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日薬理誌第132巻第5号 2008年11月

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アゴラ
薬理学と高校の理科教育
倉石 泰----- 257

特集 漢方薬理学:基礎医学エビデンスから臨床効果まで
序文:
佐藤広康----- 259

漢方医学の初歩的概論
佐藤広康----- 260

漢方製剤の3Dフィンガープリント評価について
榊原 巌----- 265

漢方方剤の実践的応用:併用療法に役立つ薬物動態学的相互作用情報の重要性
高橋京子、侯 暁瓏、高橋幸一----- 270

漢方薬の免疫薬理作用 -慢性疾患の改善作用の主要機序として-
川喜多 卓也----- 276

漢方薬の循環器系への作用:基礎薬理と臨床応用
西田 清一郎、佐藤広康----- 280

アトピー性皮膚炎に対する補中益気湯の臨床的評価:二重盲検解析
小林裕美----- 285


治療薬シリーズ(31)寄生虫病・熱帯病治療薬
寄生虫病・熱帯病治療薬開発の現状
草野正弘----- 288

わが国における寄生虫病・熱帯病薬物治療の実際
丸山治彦----- 292

創薬シリーズ(3)その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
内分泌毒性
猪又 晃----- 297


新薬紹介総説
カルシウム受容体作動薬(calcimimetics)の薬理・臨床試験成績;維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療薬(シナカルセト塩酸塩、レグパラR錠)
永野伸郎、川田剛央、和田倫斉----- 301


キーワード解説
Neuropeptide Y (NPY) 受容体
樋口宗史----- 310

心筋機能シミュレーションとその実用化
松田裕之、野間昭典----- 313

最近の話題
抗体医薬品の毒性評価方法
原田勝彦----- 316

フィラグリン遺伝子変異とアトピー性皮膚炎
安東嗣修----- 318

リレーエッセイ
アメリカ研究留学を通して
廣瀬 惠----- 319

英会話についての分析
荒井純子----- 320

 

お知らせ
前綴込 公告 臨時総会開催の件
37A  募集, 集会案内
38A   Calendar
39A   JPS108:2目次
40A   役員一覧
275頁  次号予告
308頁  安全性情報No.250
322頁  執筆の手引き

著者プロフィール
264,269,275,279,284,287

 

 

 

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特集 漢方薬理学のすすめ
「和漢薬」は医薬学部教育のコア・カリキュラムにも取り入れられ、その重要性が増大している。未だ不明のところが多いのは事実だが、西洋薬と同じように多くの基礎薬理学的エビデンスを有しており、それに基づいた臨床効果を表わす。天然素材からの複合多成分薬であるので、組み合わせによって異なる薬理作用を表わすことを特徴とする。
(佐藤広康 「漢方薬理学:基礎医学エビデンスから臨床効果まで」序文 p.259)

初歩的概論
漢方医学は永年の臨床経験に基いて処方されるが、昨今薬理作用メカニズムも詳細に解明されてきている。天然素材からの複合多成分薬であるため作用は複雑である。東洋漢方的概念と西洋医学との相違や、基本的理論(「気血水」「八綱弁証」「六病位」「五臓」)など漢方医学的特徴である「証」を簡略に著わした。これまで解明されてきた基礎・臨床薬理学エビデンスから、卒後医師や学生に正しい知識と理解を推進したい.
(佐藤広康 漢方医学の初歩的概論 p.260)

品質評価法
漢方製剤が普及するに従い,新たな品質評価が望まれる中,漢方製剤の3Dフィンガープリント評価法を開発した。本評価法は原料生薬および漢方製剤の網羅的な品質評価に適している。今後,統計学的手法を組み合わせたパターン認識による同等性評価を目指している.
(榊原巌 漢方製剤の3Dフィンガープリント評価について p.265)

併用療法
東西医薬品の併用投与は有効な治療手段となっている。最適な併用療法の実践には、薬物動態学的相互作用情報が不可欠である。素材生薬や混合比率が製造企業間で異なることを認識し、同じ規格毎の方剤で科学的エビデンスの蓄積と情報発信することが適正使用を容易にする。そこで、漢方方剤の特徴を反映した評価系構築の有用性と問題点について、実験例と共に検証した.
(高橋京子 漢方方剤の実践的応用:併用療法に役立つ薬物動態学的相互作用情報の重要性 p.270)

