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日薬理誌第136巻第4号 2010年10月

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アゴラ
プラセボ効果 (placebo effect)
斉藤亜紀良 ---189

特集 がん治療薬の研究開発戦略
序文
船橋泰博 ---191

1:ホルモン関連前立腺癌治療薬の研究開発 -17,20-リアーゼ阻害薬を中心に-
原 隆人 ---192

2:がん治療ターゲットとしてのサバイビンの可能性とサバイビン発現抑制薬YM155の非臨床研究 喜多 彩、中原崇人、竹内雅博、木野山 功、山中 堅太郎、峯松 剛、光岡圭介、伏木洋司、三好荘介、笹又理央、宮田桂司 ---198

3:受容体型チロシンキナーゼ阻害薬の現状と展望-VEGF受容体阻害薬を中心に-
船橋泰博 ---204

4:抗体医薬の現状と展望-トラスツズマブを例に-
大内 香 ---210

総 説
Gタンパク質共役受容体キナーゼ(GRK)
芳賀達也 ---215

発達期の神経回路形成に与える熱性けいれんの影響 -モデル動物の利用による細胞・分子レベルでの検証-  
市川淳也、松木則夫、小山隆太 ---219


実験技術

細胞内インスリン作用の評価法とGLUT4小胞輸送
今村武史 ---225


創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ⑦

抗凝固薬ワルファリンのトランスレーショナルPK/PD研究
高橋晴美 ---229


新薬紹介総説

ヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチド(ビクトーザ? 皮下注)の薬理学的特徴および臨床試験成績
杉井 寛、松村順子、井上明弘、堀籠博亮、松崎勝寛、清水あかね ---233


最近の話題
概日時計による神経新生の周期的制御機構
守屋孝洋 ---243


学会便り
第16回世界薬理学会(WorldPharma2010)
三澤美和 ---245

第122回関東部会市民公開講座「女性のための健康薬理学」を開催して
伊藤由彦 ---246

第117回近畿部会市民公開講座「ほんとうに怖い薬物乱用」を開催して
水口博之 ---247


研究室訪問
静岡県立大学薬学部 医療薬学大講座 薬物動態学分野・グローバルCOE
伊藤由彦 ---248

徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 分子情報薬理学分野
水口博之 ---249

 

新教授紹介
250頁 草間國子

お知らせ
25A  WorldPharma2018の京都への誘致
    招致委員会活動報告
26A 第4回理事会報告
27-28A 募集、集会案内
29A Calendar、訃報
30-31A JPS 114:1目次
32A  役員一覧
244頁 執筆の手引き
250頁 次号予告


著者プロフィール
214

部会報告/抄録
248頁/1P 第122回関東部会 山田静雄
249頁/14P第117回近畿部会 福井裕行

 

 


 

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特集:がん治療薬の研究開発戦略
がん治療における分子標的薬を用いた薬物療法の役割が拡大しており、これまでの治療体系へも影響を与えつつある。製薬各社で開発をすすめる薬剤の現状と展望を紹介し、ダイナミックに変化するがん領域の治療薬の開発について概観する.(船橋泰博 「がん治療薬の研究開発戦略」序文 p.191)

ホルモン関連前立腺癌治療薬の研究開発
現在、前立腺癌の薬物療法の中心はホルモン療法(去勢療法)である。しかし、ほとんどの場合、去勢抵抗性が出現するため、去勢抵抗性がんに対する治療法が強く望まれている。最近の研究から去勢抵抗性がんにおいてもアンドロゲン受容体シグナルが重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本稿では、去勢抵抗性獲得メカニズムの仮説およびそれに基づき研究開発されている新規治験薬17,20-リアーゼ阻害薬の知見を中心に紹介する.(原 隆人 p.192)

