●GPCR研究の新しい流れ●
◆序文
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の研究はここ数年で大きく様変わりしている。初期の潮流に敢えて飛び込み、遂行した7人の研究者が“研究に取り組んだ契機・挫折と喜び・予算獲得の苦労、、、”その具体的な成功体験を語る。
(斎藤祐見子「GPCR研究の新しい流れ」序文 p.3)
◆GPCRのダイマー形成
GPCRのダイマー形成は薬理学の旬のトピックである。GPCR型のアデノシン受容体やP2受容体でもダイマー形成が薬理学的機能を変化させることが報告されているが、ここではアデノシン受容体の精製に取り組んだある研究者が偶然にGPCRダイマー研究にのめり込んでしまう話を述べる.
(中田裕康 GPCRのヘテロダイマー形成 p.4)
◆GPCRと酸化ストレス
酸化ストレス(活性酸素)は、細胞障害のみならずシグナリング分子としても働く。三量体Gタンパク質の活性酸素による活性化やGPCR刺激により産生された活性酸素の細胞応答への役割などが明らかになってきた。GPCRと酸化ストレスについて、我々の研究をバックグランドとともに紹介したい.
(黒瀬 等 GPCRと酸化ストレス p.9)
◆グレリンの発見
グレリンの発見にまつわる個人的な記録を書きます。私の苦労話が、若い世代の研究者に、こんなに失敗しても大丈夫と、勇気を与えられればと思います.
(児島将康 グレリンの発見についての裏話 p.14)
◆オレキシンの発見
オレキシンは、逆薬理学によって同定されたペプチドで、摂食行動、覚醒、報酬系における役割が注目されている。オレキシンの発見は、GPCRのリガンド探索の草分けとなった。本稿ではオレキシンの同定にまつわる話を中心に述べる.(桜井 武 オレキシンの発見
p.19)
◆ニューロペプチドWおよびBの発見
GPR7およびGPR8はリガンド未知のオーファン受容体であった。NPWおよびNPBはそれらの受容体の内在性リガンドとして、生理活性を指標とした組織抽出物からの単離あるいはin
silicoでのデータベースサーチという全く異なるアプローチによって発見された。これらのペプチドは中枢性に摂食やエネルギー代謝を調節するなど興味深い生理作用を示すことが明らかになっている.
(森 正明 ニューロペプチドWおよびニューロペプチドBの発見 p.23)
◆
LTB4受容体の同定
強力な好中球活性化脂質として知られるロイコトリエンB4には2つの受容体が存在する。高親和性受容体BLT1は、炎症反応のみならず免疫反応においても重要な役割を果たすことがわかり、BLT1受容体拮抗薬は臨床応用を目指して薬剤の再評価が進んでいる。低親和性受容体BLT2は受容体遺伝子が同定されたものの生体内の役割には不明な点が多く、今後の研究の発展が期待される.
(横溝岳彦 LTB4受容体の同定とその後の進展 p.29)
◆MCH受容体の同定
メラニン凝集ホルモン(MCH)は摂食中枢の下流に位置する分子として大きな注目を集めた。1999年にオーファンGPCRの利用によりMCHの受容体が同定され、様々な遺伝子改変動物作製および選択的アンタゴニスト開発が進展する。この結果、MCH系は摂食/エネルギー代謝の他に、「うつ不安」にも関与することが報告された。更なる有用なアンタゴニストの開発は感情障害および中枢性抗肥満薬の創薬に大きく貢献することが期待される.
(斎藤祐見子 MCH受容体の同定と最近の知見 p.34)
実験技術
◆疼痛試験法
神経因性疼痛はモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬も効きにくい難治性の疼痛で、現在のところ良い鎮痛薬が見いだされていない。そこで、神経因性疼痛の病態機序の解明と、それに伴う新しい機序を有する鎮痛薬の開発が期待されている。そのためには、神経因性疼痛モデルの作成と、その評価を行う疼痛試験は不可欠である。本稿では著者らの経験に基づいた神経因性疼痛と炎症性疼痛の評価法について解説する.
(本多健治 疼痛試験法の実際 p.39)
治療薬シリーズ(16)抗真菌薬
◆抗真菌薬の基礎
深在性真菌症は、ヒトの組織内に侵入して感染を引き起こし、日和見感染症として重篤化する。治療薬として、ポリエン系、アゾール系、フロロピリミジン系ならびにキャンディン系の4系統があり、新規化合物や既存品の製剤改良の開発が成功している。しなしながら、治療の満足度は低く、新規機序の化合物の開発が望まれている。本稿では、抗真菌薬の創薬標的、開発中の化合物ならびに感染動物モデルについて基礎的な観点から概説する.
(松本哲 抗真菌薬の基礎 p.45)
◆抗真菌薬の適正使用
わが国の日常診療で、比較的経験することの多い深在性真菌症について解説し、基本的な抗真菌療法の考え方と、真菌症毎の病態、病型に応じた抗真菌薬の適正使用について概説する.
(吉田耕一郎 深在性真菌症と抗真菌薬の適正使用 p.52)
創薬シリーズ(3) その1 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
◆遺伝毒性試験
遺伝子に悪影響を与える遺伝毒性物質は,発癌,催奇形性のみならず,種々の疾病を引き起こす引き金となる。医薬品候補化合物は,DNAに作用する制癌剤を除き遺伝毒性がないことを基本としている。医薬品を創るために必要な遺伝毒性試験の原理,内容,意義や解釈について解説する.
(羽倉昌志 遺伝毒性試験 p.57)
◆生殖発生毒性試験
生殖発生毒性試験は,①受胎能および着床までの初期胚発生に関する試験(I試験)、②出生前および出生後の発生ならびに母体機能に関する試験(II試験)、③胚・胎児発生に関する試験(III試験)の3試験が用いられている。これらの試験の実施方法と実施時期について紹介する.
(三分一所厚司 生殖発生毒性試験 p.62)
新薬紹介総説
◆イトリゾール内用液
イトラコナゾール(ITCZ)は広範囲かつ強力な抗真菌活性を示すトリアゾール系抗真菌薬であり,既にカプセル剤が表在性真菌症,深在性真菌症に使用されている。しかし,脂溶性が高いITCZは水への溶解性が不良なため,吸収に個体差が認められる。この問題点を改善するため,HP-β-CDでITCZを可溶化して吸収性を改善/安定化させた新規製剤,ITCZ内用液(イトリゾールR内用液1%)が開発された。ここでは本剤の薬理学的および薬物動態学的特徴ならびに臨床試験成績を紹介する.
(大谷尚也 イトリゾール内用液 (イトリゾールR内用液1%)の薬理学的および薬物動態学的特徴ならびに臨床試験成績 p.69)
|