総 説
◆キレる脳・うつ脳に動物モデルがどこまで近づけるか?
「ヒトのキレる脳・うつ脳(セロトニン欠乏脳)症状にラットの動物モデルがどこまで近づけるか?」という疑問に対して,嗅球を摘出した後,暗所で個別に飼育したラットを用いて検討した.その結果,嗅球摘出後14日で前脳皮質
ノルエピネフリン(NE)および セロトニン含量減少とそれらの細胞体の機能低下またはNE細胞体の機能亢進が示された.このとき,ラットではヒトと同様に睡眠覚醒周期の乱れ(寝起きの悪さ),自閉症様の症状(ケージ内での逃避および攻撃性姿勢),痛覚過敏反応(尾を挟んだとき過敏反応),パニック様症状(ケージ外に出たときまたは情動過多判定後の無軌道行動)および動物虐待様症状(マウスへの攻撃性)を示し,ヒトの症状の発現にラットでも類似性が示された.
(山口和政 ヒトのキレる脳・うつ脳(セロトニン欠乏脳)症状にラットの動物モデルがどこまで近づけるか? p.175)
総 説
◆グリア細胞標的創薬
グリア細胞には多様な神経伝達物質受容体が存在し、その活性化を介してATP、グルタミン酸、D-セリンなどの伝達物質(グリオトランスミッター)を遊離されることが明らかにされてきた。この事実は脳機能の発現やその異常にグリア細胞が関与していることを示唆するものである。本稿では多様なグリア細胞のうち、アストロサイトに焦点を合わせた研究の成果を中心として医薬品開発への手がかりとしての重要性を論じた.
(工藤佳久 グリア細胞を標的とする医薬品の創製 p.185)
実験技術
◆概日リズム解析法
1997年に哺乳類の時計遺伝子が相次いで同定されて以来, 哺乳類における概日時計本体の分子機構は加速度的に解明されてきた. 一方で, 個体レベルで表出される概日リズムの調節機構は,
実験デザインの特殊性や困難性などにより十分な解析がなされていない. 本稿では動物個体を用いた概日リズムの評価法について, 著者らのデータを織り交ぜながら解説する.
(川口ちひろ 動物個体を用いた概日リズム解析法 p.193)
治療薬シリーズ(18)骨粗鬆症
◆骨粗鬆症モデル動物と骨粗鬆症治療薬
ビスホスホネート製剤に替わる次世代骨吸収抑制薬としては、抗RANKL抗体、カテプシンK阻害薬、Vitronectin阻害薬等の開発が進められている。一方、PTHよりも使いやすい骨形成促進薬を主な目標とした開発は、Ca受容体拮抗薬、抗Sclerostin抗体に代表されるWnt/LRPシグナル修飾薬、SARM、EP2、EP4アゴニスト等の開発が進められている.
(東 由明 骨粗鬆症モデル動物と骨粗鬆症治療薬の研究開発動向 p.201)
◆骨粗鬆症に対する薬物治療
骨粗鬆症治療の主目的は骨折予防であり、現在の臨床においてはビスホスホネート剤であるアレンドロネートおよびリセドロネートやエストロゲン受容体に作用するラロキシフェンといった、強いエビデンスを有する骨吸収抑制薬が第一選択薬となる。これらを基にしたさらに優れた誘導体や、骨形成促進薬を含め全く新たな機序を持つ薬剤が次々に開発・臨床応用されつつある.
(井上大輔 骨粗鬆症に対する薬物治療の現状と展望 p.206)
創薬シリーズ(3)その1:化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
◆依存性試験
近年の薬物乱用の増加によって,適切な薬物依存性評価の重要性がクローズアップされてきている.しかし,安全性評価における依存性試験についてはICHでもほとんど議論されておらず,日米欧の規制当局の依存性試験に対する対応や考え方は様々である.本稿では,各極の依存性試験に対する取り組みについて整理し,新薬を開発する上で重要な薬物依存性試験の一般的手法と問題点,ならびに依存性評価における留意点について述べる.
(宮脇出 依存性試験 p.211)
◆抗原性試験
抗原性試験は、薬物により誘発されるアレルギー反応を予測することを目的に実施する安全性試験である。各種アレルギー反応の簡単な解説を記載するとともに、我々が実施してきたいくつかの抗原性試験の方法を簡単に紹介する。臨床試験や市販後のヒトへの投与においては抗原性に関する細心の注意が払われる必要があり、予測性の高い試験系の確立が望まれている.
(佐久間庄三 抗原性試験 p.216)
新薬紹介総説
◆塩酸オロパタジン点眼液
アレルギー性結膜炎治療薬として2006年10月より国内で発売が開始されたパタノール?点眼液0.1%(塩酸オロパタジン)は、抗アレルギー作用と抗ヒスタミン作用を併せ持つ点眼薬である。本稿では、本剤の薬効薬理試験成績および臨床試験成績について概略を紹介する。
(渡邉雅一 塩酸オロパタジン点眼液(パタノール?点眼液0.1%)の薬理学的特性および臨床効果 p.221)
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