では平滑筋,神経あるいはホルモン等がターゲットとなっている。今回,排尿障害の中でも過活動膀胱,前立腺肥大症,および腹圧性尿失禁に焦点をあて,多岐にわたる新規作用機序に基づく創薬および現在開発中の化合物の特徴を述べる。更に,それぞれの疾患・症状の評価に用いられている病態モデル動物に関する知見を紹介し,これら病態動物モデルを用いた研究における臨床予測性を考察する.
(増田典之 排尿障害治療薬の基礎 p.361)
◆排尿障害治療薬の現状と問題点
蓄尿・排出障害のそれぞれに対する一般的な薬物治療とともに、両者を合併する病態として前立腺肥大症に伴う過活動膀胱を取り上げた。また今後有望と考えられている新しい治療法も併せて紹介した.
(関成人 排尿障害治療薬の現状と問題点 p.368)
新薬紹介総説
◆ 抗菌点眼液 モキシフロキサシン点眼液
ベガモックス点眼液0.5%は第四世代のキノロン薬、塩酸モキシフロキサシンを主成分とした抗菌点眼液である。本点眼液の薬理学的試験及び臨床試験結果より、本点眼液が各種眼感染症の起炎菌に強い抗菌力を有し、かつ眼内移行性に優れているため、外眼部細菌性感染症の治療薬、および周術期の無菌化療法薬として有用と考えられることを示すのみならず、耐性菌の増加を抑制する可能性についても考察した.
(渡邉雅一 モキシフロキサシン点眼液(ベガモックスTM点眼液0.5%)の薬理学的特性および臨床効果 p.375)
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