特集 薬物性QT延長症候群回避の戦略
◆E14およびS7BがICHでステップ4に調印されてから2年以上が経過した。その間に実施された非臨床および臨床試験から蓄積された知見および問題点をそれぞれの試験の実施者が自らの経験に基づいて解説する。
(杉山篤 医薬品開発における薬物性QT延長症候群回避のための基本戦略 p.3)
◆代表的QT延長薬の非臨床試験成績
最近の非臨床in vivo評価モデルは特定の患者にしか発生しない薬物性QT延長症候群のリスクを高い信頼性と再現性を持って評価できる。本総説ではこのような評価手法を新薬開発段階に導入する際に必要となる基本知識および各評価モデルの特長と限界を紹介する。
(杉山篤 代表的なQT延長薬の非臨床試験における成績 p.4)
◆QT延長作用が明らかでない薬物の評価
新薬開発において、致死的不整脈であるtorsades de pointes のリスク検討のため、ICH-E14ガイドライン「非抗不整脈薬におけるQT/QTc間隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床評価」に基づき種々の検討が行われている。ガイドラインに基づいたthorough
QT/QTc試験等をデザインする場合には多くの留意点が存在する。また、ガイドラインをなぞるのみの計画では不十分であり、薬剤の特性を考慮した計画立案が必要である.
(熊谷雄治 QT延長作用が明らかでない薬物をどのように評価するか:臨床試験における基本的戦略 p.8)
◆QT延長をいかに判定すべきか
ICH E14ガイドラインのThorough QT/QTc 試験の統計解析方法と結果の解釈についてMoxifoxacinの試験例を用いて紹介した.また,QTc間隔の変動とThorough
QT/QTc 試験のデザインに関し統計学的な考察を行った.QTc間隔のベースライン値としてよく用いられているTime-matched baselineとPre-dose
baselineを実例により比較検討した.
(渡橋靖 QT延長をいかに判定すべきか:ICH E14に準拠した臨床試験デザインと統計解析法 p.14)
◆薬物性QT延長症候群の患者背景
心臓薬のみならず非心臓薬でも起こりうる薬物性QT延長症候群は、重症不整脈を併発して突然死を来すリスクがあることから、近年広く注意が喚起されている。また、新規薬剤開発に際してもQT延長リスクの厳密な評価が求められている。薬物によるQT延長にはさまざまな患者背景が複雑に影響するため、臨床試験の際には客観性の高い心電図記録・計測・評価システムを導入する必要がある。
(加藤貴雄 薬物性QT延長症候群の患者背景:医薬品開発および臨床試験における留意点 p.19)
実験技術
◆脊髄穿刺モデル-心血管反応と薬効評価
脊髄穿刺ラットは、眼窩よりロッドを挿入することにより仙髄までの脊髄を破壊したモデルである。このモデルでは各種血管作動性物質による心血管反応を循環器反射がない状態でin
vivo系にて観察することができるだけでなく、穿刺ロッドを用いて電気刺激による神経性の心血管反応も観察できるため、末梢における心血管反応の評価に有用なモデルである。本稿では、このモデルを用いて行った研究の一端を紹介する.
(座間味義人 脊髄穿刺モデルを用いた心血管反応と薬効評価 p.22)
治療薬シリーズ(33)標的分子薬-4-①
◆細胞周期標的抗がん薬
正常な体細胞ががん化するには、細胞のいくつかの制御機構に異常が引き起こされることが必要と考えられている。特に、細胞周期に変化を起こす細胞分裂制御機構の異常は細胞のがん化における大切なホールマークとして知られていることから、現在細胞分裂制御に関係したタンパク質の阻害薬が広く研究されている。今回は、新規の細胞分裂抗がん薬ターゲットに着目してその開発状況を報告する.
(平井洋 細胞周期を標的とした抗がん薬開発 p.27)
新薬紹介総説
◆子宮内膜症治療薬ジエノゲスト(ディナゲスト錠)
子宮内膜症治療薬であるジエノゲストは,プロゲステロン受容体に対する選択的なアゴニスト活性を示す第4世代のプロゲスチンである.本剤は卵巣機能抑制作用および直接的な子宮内膜症細胞の増殖抑制作用により子宮内膜症に対して有効性を示すと考えられる.ジエノゲストは,血中エストラジオール濃度を過度に低下させないため,更年期様症状の発現や骨密度への影響が少なく,長期に使用可能な薬剤として期待される.
(笹川慎一 子宮内膜症治療薬ジエノゲスト(販売名:ディナゲスト錠1 mg)の薬理学的特徴および臨床効果 p.32)
◆新規キノロン系抗菌薬シタフロキサシン
シタフロキサシン(グレースビットR錠)は、2008年6月に上市された新規キノロン系抗菌薬である。本剤は既存のキノロン系抗菌薬に耐性化した細菌標的酵素も強く阻害し、グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマおよびクラミジアなどの非定型菌に対してキノロン系抗菌薬中最も強い抗菌力を示す。本剤の薬理学的特性と臨床成績について紹介する.
(神田裕子 新規キノロン系抗菌薬シタフロキサシンの薬理学的特性と臨床効果 p.43)
|