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日薬理誌第130巻第5号 2007年11月

目次 ハイライト top

アゴラ
349
薬学教育課程6年制について
市原和夫

特 集 ●神経系アクチン細胞骨格
351
序文  小濱一弘

352
神経細胞樹状突起スパインのアクチン細胞骨格  
花村健次、白尾智明

358
アルツハイマー病におけるアクチン細胞骨格異常  
東海林幹夫

362
神経細胞の葉状仮足と糸状仮足におけるアクチン繊維結合タンパク質のターンオーバー  
中川裕之、西原恵利

367
プロテオミクス的な手法を用いた脳のアクチン結合タンパク質の探索
寺崎朝子


総 説

373
低分子量Gタンパク質研究の進歩  
多田 稔、小林哲夫、紺谷圏二、堅田利明

380
呼吸器感染症の治療と感染制御 -現状と今後の展望-
和田裕雄、岡崎充宏、横山琢磨、倉井大輔、後藤 元

実験技術
386
かゆみの動物実験法
安東嗣修、倉石 泰

治療薬シリーズ(20)慢性動脈閉塞症
393
慢性動脈閉塞症治療薬の基礎
高橋健三

398
慢性動脈閉塞症の治療薬-現状と今後の治療薬に期待すること-
蜂谷 貴

創薬シリーズ(3)その1:その2 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験①②
403
GLPとは何か-その概要と適用範囲-
永見和之

408
医薬品GLP調査の国際的必要性
西村(鈴木)多美子

新薬紹介総説
413
超音波検査用造影剤ペルフルブタン(ソナゾイドR注射用)の基礎および臨床試験成績
松村 学、杉原 博

421
ベルケイドR(ボルテゾミブ)注射用3mgの薬理学的特徴および臨床試験成績
藤井秀二、壽 嘉孝、野村俊治、原田 寧

キーワード解説
430
性差医療
上野光一

433
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)
舩田正彦


最近の話題
436
H2Sは痛みのメディエーターか?
松波真帆、川畑篤史

リレーエッセイ vox nova
438
移籍について思うこと
北山友也

439
たくさんの出会いを糧に
濱邊和歌子

新教授紹介
437 小泉修一、山田清文

お知らせ
27A 役員・委員選挙実施日程
28-29A Calendar
29A 募集
30A 集会案内
402頁 JPS 105:2目次
420頁 次号予告
429頁 安全性情報No.240
30A次頁 役員一覧
ハイライト次頁 執筆の手引き

著者プロフィール
357, 361, 366, 372, 379, 392





 

ハイライト 目次 top

神経系アクチン細胞骨格
序文
神経細胞にはいくつかの細胞骨格系が知られているが、アクチン細胞骨格の分野では、基礎研究から臨床研究へ展望が広がっている。第80回日本薬理学会年会のシンポジウムの講演をもとに本号に特集した。(小濱一弘 「神経系アクチン細胞骨格」序文 p.351)

神経細胞樹状突起スパイン
様々な疾患、シナプス可塑性に関わるスパインの形態変化、動態が注目されており、アクチン細胞骨格による制御機構が明らかとなりつつある。本総説では、まず、スパイン内のアクチン細胞骨格の性質について、次に、アクチン細胞骨格によるスパイン形成・可塑的な変化の制御機構について概説した.(花村健次 p.352)

アルツハイマー病
アルツハイマー病の病態における最も重要な原因分子としてのA?オリゴマーの存在が次第に明らかになりつつある.本稿では,A?オリゴマーがどのように記憶障害を引き起こすのかの解明が進む中で,シナプス後膜に存在するアクチン結合タンパクドレブリンがきわめて重要な役割を果たしていることを紹介した.(東海林幹夫 p.358)

神経細胞の葉状仮足と糸状仮足
神経細胞からの神経突起の伸長は、その先端に形成された成長円錐によって駆動されている。成長円錐内部のアクチン細胞骨格の動態は、この駆動力の発生と密接に関連している。そこで本稿では、成長円錐内のアクチン細胞骨格の動態を制御する仕組みについて紹介した.(中川裕之 p.362)

プロテオミクス的な手法を用いた探索
ニワトリ脳をFアクチンカラムで解析し、脳に特異的に発現する新規アクチン結合タンパク質 lasp-2 を同定した例を用いて、アミノ酸シークエンスや質量分析といったプロテオミクス的な手法の留意点について解説した.(寺崎朝子 p.367)

総 説
低分子量Gタンパク質研究の進歩
低分子量Gタンパク質は、上流からのシグナルを下流に伝達する"分子スイッチ"として、様々な生理応答の制御に関与している。これまでにRasを初めとした様々な低分子量Gタンパク質が同定され、それらに関する機能解析が進められてきた。一方、近年新しいタイプの低分子量Gタンパク質がいくつも存在することが明らかになり、それらが介在する新たな生理応答の制御が注目されつつある。本稿では最近の話題を含めて、低分子量Gタンパク質研究の進展を紹介した.(多田稔 p.373)


