総説 ◆神経系細胞におけるcAMPのERK1/2活性化のシグナル伝達
Extracellular signal-regulated kinase(ERK)1/2は、細胞外の様々な刺激に応答し、細胞増殖、分化、生存促進作用などを媒介する。本稿では神経系細胞のPC12細胞および小脳顆粒神経細胞における、cAMPによるERK1/2の活性制御機構を低分子量Gタンパク質のRasとRap1の役割を中心に解説する.
(小原祐太郎 神経系細胞におけるcAMPのERK1/2活性化のシグナル伝達についてp.63)
治療薬シリーズ(33)標的分子薬-4-②
◆EGFR・VEGF分子標的薬剤
最近のがん薬物療法には盛んに「分子標的薬剤」が導入されている。中でも、上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーや血管内皮成長因子 (VEGF)を標的とする薬剤は先陣をきって開発され、一部は標準的治療法に組み込まれている。現在までの臨床試験のエビデンスを概説し、患者選択に有効なバイオマーカーの重要性について述べる.
(田村研治 EGFR、VEGFを標的とした分子標的薬剤 -臨床試験のエビデンスとバイオマーカー- p.69)
治療薬シリーズ(34)男性型脱毛症治療薬①②
◆男性型脱毛症研究動向と評価法
男性型脱毛症(AGA)は生死に関わる疾患ではないが、薄毛に悩むヒトは多く、その治療薬の開発に注目が集まっている。治療薬としては、毛周期の休止期にある毛髪を成長期へ移行させる発毛促進作用のあるもの、あるいはAGAの特徴である短縮した成長期を本来の長さに戻す作用のあるものが考えられる。開発候補化合物の評価法については、in
vitroおよびin vivoの系について詳しく解説する.(山田久陽 男性型脱毛症治療薬の研究動向p.73)
◆男性型脱毛症治療の現状と展望
男性型脱毛症(壮年性脱毛)の診断と病態を簡単に述べるとともに, 治療については内服治療薬であるフィナステリドと外用育毛剤であるミノキシジルを中心に概説する.また,
薬物治療の限界と将来的な展望についても触れる.
(坪井良治 男性型脱毛症治療の現状と今後の展望 p.78)
創薬シリーズ(3)その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
◆精巣毒性
精巣は生命維持には必須ではないが、子孫を残すための精子産生を含む男性機能維持を司る大切な器官である。本総説では、医薬品開発における毒性試験でしばしば発現する精巣毒性について、非専門家向けに平易な言葉で概説する.
(茶谷文雄 医薬品の精巣毒性 p.82)
◆呼吸器毒性
呼吸器毒性について、医薬品の開発に際して考慮すべき基礎的事項、すなわち、呼吸器の構造と機能、呼吸器毒性の検査法、薬剤等による呼吸器毒性について概説する。近年は経鼻投与など経気道的に投与する薬剤の実用化が進んでいることから、本稿では、特に鼻腔等の上部気道に重点をおいて解説する.(長野嘉介
呼吸器系の毒性 p.87)
新薬紹介総説
◆抗凝固薬 エノキサパリンナトリウム(クレキサンR皮下注キット2000 IU)
今般、本邦で下肢整形外科手術施行患者におけるVTE発症抑制を目的としてエノキサパリンナトリウムの臨床開発が行われ、日本人での本剤の有効性と安全性が確認された。エノキサパリンナトリウムはクレキサンR皮下注キット2000
IU(本剤1 mgは約100国際単位(抗Ⅹa活性)に相当)として2008年4月に発売された。本稿では、エノキサパリンナトリウムの薬理的特徴並びに国内臨床試験成績について概要を述べる.(井本孝一 抗凝固薬エノキサパリンナトリウム(クレキサンR皮下注キット2000
IU)の薬理学的特性および臨床試験成績 p.91)
◆肺高血圧症治療薬 経口ベラプロストナトリウム徐放性製剤(ケアロードRLA錠60μg、ベラサスRLA錠60μg)
ケアロードRLA錠60μg、ベラサスRLA錠60μgは、プロスタサイクリン誘導体のベラプロストナトリウムを有効成分とする経口徐放性製剤であり、肺動脈性肺高血圧症患者において、1日2回の投与で有効性および安全性が確認された。本剤は、世界でも類のない経口プロスタサイクリン徐放性製剤であり、利便性が高いことから、現在なお難治性疾患である本症の治療に、新たな選択肢を提供するものとして将来が期待される.(車谷元 経口ベラプロストナトリウム徐放性製剤(ケアロードRLA錠60μg、ベラサスRLA錠60μgの特徴および臨床試験成績 p.101)
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