日本薬理学雑誌 > バックナンバー >

日薬理誌第138巻第4号 2011年10月

目次 ハイライト top


アゴラ
創薬のパラダイムシフト-見方を変えれば世界が変わる-
原 英彰 --- 133

特集: 急性肺傷害治療戦略の現状と展望
序文 服部裕一 --- 135

1:急性肺傷害の臨床病態の理解と課題
橋本 悟 --- 136

2:新興呼吸器ウイルス感染症による重症呼吸不全の病態と治療標的
今井由美子 --- 141

3:アポトーシス関連分子を標的とした敗血症性急性肺傷害の治療
髙野健一,大石博史,服部裕一 --- 146

4:敗血症性急性肺損傷におけるAlert細胞戦略
松田直之,都築通孝,市川 崇,栃久保順平,田村哲也,足立裕史 --- 151

総説
炎症薬理学とがん転移
丸 義朗 --- 155

アストロサイトによるシナプス伝達調節
加藤総夫,繁冨英治 --- 161

キーワード解説
スフィンゴシン1-リン酸シグナル伝達系
岡本安雄、多久和 陽 --- 166

最近の話題
認知機能調節におけるsigma-1受容体の役割
森口茂樹 --- 168

アルツハイマー病は感染する?
関 貴弘 --- 169

研究室訪問
東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医学専攻 獣医薬理学教室
堀 正敏 --- 170

名古屋市立大学 大学院薬学研究科 中枢神経機能薬理学分野
大澤匡弘 --- 171

学会便り
第119回近畿部会市民公開講座「恐ろしい乱用薬物の魔力」を開催して
小野秀樹 --- 172

リレーエッセイ
留学体験記
天野大樹 --- 173

お知らせ
前綴込  理事・監事候補者推薦用紙
93A  役員・委員選挙実施日程
94-98A  被推薦権有資格者名簿
99A  新名誉会員のご紹介
100A  集会案内
101A  Calendar
102A   安全性情報No.282,募集
103A  執筆の手引き
104A  役員一覧
174頁  次号予告
24P  JPS117:1目次

部会報告/抄録
170頁/1P  第124回関東部会 尾崎 博
171頁/10P  第119回近畿部会 小野秀樹

著者プロフィール
140,160,165

ハイライト 目次 top


特集:急性肺傷害治療戦略の現状と展望
急性肺傷害は,敗血症や肺炎,外傷,誤嚥等により発症し,老齢者直接死因の第一位として知られ,その救命率を上げる効果的治療法の開発が急務とされる.本特集では,急性肺傷害の病態生理およびその治療の最新の話題について,基礎および臨床研究的立場からクローズアップする.(服部裕一 序文 p.135)

急性肺傷害の臨床病態の理解と課題
急性肺傷害/急性呼吸窮迫症候群は集中治療領域においてしばしば経験する病態の1つである.1967年に紹介されて以来,40年以上が経過するが未だに死亡率は高く,本領域で最もチャレンジングな疾患と言えよう.病態についても未だに不明な点が多い.治療法において死亡率を下げることが示された薬物療法は存在せず,大規模臨床試験において唯一死亡率低下を示した治療法は肺保護戦略に基づいた低容量人工呼吸管理のみである.(橋本 悟 p.136)

新興呼吸器ウイルス感染症による重症呼吸不全の病態と治療標的
SARS,H5N1鳥インフルエンザ,2009年の新型インフルエンザ(H1N1)などの新興ウイルス感染症は,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)をはじめとした重篤な病態を引き起こすが,その分子メカニズムは十分解明されておらず,有力な治療法がない.本章では新興ウイルス感染症による重症呼吸不全の病態に関して,インフルエンザに焦点を当て,RNAiスクリーニング,マウスモデル,ヒト検体などを用いた研究を中心に述べ,さらに新しい治療標的や救命に不可欠である人工呼吸法の重要性に触れる.(今井由美子 p.141)

アポトーシス関連分子を標的とした敗血症性急性肺傷害の治療
敗血症性急性肺傷害の病態メカニズムには,炎症に加えてアポトーシスが深く関わっていることが近年指摘されている.基礎研究においてアポトーシス促進因子の阻害薬やノックダウンなどの治療法が試みられてきた.アポトーシスと急性肺傷害との関連,抗アポトーシス因子にも視点を当てて解説する.(髙野健一 p.146)

敗血症性急性肺損傷におけるAlert細胞戦略
敗血症は感染により導かれた全身性炎症反応症候群であり,サイトカインや炎症性分子の過剰産生により急性肺損傷が導かれる.肺には,Toll-like receptor,tumor necrosis factor receptor,interleukine-1 receptorなどの炎症を導く受容体を持つ基幹細胞が存在し,これらは炎症を感知するAlert細胞(警笛細胞)として,ケモカイン,炎症性サイトカイン,一酸化窒素などの炎症性分子を産生する.本稿では,敗血症性肺損傷におけるAlert細胞機能と制御を解説する.(松田直之 p.151)

総説
炎症薬理学とがん転移
薬理学で進行がんの治療といえば抗がん薬(細胞殺傷薬)がこれまで重視されてきた.がん組織の形成に参加する生体の血管や免疫担当細胞の機能が解明されてきた現在では,炎症薬理学の立場からこれを考えることも必要となってきた.炎症のゴールデンマーカーである白血球がそのマーカーとしての意義をこえて,薬物標的になる可能性が大きい.本稿ではその証拠を議論する.(丸 義朗 p.155)

アストロサイトによるシナプス伝達調節
この20年ほどのグリア研究によってその重要な機能が次々と見出されてきたアストロサイトだが,ニューロンの本質的機能がシナプス伝達であるように,アストロサイトの本質的機能の場は、ニューロンのシナプスを取り囲むその微細突起であるに違いない.その「三者間シナプス」において何が起こっているのか? 最前線の研究で明らかになってきた,グリア創薬の重要な標的としてのシナプス周囲アストロサイトの3つの機能を紹介する.(加藤総夫 p.161)

ハイライト top 目次 top


このページの先頭へ