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日薬理誌第136巻第6号 2010年11月

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アゴラ
わたしと薬理学との出会い
上野光一 --- 313


特集 高尿酸血症・痛風治療のブレイクスルー

序文
細山田 真 --- 315

1:腎臓尿酸輸送の分子機序:新規創薬標的としての尿酸トランスポーター
安西尚彦 --- 316

2:高尿酸血症とメタボリックシンドローム
市田公美 --- 321

3:高尿酸血症と心血管障害
久留一郎 --- 325

4:ガイドラインに基づく高尿酸血症・痛風の治療
谷口敦夫 --- 330


総 説
硫化水素(H2S) -機能と医療応用-
木村英雄 --- 335


創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ⑩⑪
PAI-1阻害薬のトランスレーショナルリサーチ
段 孝、宮田敏男 --- 340

NKT細胞免疫療法のトランスレーショナルリサーチ
本橋新一郎、中山俊憲 --- 344


新薬紹介総説

マラビロク(シーエルセントリR錠 150 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
檜杖昌則 --- 349


最近の話題
GPR120を介するインスリン抵抗性改善作用について
今村武史 --- 359
 

リレーエッセイ
背水の陣 -Burn my bridges behind me-  
木口倫一 --- 360

お知らせお知らせ
37A 西太平洋地域における医学情報への公平なアクセスに関するシンガポール宣言
38A 優秀論文賞選考案内、次号予告、訃報 
39A 集会案内、安全性情報No.273
40A Calendar
41A JPS 114:3 目次
表2 執筆の手引き
表3 役員一覧

著者プロフィール
334

136巻索引

 

 


 

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特集:高尿酸血症・痛風治療のブレイクスルー
高尿酸血症は、成人男性の4人に1人が罹患する頻度の高い生活習慣病であり、現在では
心血管障害の独立した危険因子であると考えられている.本特集では高尿酸血症の病態、
治療について最新の知見を紹介する.
(細山田 真 「高尿酸血症・痛風治療のブレイクスルー」序文 p.315)

腎臓尿酸輸送の分子機序と新規創薬標的としての尿酸トランスポーター
痛風患者の9割に腎臓での尿酸排泄低下を認めることから、痛風発症機序の理解そして治療法の確立のため腎尿酸排泄分子機序の解明は重要である。極性分子の尿酸の細胞膜透過にはトランスポーターが関与する。最近の全ゲノム関連解析で複数のトランスポーター遺伝子が新たな痛風発症候補因子として報告され注目を浴びているが、今後それら分子の尿酸輸送特性の詳細な解析により、新規治療法開発につながることが期待される.(安西尚彦 p.316) 

高尿酸血症とメタボリックシンドローム
高尿酸血症は、メタボリックシンドロームと高率に合併することが知られ、いくつかの機序が提唱されている。密接に関係する原因として、メタボリックシンドロームの基盤にある肥満が高尿酸血症の成因に関与していることや両方を生じやすい共通の原因が存在するためと考えられている。最近では、高尿酸血症そのものがメタボリックシンドロームの形成に関与しうるとの報告もされている。本総説では、これらの機序について解説する.(市田公美 p.321)

高尿酸血症と心血管障害
尿酸トランスポーターURAT1は腎での尿酸再吸収を担い血清尿酸値を規定する分子であるが、URAT1が腎のみならず、血管や脂肪細胞に発現し尿酸を細胞内に取り込み、炎症やアディポサイトカインの分泌異常を惹起して心血管障害やメタボリック症候群に関与する。一方で低すぎる血清尿酸値も相対的な酸化ストレスの増大が血管の攣縮をきたして、腎不全のみならず心血管障害に関与する。そこで高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインに沿った高尿酸血症合併高血圧の管理が重要である. (久留一郎 p.325)

ガイドラインに基づく高尿酸血症・痛風の治療
最近、日本において高尿酸血症・痛風が増加しており、日常臨床で重要な疾患となっている。高尿酸血症・痛風では生活習慣の是正が重要であることを理解し、さらに基本的な薬物治療に習熟する必要がある.(谷口敦夫 p.330)

総説
硫化水素(H2S):機能と医療応用
毒ガスとして悪名高い硫化水素(H2S)が、生体内で合成され、神経伝達修飾、平滑筋弛緩、インスリンの分泌制御など、シグナル分子として機能している。また、神経細胞や心筋細胞を酸化ストレスから保護する機能も見つかり、その作用は多岐にわたっている。基礎研究が進められる一方で、H2Sの医療応用への開発が進んでいる.(木村英雄 p.335)

創薬シリーズ(5) トランスレーショナルリサーチ⑩⑪
PAI-1阻害薬のトランスレーショナルリサーチ
脳梗塞、虚血性心疾患の治療および予防薬として、プラスミノーゲン・アクチベーター・インヒビター-1 (PAI-1)阻害経口薬の開発が待たれている。本稿では、SBDD技術によるリード化合物の発見から構造最適化を経て、臨床開発候補化合物に至る過程を紹介する。その経験を踏まえて、大学における創薬ならびにトランスレーショナルリサーチの意義、今後の展望についても述べる.(段 孝 p.340)

NKT細胞免疫療法のトランスレーショナルリサーチ
NKT細胞のもつ強力な抗腫瘍効果の臨床応用を目指し、内在性のNKT細胞活性化を目指すαGalCerパルス樹状細胞療法およびin vitroでNKT細胞を活性化し投与する活性化NKT細胞療法、さらには両者を組み合わせた複合免疫療法の臨床研究が施行されている。これらNKT細胞を標的とした免疫細胞療法の安全性,NKT細胞特異的免疫反応の解析さらには臨床効果について概説する.(本橋新一郎 p.344)

新薬紹介総説
新規CCR5阻害抗HIV薬マラビロク(シーエルセントリR錠150 mg)
マラビロクは,HIVが宿主細胞に侵入する際に補受容体として利用するCCケモカイン受容体5(CCR5)に作用するCCR5阻害薬である。既存の抗HIV薬とは異なる新しい作用機序の抗HIV薬であり,既存の薬剤に耐性を示す場合にも有効性が示唆されることから,HIV感染の薬物治療の新たな選択肢として重要な役割を果たすことが期待される。本稿ではマラビロクの薬理学的特徴および臨床試験成績を紹介する. (檜杖昌則 p.349)

 

 

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