総 説
呼吸器感染症の治療と感染制御
今日の感染症学は、原因微生物と感染巣の同定と抗菌薬による治療に止まらない。耐性菌出現に対して、新しい抗菌薬の開発だけでなく、薬剤耐性菌の出現抑制対策(感染制御)に様々な工夫が試みられている。さらに、感染症由来の慢性炎症メカニズムや抗菌薬の免疫調整作用の研究と多次元的な広がりを見せている。本論文では、その概略を紹介した.(和田裕雄 p.380)

実験技術
かゆみの動物実験法
かゆみの研究は,歴史は痛みの研究に劣らない長さがあるが,その進歩は極めて遅かった.しかしながら,最近,動物を用いたかゆみの研究の報告が次第に増えてきた.かゆみの実験を動物で実施する場合,掻き動作をかゆみの指標とすることが多い.本稿では,かゆみのマウスモデルの代表例を紹介し,筆者らの経験を中心に,かゆみの行動実験の方法と実験を行う際に注意すべき事柄を解説した.(安東嗣修 p.386)

治療薬シリーズ(20)慢性動脈閉塞症
慢性動脈閉塞症治療薬の基礎
既存の治療薬は抗血小板作用や血管拡張作用などにより末梢循環を改善し,一定の治療効果をあげてきた.しかし,わが国において間歇性跛行に対する明確な有効性が検証されている薬物はなく,今後このハードルをクリアする薬剤の登場が強く望まれている.また,既存薬の改良型や新規作用メカニズムの薬剤の開発が進められているが,血管新生療法の研究から治療薬の新しいターゲットもクローズアップされてきている.(高橋健三 p.393)

現状と今後の治療薬に期待すること
ASOは四肢末梢の循環障害から虚血症状をきたす疾患である。臨床症状はFontaine分類で表わされI度無症状、II度間歇性跛行、III度安静時疼痛、IV度潰瘍・壊死である。症例の増加に伴い治療指針として2007年TASCⅡが発表された。本邦で使用可能な薬剤は重症虚血肢への効能は確認されているものの、その他の症状には効果が確認されていない。TASCⅡでは間歇性跛行への薬物療法が推奨されており、今後本邦においても間歇性跛行への効能・効果をもった薬剤の出現が期待される.(蜂谷貴 p.398)

創薬シリーズ(3)その2 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験①②
GLPの概要と適用範囲
医薬品開発において、副作用予測を的確に行うことは薬害を防ぐため、また開発医薬品のプロジェクトを効率よく推進するために重要であるが、その前提として、信頼性の高いデータを得る必要がある。実体のないデータは信頼性保証システムにおいてのみその信頼性が保証されるが、GLPはその目的で確立されてきた。従って、その基本概念を学ぶことは、各自のデータの信頼性保証を考える上で有用であると思われる.(永見和之 p.403)


医薬品GLP調査の国際的必要性
わが国のGLP試験施設は世界の一流であり,わが国は医薬品GLP試験データの輸出国の一つである.そこで,GLP試験の国際的な必要性について,GLP制定の経緯,わが国のGLP調査およびGLP調査を受ける際の注意点,医薬品医療機器総合機構の今後の取り組み等について解説した.皆様が実施したGLP試験データが,わが国発の新医薬品の開発に繋がり,病気で苦しむ世界の患者の方々を救い続けることに期待している.(西村(鈴木)多美子 p.408)

新薬紹介総説
超音波検査用造影剤ペルフルブタン(ソナゾイドR注射用)
ペルフルブタンマイクロバブル(ソナゾイドR注射用)は、国内初の第二世代の超音波診断用造影剤で、肝腫瘤性病変の造影を目的とする。本剤の造影超音波診断は、肝腫瘤性病変の存在・鑑別診断のみならず、治療効果判定や疾患ケアマネージメントにも貢献すると考えられる。ここでは本剤の薬理学的特性・体内動態および臨床試験成績を紹介した。(松村 学 p.413)

抗悪性腫瘍剤ベルケイドR(ボルテゾミブ)
ボルテゾミブ(ベルケイドR)は,可逆的かつ特異的なプロテアソーム阻害薬であり,本作用機序を有する薬剤としては世界初の抗悪性腫瘍剤である。本邦では2006年10月に「再発又は難治性多発性骨髄腫」の適応症で承認された。本稿では,プロテアソーム阻害作用に基づく本剤の作用機序を考察し,本邦および海外の臨床試験結果を紹介した.(藤井秀二 p.421)



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