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日薬理誌第136巻第3号 2010年9月

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アゴラ
MinorityがMajorityに、 MajorityがMinorityになる日
矢部千尋 ---125

特集 精神疾患治療薬の研究戦略
序文
茶木茂之、矢野孝彦 ---127

1:グルタミン酸神経系賦活による統合失調症治療薬創製アプローチ
中藤和博、原田勝也、戸部貴彦、山路隆之、高倉昭治 ---128

2:統合失調症の認知機能障害に注目した非臨床からのアプローチ
渡邉裕美 ---133

3:ストレス関連因子を標的とする抗うつ薬創製のためのアプローチ
飯島通彦、島崎聡立、吉水孝緒、唐沢淳一、茶木茂之 ---137

4:うつ病と海馬神経新生    
増田孝裕、中川 伸、小山 司 ---141

総 説
マストパランの薬理活性:シグナル伝達への関与
中畑則道、須釜 淳 ---145

mRNA分解研究と創薬
尾上耕一、星野真一 ---150

実験技術
薬物動態シミュレーションモデルを用いた医学部薬理学実習
原 一恵、松岡正明 ---155

創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ⑥
薬剤によるQT間隔延長の非臨床予測と臨床評価
山本恵司 ---160

新薬紹介総説
プレガバリン(リリカR カプセル25 mg・75 mg・150 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
越智靖夫、原田拓真、菊地主税、荒川明雄 ---165

抗腫瘍薬ラパチニブトシル酸塩水和物(タイケルブR錠)の薬理作用と臨床効果
新井裕幸、八巻麻美、西村祐一郎 ---175


最近の話題
L-シトルリンの血管内皮機能障害の改善効果
森田匡彦、落合将之、森下幸治、林 登志雄 ---185

    
肺静脈心筋の電気活動   
行方衣由紀  ---186

リレーエッセイ
孤高の薬理学   
芳原成美  ---187

 

新教授紹介
新教授紹介
188頁 熊井俊夫、渡邊直樹

お知らせ
前綴込 第84回年会案内(第2報)
15A  WorldPharma2018誘致成功
    公告 代議員選挙結果
16A  学術評議員候補者紹介
17-20A 理事・監事のご紹介
21-22A Calendar、訃報、次号予告
23-24A JPS 113:4目次、安全性情報No.271
164頁 執筆の手引き
188頁 募集
表3  役員一覧

著者プロフィール
136, 140, 144

 


 

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特集:精神疾患治療薬の研究戦略
精神疾患の病因に関して近年の分子レベルでの研究の進展から、新しい概念に根ざした創薬アプローチが盛んに行われている。今回、統合失調症およびうつ病に焦点をあて、これらの疾患に対する治療薬の最近の研究開発戦略を概説する。(茶木茂之「精神疾患治療薬の研究戦略」序文 p.127)

グルタミン酸神経系賦活による統合失調症薬創製アプローチ
グルタミン酸神経系賦活薬は,最近の小規模臨床試験において既存の統合失調症治療薬が効果を示さない陰性症状に対して有効性が認められたことから,次世代の抗精神病薬として注目を集めている。本稿では,統合失調症治療薬としてのグルタミン酸神経系賦活薬の創製アプローチについて概説するとともに,今後の展望を述べる.
(中藤和博 p.128)

統合失調症認知機能障害に注目した非臨床アプローチ
統合失調症の治療のゴールは患者の社会復帰であり,統合失調症患者の社会的な機能は,陽性症状や陰性症状よりも認知機能障害と高い相関を示すことから,認知機能障害を改善する薬物の開発が注目されている.前臨床における新規化合物の認知機能障害改善作用の評価方法については,現在も議論が続けられているが,本稿では,PCP処置動物の認知機能をヒトでの臨床検査に対応する評価系を用いて検討した結果について紹介する.(渡邉裕美 p.133)

ストレス関連因子を標的とする抗うつ薬創製のためのアプローチ
ストレス関連因子の1つであるグルタミン酸神経系の機能異常がうつ病に関与していることが示唆されている。次世代の抗うつ薬創製のために、グルタミン酸神経系を調節する薬剤に注目が集まっている.本稿ではグルタミン酸(mGlu2/3)受容体拮抗薬のうつ病動物モデルにおける効果を概説し、その臨床的有用性を考察する。
(飯島通彦 p.137)

