総 説
◆薬理統計解析:用量依存性データへの非線形モデル活用
薬物の用量依存性データに生物学的に意味のある解釈を与えるためには,非線形回帰モデルを用いた解析が有効である.我々は,動物の内臓痛試験で得られたシグモイド型データに4
パラメータのロジスティック曲線をあてはめた.統計解析ソフトJMP により妥当な推定値が得られ,併せてExcel ソルバーによる追解析を行うことにより非線形回帰分析への理解を深めることが出来る.
(嵜山陽二郎 薬理試験における統計解析のQ&A 用量依存性データへの非線形モデルの活用 p.199)
実験技術
◆血管障害合併症の薬効評価試験法
病態モデル動物は、病態解明あるいは治療薬評価系として汎用されているが、その発現している特徴を生かすことにより、さらに有用な疾患モデル系を作出することが可能である。本稿では、脳卒中易発症系高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いて、その脳血管に対する脆弱性という特徴を生かした脳卒中後遺症および糖尿病網膜症に対する治療薬評価系について紹介する.
(渚康貴 脳卒中易発症系高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いた血管障害合併症の薬効評価試験系
p.207)
◆高架式プラットホームによる行動解析法
ストレスに対する抵抗能力(ストレス抵抗性)の低下は、精神疾患の発症に関わる危険因子の1つである。著者らは高所ストレス負荷中に認められる動物のすくみ行動に着目し、行動解析の指標とすることで動物のストレス制御因子を評価できることを明らかにした。本稿では、この行動解析法を高架式プラットホーム試験と呼び、本試験法でのストレス抵抗性評価法としての有用性について、著者らの最近の知見を踏まえて紹介する.
(宮田茂雄 高架式プラットホーム試験法:ストレス抵抗性の評価に適した簡便な行動解析法 p.213)
治療薬シリーズ(30) 標的分子薬―3
◆FLT3チロシンキナーゼ阻害薬
Bcr-Abl/KITチロシンキナーゼ阻害薬imatinibの臨床的な成功に刺激され、骨髄性白血病(AML)領域での第二のimatinibを求めて、AMLで最も高頻度に活性化変異が認められるFms-Like
Tyrosine Kinase 3(FLT3)阻害薬開発競争が激化しており、既に第一世代FLT3阻害薬でのProof-of-concept(POC)が達成されている.
(秋永士朗 FLT3チロシンキナーゼ阻害薬開発の現状と将来展望 p.217)
創薬シリーズ(3) その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験⑦
◆心循環毒性
心臓の生理学についての概説,QT延長の潜在的なリスクを評価する安全性薬理試験(hERG,テレメトリー試験法)および一般毒性試験の中で実施される心毒性検査法(心電図,病理学的検査)の概要,試験に用いる動物の特性について整理し,承認申請する医薬品の非臨床試験の中で観察される循環器毒性のうち,心毒性を中心に解説する.(高岡雅哉 心循環毒性 p.221)
新薬紹介総説
◆アルドステロン拮抗薬エプレレノン (セララR錠)
セララR(エプレレノン)錠は,選択的アルドステロンブロッカーであり,鉱質コルチコイド受容体への選択性を向上させることにより,有効性を保ちつつ他のステロイド受容体を介する副作用を軽減することを目標に開発された高血圧症治療薬である。本剤の非臨床試験で認められた降圧作用,副作用の軽減,組織保護作用は,臨床試験において確認された.
(野村俊治 セララR(エプレレノン)錠25 mg・50 mg・100 mgの薬理学的特徴および臨床試験成績 p.227)
◆吸入ステロイド喘息治療薬シクレソニド (オルベスコRインヘラー)
「オルベスコR」(シクレソニド)は1日1回用法が承認された新規プロドラッグ型吸入ステロイドであり、肺組織でエステラーゼによって活性化され従来薬と同等の薬効を示す。また微細粒子であるため肺到達率が高く、末梢気道炎症抑制も期待される。一方、口腔内沈着率は低く、かつ低活性のため局所副作用が少なく、血中ではタンパクの非特異的結合による不活化のため全身性副作用の低減も期待される。オルベスコRの非臨床成績および臨床成績について概説した.
(野中崇司 吸入ステロイド喘息治療薬シクレソニド(ciclesonide:オルベスコRインヘラー)の薬理学的特徴と臨床効果 p.237)
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