がん治療ターゲットとしてのサバイビンとその発現抑制薬
アポトーシス制御に重要な因子であるサバイビンは,発現抑制による細胞死誘導の他に,がん特異的発現,細胞の有糸分裂制御,そして既存抗がん薬の感受性を増強させるという点で注目を集め,がん治療のターゲットとして今日まで多くの研究がなされている.サバイビン発現抑制薬のYM155は,サバイビン発現抑制作用により,がん細胞に対し選択的に抗腫瘍効果を発揮するユニークな新規抗がん薬となることが期待される.(喜多 彩 p.198)

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬の現状と展望
血管内皮細胞増殖因子の阻害抗体であるベバシズマブの承認により、血管新生阻害薬によるがんの治療が開始されている。がん細胞により誘導された腫瘍血管の新生を阻害することで、腫瘍縮小効果よりも生存期間の長期延長効果を、また、多様性に富むがん細胞ではなく正常の血管内皮細胞を標的とすることで、薬剤に対するがんの耐性化が生じにくいこと等が期待されている血管新生阻害薬の開発の背景と現状について紹介する.(船橋泰博 p.204)

抗体医薬の現状と展望
本稿では、固形癌の治療においてパラダイムシフトをもたらした抗体医薬トラスツズマブについて概説するとともに、抗体医薬の課題と今後の展望について述べる.
(大内 香 p.210)

総 説
Gタンパク質共役受容体キナーゼ(GRK)
Gタンパク質共役受容体キナーゼ(G Protein-Coupled Receptor Kinase: GRK)は、GPCRの脱感受性に中心的役割を果たすセリン・トレオニンキナーゼである。最近、種々の細胞内タンパク質と相互作用することが明らかになり、GPCRのリン酸化以外の生理機能を持つ可能性も考えられる。GRKの働きを分かりやすくまとめた.(芳賀達也 p.215)

総 説
発達期の神経回路形成に与える熱性けいれんの影響
熱性けいれんは発熱中に起こり、乳幼児が経験する最も一般的なけいれん発作である。日本国内では8.8%の乳幼児が熱性けいれんを経験している。単純型の熱性けいれんが良性とされる一方、複雑型は将来的に側頭葉てんかんの発症へ関与する可能性が示唆されている。本稿では、熱性けいれんが発達時期の神経回路に与える影響に関して、モデル動物を利用して得られた知見の評価をもとに議論する.(市川淳也 p.219)

実験技術
細胞内インスリン作用の評価法と GLUT4 小胞輸送
メタボリック症候群や糖尿病では、インスリンによる血糖降下作用が障害されていることが多い。この状態を脂肪細胞で観察すると、インスリン反応性の糖輸送体であるGLUT4タンパク質の細胞膜発現量が低下していることが知られている。本稿では、インスリンによるGLUT4タンパク質の細胞内小胞輸送機構を評価するための種々の実験法を概説した.(今村武史 p.225)

創薬シリーズ(5) トランスレーショナルリサーチ⑦
抗凝固薬ワルファリンのトランスレーショナルPK/PD研究
抗凝固薬ワルファリン(WF)の有効量には大きな個人差が存在する。多くの試験により、WFの血中濃度と感受性はCYP2C9遺伝子変異とVKORC1遺伝子変異により上昇することが判明している。現在ではWF維持量の個人差の60%程度までが、年齢や体重などの患者背景因子とCYP2C9とVKORC1両遺伝子型により説明可能となっている。本稿では両遺伝子検査の臨床的有用性を中心に紹介したい。 (高橋晴美 p.229)

新薬紹介総説
新規2型糖尿病治療薬ヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチド
リラグルチド(ビクトーザR皮下注)は、2010年1月に承認されたヒトGLP-1アナログ製剤である。ビクトーザR皮下注は、注射部位からの吸収が緩徐で、血漿タンパク質結合率が高く、またDPP-4による代謝に対し安定であるため、1日1回の投与で血糖応答性のインスリン分泌を改善し、低血糖の発現リスクを増大させることなく血糖プロファイルを改善あるいは正常化することが期待されている。本稿では、その薬理学的特徴ならびに臨床試験成績の概要を紹介する.(杉井 寛 p.233)

 

 

 

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