免疫系への薬理作用
補中益気湯や人参養栄湯で代表される漢方薬の補益剤は、貧血、食欲不振、疲労倦怠、慢性疾患による体力低下などを伴う患者に使用され、同種の西洋薬がない薬剤である。補益剤は免疫薬理作用を有していて、種々の病態改善作用の主要なメカニズムと考えられている。補中益気湯や人参養栄湯を例に、造血促進作用、感染防御作用、アレルギーや自己免疫疾患における調節作用など、免疫のアンバランス病態の修正効果について述べる.
(川喜多卓也 漢方薬の免疫薬理作用-慢性疾患の改善作用の主要機序として- p.276)

循環器系への薬理作用
循環器領域における漢方薬の応用は、今後の研究が必要とされる分野であるが、漢方薬が高血圧や循環器慢性心不全のような、一般治療薬による治療が中心であった疾患にも応用できる可能性が明らかになってきた。そのひとつとして、慢性心不全を木防已湯が改善する可能性が報告されている。本稿では木防已湯の薬理作用の基礎医学的検討について述べる.
(西田清一郎 漢方薬の循環器系への作用:基礎薬理と臨床応用  p.280)

臨床的評価
アトピー性皮膚炎は症例毎に異なる悪化因子が関与するため、治療に個別のアプローチが必要である。長年の悪化例に対して、私たちは「食」と漢方方剤内服を併用してきた。用いる方剤は多岐にわたるが、気虚を伴う例に用いる補中益気湯に焦点をあて、症例集積研究や二重盲検比較試験を行った。
(小林裕美 アトピー性皮膚炎に対する補中益気湯の臨床的評価:二重盲検解析  p.285)


治療薬シリーズ(31)寄生虫病・熱帯病治療薬

寄生虫病・熱帯病治療薬の開発
寄生虫病・熱帯病の治療薬はその多くが開発途上国で使用されているため、製薬企業にとっては販売価格を低く設定せざるを得ず、採算性に乏しく開発がためらわれるが、多くの国際的な製薬企業では抗マラリア薬を中心に積極的に開発を行っている。一方国内では大学、研究所を中心に抗マラリア薬・ワクチンの研究が進んでいるが、臨床試験の実施がネックとなっている.
(草野正弘 寄生虫病・熱帯病治療薬開発の現状 p.288)

寄生虫病・熱帯病薬物治療の実際
今の日本で寄生虫病・熱帯病は頻繁にみる病気ではない。しかしながら、もしも遭遇したらどういう薬をどのように使えばいいのか。そもそもその薬は国内で入手できるのか。熱帯病治療薬研究班が、寄生虫病・熱帯病の治療薬にまつわる疑問に答える.
(丸山治彦 わが国における寄生虫病・熱帯病薬物治療の実際 p.292)


創薬シリーズ(3) その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験⑧
内分泌毒性
医薬品候補化合物の非臨床試験における内分泌毒性の特徴,内分泌毒性評価の進め方,in vitro内分泌毒性評価系の有用性,および化合物による病変が比較的多くみられる内分泌器官(副腎,甲状腺,下垂体,膵ランゲルハンス島,上皮小体)における代表的な病変とともに簡潔に述べた.
(猪又 晃 内分泌毒性 p.297)

新薬紹介総説
二次性副甲状腺機能亢進症治療薬 シナカルセト塩酸塩(レグパラR錠)
細胞外カルシウム(Ca)濃度の感知機構であるCa受容体にpositive allosteric modulatorとして作用する物質をcalcimimeticsと称する。維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者において、calcimimeticsであるシナカルセト塩酸塩(レグパラR錠)は、血中の副甲状腺ホルモン、Ca、リン濃度を低下させるのみならず、骨病変、血管石灰化、生活の質などに対する改善効果も期待されている.
(永野伸郎 カルシウム受容体作動薬(calcimimetics)の薬理・臨床試験成績;維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療薬(シナカルセト塩酸塩、レグパラR錠)  p.301)


 

 

 

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