うつ病と海馬神経新生
うつ病治療薬は、急性投与により脳内モノアミン濃度を増加させるが、臨床における治療効果発現までには慢性投与が必要とされ、その治療発現メカニズムは明らかにされていない。近年、海馬歯状回では成熟期においても神経細胞が新生されることが明らかにされ、抗うつ薬の治療メカニズムの新しい仮説として海馬神経新生促進仮説が提唱されている。本稿では、うつ病と海馬神経新生の関わりについて概説する. (増田孝裕p.141)

総説
マストパランの薬理活性:シグナル伝達への関与
スズメバチ毒素のマストパランはヒスタミン遊離活性を指標に見出された14個のアミノ酸残基からなるペプチドである。マストパランは多くの薬理活性を有するが、その中の重要な作用に、活性化されたGタンパク質共役型受容体の如く振る舞い三量体Gタンパク質を活性化する作用が挙げられる。マストパランはシグナル伝達に強い影響を与え、薬理学的ツールとして貴重かつ魅力的なペプチドであることが明らかとなってきた。
(中畑則道 p.145)

総説
mRNA分解研究と創薬
ヒトの遺伝性疾患の約30%はナンセンス変異が原因であるといわれている。ナンセンス変異を有する異常なmRNAはNMDと呼ばれるmRNA分解機構により急速に分解され、異常な短鎖タンパク質が生じる危険性を排除することで細胞を守っている。本稿では、正常なmRNAの分解とNMDとの違いについて概説し、ナンセンス変異に起因する遺伝病に対する画期的な治療薬として近年注目を集めるAtalurenを紹介する.
(尾上耕一 p.150)

実験技術
薬物動態シミュレーションモデルを用いた医学部薬理学実習
薬理学教育のなかで薬物動態を理解させることは必須の要請事項である。しかし,医学部薬理学の教育時間は限定されているため,短時間で薬物動態を理解させるための効率的な教育手段が求められている。東京医科大学薬理学講座では,血中濃度シミュレーションモデルを用いた薬理学実習において,治療域の狭い薬剤にはTDMが必要であることを視覚的に学習させることで,薬物動態の理解に効果を挙げている.
(原 一恵 p.155)

創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ⑥
薬剤によるQT間隔延長の非臨床予測と臨床評価
薬剤誘発性QT延長作用の評価のために、ICHガイドラインでは非臨床安全性薬理試験におけるIKrアッセイおよびin vivo QTアッセイ、そして臨床でのThorough QT/QTc試験が推奨されている。そのような試験に加え、早期の臨床試験において12誘導ホルター心電図など精密な心電図検査とConcentration-QT解析を組み合わせることで、より効率的な研究開発が可能になることが期待される.(山本恵司 p.160)

新薬紹介総説
電位依存性カルシウムチャネルα2δサブユニット作用鎮痛薬プレガバリン
プレガバリンは電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットとの結合が作用機序と考えられる新しいタイプの鎮痛薬であり,欧米では帯状疱疹後神経痛を含む神経障害性疼痛の薬物治療において第1選択薬として位置づけられている.本邦でも帯状疱疹後神経痛を適応症として承認され,臨床で使用しやすい新たな治療の選択肢となることが期待される.本稿では,プレガバリンの薬理学的特徴および臨床試験成績について紹介する.
(越智靖夫 p.165)

新薬紹介総説
分子標的腫瘍薬ラパチニブトシル酸塩水和物
ラパチニブトシル酸塩水和物(タイケルブR錠)は,EGFRおよびHER2に対する阻害薬であり,経口投与可能な新規の分子標的抗腫瘍薬である.本剤はHER2過剰発現が確認された手術不能または再発乳癌を効能・効果として承認を取得しており,乳癌の治療における新たな選択肢として期待される.本稿ではラパチニブトシル酸塩水和物の薬理作用と臨床成績を紹介する.(新井裕幸 p.175)

 

 

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