総説
◆Gタンパク質と心不全
圧負荷などのストレスに持続的に曝された心臓は肥大して機能を代償しようとする.しかし,この代償機構はストレスが除かれないと破綻し,心臓は心不全へと移行する.心肥大・心不全に関わっている分子として神経体液性因子が知られている.神経体液性因子の多くはGタンパク質共役型受容体を介して作用を発揮する.ここでは,受容体と共役するGタンパク質が心肥大・心不全形成にどのような役割を果たすかについて紹介する.
(西田基宏 三量体Gタンパク質シグナリングを介した心不全発症の分子機構 p.179)
実験技術
◆カニクイザル呼吸機能測定法
Whole Body Plethysmograph法による呼吸機能の検討では従来はラット、マウスを用いることが一般的であったが、我々はカニクイザル用の装置を考案した。この装置を用いれば動物を傷つけることなく長期間、繰り返し呼吸機能の測定が可能で、血圧や心電図を測定できる送信機を事前に体内に埋め込んだ動物を用いれば、呼吸機能測定と同時にこれらパラメーターの測定も可能である.
(直 弘 Whole Body Plethysmographによるカニクイザルの呼吸機能測定 p.185)
創薬シリーズ(5) トランスレーショナルリサーチ①
◆トランスレーショナルリサーチのあゆみと展望
わが国における医学領域の国際競争力を維持・進展させるためには,アカデミアの担う役割は極めて大きい。アカデミアにおいて基礎研究で得られた成果を臨床応用し実用化させるため,トランスレーショナルリサーチ(TR)センターの設置・整備が進められている。今後,各アカデミアにおいてTRセンターが完成・強化され,ネットワーク化することでTRが加速し,画期的な治療法を早期に医療現場へ還元することが期待される.
(大野隆之 本邦におけるトランスレーショナルリサーチのあゆみと今後の展望 p.190)
新薬紹介総説
◆禁煙補助薬 バレニクリン酒石酸塩
バレニクリンはニコチン依存に寄与するα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に選択性の高い部分作動薬である。作動薬として禁煙に伴う離脱症状やたばこへの切望感を軽減すると同時に,拮抗薬としてニコチンを遮断して喫煙の満足感を得にくくすることで効果的に喫煙習慣を抑制すると期待され,ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙補助薬として開発された。本稿ではバレニクリンの薬理学的特徴および臨床試験成績を紹介する.
(檜杖昌則 バレニクリン酒石酸塩(チャンピックスR 錠0.5 mg・1 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績 p.194)
◆経口そう痒症改善薬 ナルフラフィン塩酸塩
レミッチR カプセル2.5 μgは、選択的なオピオイドκ受容体作動薬であるナルフラフィン塩酸塩を有効成分とし、血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)を効能または効果とする世界初の経口そう痒症改善薬である。本稿ではナルフラフィン塩酸塩の薬理学的特徴、薬物動態学的特徴、薬物依存性試験成績および臨床成績を紹介する。
(中尾薫 新規経口そう痒症改善薬ナルフラフィン塩酸塩(レミッチR カプセル2.5 μg)の特徴および臨床試験成績 p.205)
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