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日薬理誌第137巻第1号 2011年1月

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アゴラ
薬物作用の統合的解析による創薬と最適な薬物療法の実現をめざして
山田静雄  1

特集 漢方薬理学:臨床医学的エビデンスから薬理学的エビデンス
序文 佐藤広康、高橋京子 --- 3

1:漢方薬の加齢的薬効変化:高齢者に対する有効性
佐藤広康、西田清一郎 --- 4

2:漢方薬の臨床効果は構成生薬の品質を反映する
柴原直利、高橋京子 --- 8

3:漢方のCAMからの脱出:大建中湯を中心に
河野 透 --- 13

4:機能性ディスペプシアに対する六君子湯の有用性の検討:エビデンス確立に向けて
新井誠人、松村倫明、吉川正治、今関文夫、横須賀 収 --- 18

総 説
網膜色素変性症の原因と新規治療法開発の現状
坂本謙司、森 麻美、中原 努、石井邦雄 --- 22

創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ⑫
がんワクチンのトランスレーショナルリサーチ
珠玖  洋、原田直純 --- 27

新薬紹介総説
パニツムマブ(ベクティビックスR点滴静注100 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
松平忠弘、朝日第輔、梁 幾勇、網干正幸 --- 31

高選択的DPP-4阻害薬アログリプチン安息香酸塩(ネシーナR錠)の薬理作用および臨床効果
武内浩二、藤田哲也、廣居伸蔵 --- 43

キーワード解説
ナトリウム/リン共輸送担体
杉野紗貴子、塩崎雄治、辰己佐和子、瀬川博子、宮本賢一 --- 51

最近の話題
Ephrin/Eph受容体シグナルを介したneuron-glia communication     
佐藤 薫 --- 53

 
研究室訪問
北海道医療大学 歯学部 口腔生物学系 薬理学分野
東城庸介 --- 54
自治医科大学 医学部薬理学講座 臨床薬理学部門
安藤 仁 --- 55

リレーエッセイ
”わくわく” に素直に  
佐々木 淳 --- 56

 

新教授紹介
1A  河原 博

お知らせ
1A  平成23年度会費納入の件、募集
2A  集会案内
3A  Calendar、訃報
4A  JPS 114:4目次
18P 次号予告
表2対向  執筆の手引き
広告第1頁 役員一覧

著者プロフィール
26

部会報告/抄録
54P/ 1P 第61回 北 部 会   東城庸介
55P/12P 第123回 関東部会 藤村昭夫

 

 

 

 

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特集:特集 漢方薬理学:臨床医学的エビデンスから薬理学的エビデンス
漢方薬は2種以上の天然素材(生薬)からなる複合多成分薬である.そのため、多様な臨床医学的エビデ
ンスを表す.その根底にある多種の薬理学的エビデンス(作用機序)から、「証」を踏まえ漢方薬の有効性
を考察する.(佐藤広康 序文 p.3)

漢方薬の加齢的薬効変化
漢方医学は3千年の臨床経験に基いた伝統的医学である.高齢者での加齢による生体機能低下は、しば
しば慢性多臓器疾患(老人症候群)をもたらす.漢方薬は2種以上の生薬からなる複合多成分薬であるた
め、多彩な作用機序、多様な臨床医学的エビデンスを有する.それゆえに、老人症候群治療により適した
薬剤といえる.今後、「証」の科学的解析を含め、多くの基礎・臨床薬理学エビデンスから、容易に理解でき
るよう漢方医学概論の標準化が必要である.(佐藤広康 p.4)

漢方薬の臨床効果と構成生薬の品質
漢方薬は有効な治療手段として認識されており、この漢方薬の治療効果を左右する要因として生薬の品
質が挙げられる。近年,生薬の天然資源が減少して多くの薬用植物が栽培化されている。しかし、治療効
果を勘案した品質評価は行なわれておらず、生薬の品質と薬理効果との関連性についての情報発信は重
要である。そこで、品質の相違と薬理効果との関連性を基礎研究・臨床研究により検証した.
(柴原直利 p.8)

漢方のCAMからの脱出
エビデンス重視の現代医療で漢方は異端的扱いである.大建中湯の薬効機序に関する分子レベルの研
究から、漢方の例外的な高品質および標準化されている点に世界が注目し始め、米国で臨床試験が行わ
れ大建中湯の有効性がいち早く証明された.日本でも全国多施設で二重盲検プラセボ比較試験が開始さ
れた.(河野 透 p.13)

機能性ディスペプシアに対する六君子湯の有用性
六君子湯は主に上部消化管症状に対して用いられる.我々の研究では、六君子湯2週間投与後、健常ヒ
ト、マウスでも血中グレリン値が増加した.機能性ディスペプシア症例に対し六君子湯とドンペリドンのラン
ダム化比較試験を行った.両薬剤とも自覚症状を改善したが、血中グレリン値は六君子湯群のみ上昇した.
六君子湯の有効性をより詳細に解明しエビデンス確立にさらなる研究が必要である.
(新井誠人 p.18)

総説
網膜色素変性症の原因と新規治療法開発の現状
人間が外界から得ている情報の8割以上は視覚由来であることから,疾病による視機能の喪失を抑制する
方法の開発は急務である.網膜色素変性症は中途失明原因の第3位を占めるが,その治療法は全く確立
されていない.本総説では,代表的な網膜色素変性症の原因遺伝子と,対応する動物モデルを概説し,さ
らに網膜色素変性症の治療法の開発の現状について紹介する.(坂本謙司 p.22)

創薬シリーズ(5) トランスレーショナルリサーチ⑫
がんワクチンのトランスレーショナルリサーチ
がん免疫研究の大きな成果のひとつに、腫瘍特異的キラーT細胞の認識する抗原の同定があげられる。
標的抗原の同定は、それらを用いたがんワクチンの開発を可能とした。90年代後半から始まった欧米や我
が国での多くの臨床試験は、その大きな一歩である。これらの臨床試験は、トランスレーショナルリサーチと
して基礎的な研究成果を臨床に応用するという意味で重要であると共に、ワクチンを受けたヒト個体におけ
る他では得られない免疫学研究の機会を提供し得ることを意味している.(珠玖 洋 p.27)

新薬紹介総説
抗腫瘍薬パニツムマブ(ベクティビックスR 点滴静注100 mg)の薬理作用と臨床成績
パニツムマブはEGFRを標的としたヒト型モノクローナル抗体であり,EGFRと高親和性で結合し,細胞内シ
グナル伝達を阻害して抗腫瘍活性を発現する.非臨床試験では,種々のヒト腫瘍移植マウスでの腫瘍増
殖を用量依存的に抑制すると共に,化学療法剤との併用効果も認められた.臨床試験では,対象とした結
腸・直腸癌患者のうち,KRAS遺伝子に変異のない患者に対して高い有効性が認められ,がん治療の個別
化の観点からも注目すべき知見が得られている.(松平忠弘 p.31)

高選択的DPP-4阻害薬アログリプチン安息香酸塩(ネシーナR錠)の薬理作用と臨床成績
高選択的DPP-4阻害薬アログリプチン安息香酸塩(ネシーナ?錠)は2型糖尿病に対する治療薬である.
2型糖尿病モデル動物において血糖低下作用および膵保護作用を示し、臨床試験においても、1日1回
投与により長期間にわたり良好な血糖コントロールが得られるとともに、安全性が高く忍容性に優れかつ低
血糖の発現リスクが低いことから、2型糖尿病治療薬として有用な薬剤になることが期待される.
(武内浩二 p.43)

 

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